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セカンドライフ


俺はめちゃ焦っていた。


昨日ミスしたばかりなのに、今日遅刻は
ありえねぇ。

ミスしたのは俺だけど、
はるかそれ以上に怒られ過ぎて昨日の夜はイライラが止まらなかった。

寝る前にイライラしてると体力を相当使うのか目覚ましに気づかないくらい深い眠りについてしまう。

でも、まだダッシュすれば間に合う。

俺は横断歩道の信号は赤だったが、
車も来てないし渡り始めた

が、横断歩道脇に停めてあった車が死角になり
そこから勢いよくバイクが通過してきた。


俺はイヤホンをしていたので気づいた時には
バイクは真横だった。


うぉっ!!死




んだ。

終わったか。俺の人生。

しょーがないよな。

事故だし。

頑張ったよ。俺。

なんつーか、たかだか同じ会社ってだけのわけの分からんおっさんにひたすら怒られて、それに一日中イライラして
たかだか遅刻ってだけで必死に走って、
先々の人生のために不安になって考え込んで、
別に自分事じゃなくたって、
世の中は希望より不安の方が明らかにでかいし、
こんな星の生にしがみついたところで
生にそんな価値はありまんのかって感じだったじゃん。

いや、俺が勝手に自分で自分を追い込んだ空回りの不器用な人生にしちまったんだよな。


人生は一回きりって無理あるよなぁ。


一回死んで、自分の人生ちゃんと振り返って改善点探して、
一息ついて、
さぁ、第二の人生始めましょう

が本来のあるべき生なんじゃないだろうか?


「そのとおりです。」


え⁈誰ですか⁈

「私は、第二の人生の案内人です。
あなたは今第一の人生の瀬戸際にいる状態です。
つまり一回目の生と死の間にいます。」


え、てかやっぱり人生って二回あるんですか⁈

「もちろんあります。例えば仕事で一回ミスしただけでクビなんて言われたらひどいと思いませんか?
人生も同じです。
一回死んだからと言って終わりなんてことはありません。
ちゃんと一回目の人生で学んだことを
二回目の人生で生かして下さい。」

でも二回目の人生っていうのは一回目の人生の記憶とかは残るんですか?

「それは一切残りません。
そして、別物の人生になります。
第二の人生に行く際に、第二の人生登録用紙に希望の人格を事細かく記入することで
それが第二の人生に反映されます。」

第二の人生は今の地球とは違う地球になるって感じですか?

「同じです。
生きてると器用な人と不器用な人がいますよね?
有名人やスポーツ選手のような才能が極端に開花してる人は第二の人生の人たちがほとんどです。
あなたのような不器用な人はほとんど第一の人生の人たちです。」


ほとんど⁈全員じゃないんですか?

「もちろん第二の人生でも不器用なままの人もいます。
何事も同じです。
繰り返す人は繰り返しますし、
学ぶ人は学びます。
なので、第一の人生でも立派に学んで
器用に生きてる人ももちろんたくさんいます。」

そうですか。
第二の人生を選ばない人もいるんですか?


「もちろんいます。
ただ選択肢があるということだけです。
すべて自分自信で決めて下さい。
ただ、
第二の人生を選択できる機会は一度だけです。
今この機会に第二の人生を選ばなければ、
あなたは第一の人生で終わりになります。」


つまり?


「イッツオーバー。無です。」


、、、そうですか。
少し考えさせて下さい。



俺は自分の人生をもう少し振り返ってみることにした。が、

死んだと思った時はすぐに死を受け入れてたよなぁ。笑
振り返っても別にたいした人生ではなかったとはやっぱ思う。

自分事は本当にパッとしなかった笑

人付き合いもそんなないし、、、

思い浮かぶのは母親くらいかもしれない。



俺が小学校の頃両親は離婚した。

母親は裁縫が趣味だった。
いつも楽しそうに物を作っては人にあげ
たり、
飾ったりしていた。

離婚してからは母親は仕事量をかなり増やし、
それ以降裁縫は一切やらなくなった。

子供の頃は生活のために親が仕事をするのは当たり前だとただ思っていた。

でも、今自分が大人になると
自分の好きなことを削ってまで誰かのために仕事ができるのか、
ましてや今の自分の職場を考えただけで
かなりきついものがある。

俺はパッとしない人生を生きてきたが、
だからこそ今母親に心底感謝と尊敬ができる。

俺は急に、母親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

そして、第二の人生なんて有り得ないという気持ちしかなくなっていた。

今までの人生を消してまで、次の人生なんていけない。

第二の人生は遠慮しておきます。


「そうですか。分かりました。」




ぬとこだったじゃねーか!!

あっぶな!
まじあぶなー!!

俺は心臓がバクバクになりながら、
もう遅刻とか知らねーよ
という気持ちになりながら、
喫煙所に向かっていた。



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