見出し画像

「硝子の獣」7

〇第7景

村井の家。
夜。雨が降っている。
恵がテーブルに皿を運んでいる。

恵   「アチチチ。さあ出来た出来たー。遅いなあ・・・何してんだ」

携帯が鳴る。

恵   「何?・・・もうそっちは行かないから安心して。え?・・・別に嫌いになったとかじゃないし。タカシとはいい友達って感じかな・・・村井さんとこだよ・・・そうあの弁護士のおじさん・・・」

ガチャと玄関の鍵を開けて入ってくる音。

恵   「あ、帰ってきた!じゃあね(電話を切って迎えに行く)おかえりなさーい!」
村井  「ああ、ただいま」
恵   「あーあ、こんなに濡れちゃって」

恵と村井入ってくる。

恵   「早く早く座って」
村井  「晩飯、作ってくれたのか」
恵   「そうだよ。居候だから」
村井  「そうか・・・」

村井の手にはコンビニ弁当の袋。

恵   「あ、何で買ってきちゃうかな」
村井  「すまない・・・いいよこれは明日の朝食べるから」
恵   「ホント?じゃあ朝チンしてあげるね」
村井  「いいよ自分でやるから」
恵   「何遠慮してんのよ。自分の家なんだからデーンとしてりゃいいのよ」
村井  「デーンと、ね」
恵   「ほら座って!」
村井  「はい」

村井、せかされるように座る。

村井  「いただきます」
恵   「どう?美味しい?」
村井  「美味しい」
恵   「ホント?どれどれ?・・・マズっ!」
村井  「(黙々と食べる)」
恵   「炭の味しかしない・・・」
村井  「大丈夫だよ」
恵   「大丈夫じゃないじゃん」

皿を取ろうとする。

村井  「いいから」
恵   「でも」
村井  「せっかく作ってくれたんだから」

黙々と食べている村井を眺めている恵。

恵   「・・・私、家族に何か作ってあげるのが夢だったんだ」
村井  「そう。じゃあ早く結婚して家族を作らないとな」
恵   「そうじゃなくて」
村井  「ありがとう」
恵   「え?」
村井  「ごはん。作ってくれてありがとう」
恵   「ごめんね。マズくて」
村井  「美味しい」
恵   「・・・いただきます」

恵も一緒に食べ始める。

村井  「美味しい・・・か。言ってやれば良かった」
恵   「え?」
村井  「何でもない」
恵   「おじさん、何で弁護士やめちゃったの?」
村井  「・・・」
恵   「言いたくないなら言わなくていいけど」
村井  「・・・」

ピンポーン

恵   「誰だろ」
村井  「俺が」
恵   「いいから座ってて。はーい」

恵、玄関へ。ガチャっと扉が開き

恵   「キャーーーーーー」
村井  「どうした!」

リュックを背負った友崎が恵を羽交い絞めにし、ナイフで脅しながら入ってくる。

友崎  「動くんじゃねえ!」
村井  「友崎・・・」
友崎  「動くな!殺すぞ!」
村井  「やめろ!その子を離せ!」

友崎、ナイフを構える。
村井、動けない。

友崎  「おい!被害者ってのはそんなに偉いのかよ!」
村井  「何を言ってるんだ」
友崎  「被害者ってのはそんなに偉いのかって聞いてるんだ!」
村井  「いいからその子を離せ!」
友崎  「離すはずねえだろ!俺は人殺しだぞ。あんたの娘を殺したんだ」
恵   「え?」
友崎  「こいつは誰だ?お前の新しい恋人か?」
村井  「その子はただの同居人だ」
友崎  「同居人?」
村井  「その子は関係ないだろう。離してやってくれ」
友崎  「関係ないとかどーでもいいから」
村井  「やめろ・・・やめてくれ・・・」
友崎  「そこに座ってろ!」

ここから先は

3,013字
著作権は佐藤雀にあります。使用の際は必ずお声がけをお願いします。 使用の際は別途使用料をいただく場合もありますのでご了承ください。

舞台台本です。最重要部分以外は無料で読めます。 少年犯罪の弁護士を生業にしていた男の娘が、ある日少年に殺害された。 常識が常識でなくなっ…

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは劇団活動費などに使わせていただきます!