「ぴのらぼ」書籍化と、バーチャル→リアルの潮流
カルロ・ピノというVTuber(バーチャルYouTuber)をご存知だろうか。
VTuberプロダクション.LIVE(どっとライブ)のアイドル部に所属するVTuberだ。
彼女を語る上で外せないのは、大の「虫さん好き」であるということ。(ピノさんは虫を「虫さん」、生き物を「生き物さん」と呼ぶので準拠します)
初めての配信から今に至るまで、虫さんについて語りに語る。その知識の幅と情熱は凄まじい。ホラーゲーム配信中でも、虫っぽいモンスターが出た時に怖がるどころか大喜びで向かい観察するほど。虫さんだけでなく生き物さん全般に情熱を注いでおり、「モンスターハンター」をモンスターの生態調査の視点でプレイする配信は必見。また、虫さんが苦手な視聴者に対しての配慮も欠かさない。
苦手な人がいることを承知し、押し付けることはせず、自分の好きなものを語る。虫さんについての情熱・知識・配慮まで兼ね備えた14歳、それがカルロ・ピノなのだ。
そんな彼女の代表的な配信の1つが「ぴのらぼ」。大好きな虫さんについてクイズ形式で視聴者に出題したり、時には空想上の生物の生態を一緒に考えたりといった、ユニークかつ虫さんづくしな配信があるのだが……
この度「ぴのらぼ」が書籍化するらしい。
突如錯乱した男のツイートは置いておくとして、ピノさんのファンでなくとも驚く出来事だと思う。
VTuberが一冊の本を執筆する。ここまでは前例がないこともないが、さらに挿絵まで同じVTuberが担当するのだ。これは今まで聞いたことがない。
今回挿絵を担当する八重沢なとりさん(Twitterはここ チャンネルはここ)も、ピノさんと同じアイドル部に所属するVTuber。しっかり者(だったりそうでなかったりする)かつ優しい風紀委員長で、ピノさんに「ありのおひめさま」という絵本をプレゼントしたこともある。そういう意味でもファンとしては激熱展開なのだが、注目すべき点は他にもある。
「VTuberが執筆や挿絵を担当する」こと、そして
「ターゲットが広い(VTuberを知らなくても楽しめる)書籍である」ことだ。
・VTuberが執筆や挿絵を担当する
作家やイラストレーターの方がVTuber化する例は竹花ノートさんや魔王マグロナさんなどいくつか存在する。
これは「リアル世界からバーチャル世界へ進出する」という流れで、VTuberが急成長した2018年に多く見られたものだ。すでにイラストレーターや漫画家などとして活動している人がバーチャルな肉体を手に入れ、バーチャル世界へと進出し活動する。
だが今回の「ぴのらぼ」書籍化は、VTuberが作家・イラストレーターとなる形。
ここには「バーチャル世界からリアル世界へ進出する」という流れがあるのだ。「著者:カルロ・ピノ」や「挿絵:八重沢なとり」といった表記、とても夢がある。
最近では、ソーシャルゲーム等で声優活動をする朝ノ瑠璃さんや、劇場アニメで主題歌を担当するキズナアイさんなど、じわじわと例が増えてきている。「CV:朝ノ瑠璃」「主題歌:キズナアイ」を目にするファンは感涙ものだろう。かくいう僕、佐藤ホームズもMoguLive編集部で編集者としてお仕事をしている。「編集:佐藤ホームズ」だ。MoguLiveの記事読んでね。
・ターゲットが広い(VTuberを知らなくても楽しめる)書籍である
これまでのVTuberの関連書籍は、既存のVTuberファン向けの要素が強かったように思う。VTuberそのものがハイコンテクストなもの、理解に説明を要するものだし、そもそもファン向けの書籍なのだと思うが、新規VTuberファンを見込んでいるであろう書籍はなかなか見かけない。
今回のプレスリリースを見ると、「ぴのらぼ」書籍化の内容は「虫さんのおいしいところ=すごいところ、羨ましいところをクイズ形式で知ることができる」というもの。これは革命だ。VTuberを知らなくても本の内容で楽しめる上、子供から大人までを広くターゲットにできる内容。
前述した、バーチャル世界からリアル世界への進出にはもってこいの内容である。
テレビ朝日で放送中の「超人女子戦士 ガリベンガーV」という番組にもこれが当てはまる(VTuberが出演し、VTuberを知らなくても楽しめる内容)。
.LIVEはここまで考えて……? 虫さんという呼び方も情操教育にいいかもしれないし、ピノさんにNHKで教育番組をやってほしいです!
.LIVEさん!
まとめると、これはVTuberの、VTuberによる、誰かのための本なのだ。
VTuberの活動の幅や可能性を広げ、ピノさんファンが大喜びし、かつVTuberを知らない人も楽しめる内容の書籍。発売日までタイムリープしたい。
2018年に成長したVTuberが活動の幅を広げ、活動する世界までも増やす。「ぴのらぼ」書籍化の報を聞き、2019年はそんな年になるかもしれないと思い、勢いでここまでしたためた。
ついでに言うなら、2020年もそんな年になると思う。理解や浸透には時間がかかる分、VTuberとしてもVTuberファンとしても、じっくりとやっていきたいものだ。
とりあえず「ぴのらぼ おいしい虫さんたち」を買おうと思う。
めっちゃ楽しみ!🐜
「ぴのらぼ おいしい虫さんたち みんなでやりたい虫クイズ」
著:カルロ・ピノ
イラスト:八重沢なとり
定価 :本体1,100円+税
発売日:2019年3月26日
追記:KADOMAWAの書籍情報に全128ページと書いてありました。
こいつぁすげぇぜ!
また、リプライで頂いた「書影にVTuberさんの姿がないのも印象的」という意見に感心した。これもまたターゲットを広くしている要因の一つだなあ。
(参考:プレスリリース)
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