先に行った仲間
高校のときに同級生が病気で亡くなった。
脳腫瘍だった。
背は小さめで、もっさい髪型をしていた。
メチャクチャギターが上手かった。
ダイアストレイツを完コピして聴かせてくれた。
通学のときに毎日電車が同じな他の学校の女の子に一目惚れをしてた。
確か駒沢女子の制服を着ていた子だったかな。
男子校だった僕たちは悶々としていた彼をはやしたて
ある日彼は思いがけず堂々と告白をした。駅のホームで。
話したこともないのに告白なんて全然いまどきじゃない。
僕の高校時代でもそれはとてもムチャなことだった。
当然あっさりと振られてた。
こいつがどれだけその子を好きだろうと、しょせん話したことすらない。
せめて「友達になってください」くらいにしておけばよかったのに。
いい奴だった。
男同士の友情みたいなものを頑なに守っていた。
結局、彼は童貞のまま天に召された。
恋に恋して、友情に厚くて、照れるように笑っていた。
不思議と彼のことを思い出しても悲しい気持ちにはならない。
もう少し彼に時間があれば童貞じゃなかっただろうな。
男子校の淡い恋から抜け出して、ナンパでも一緒にすればよかったな。
あいつみたいに生きていきたい。
そう思わせてくれる奴だった。童貞のくせに。
また明日
さっき彼と別れて家に帰ってきたように感じるときがある。
あれから39年も経っているのに。
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