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憧れを追いかける旅

 『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(パリッコ、スズキナオ/スタンドブックス)を読んで、都庁展望台でお酒が飲めると知った。それまで展望台で飲食するというイメージがなかったので(スカイツリーや東京タワーでも)とても興味深く思えた。本では交通会館やサンシャイン池袋にも行っていて、うらやましいくらい。
 ぜんぶは真似できないけど、お二人の後を追って都庁展望台に行ってみよう。
 書いてあった通り、専用エレベーターの前で荷物チェックがある。だるまの入ったバッグで恥ずかしかったのだけど、さらりと終わって拍子抜けした。
 エレベーターで45階へ。お二人の見た夜景とは反対に、雨の午前中。遠くはくもってかすんでいる。でも、これこそが私のイメージする東京。子どものころに見たドラマのオープニングが東京を上空から見渡したもので、その無機質で人工的な美しさに憧れた。
 本によると売店のメニューにはいろいろと軽食やお酒があったよう。でもそれは新型コロナ流行前の話。関係あるかどうかはわからないけれど、売られているのはコーヒーとクラフトビール、アイスクリームくらいだった。
 目的はここでお酒を飲むことだったのだけど、飲食スペースは中心部のみで、窓辺で景色を楽しみながら飲めるわけではないみたい。歩きまわったあとということもあり、コーヒーを飲んでしばし休む。
 音楽が流れていないというのは、本の通り。落ち着いてのんびりできる。思い出ピアノが置いてあって、ときどき誰かが弾き始めるのがBGMの代わりなのかも。思い出せそうで思い出せないJ-POPが弾かれていて、しばらく考えたけど結局わからなかった。弾きおわるとどこからともなく拍手が起こるのもいい感じ。かといって、みんなまじめに聞いているわけではない。
 外国人の団体客が多いみたいで、私のように一人でぼんやりしている人はいなかった。でもそれすらも誰も気にもとめない。不思議と居心地がよかった。片隅にひっそりとスタンプがあったのも嬉しい。

記念スタンプは絶対押したい

 次は夜景を見て、ビールも飲みたい。夜の新宿って怖そうなイメージもあるけれど。

 それから下に見える新宿中央公園へ向かう。ここもいつか行きたいと思っていた場所。

箱庭のような新宿中央公園

 この公園は、お笑い芸人のインデペンデンスデイがYouTubeラジオを撮っていた場所。それぞれの思い出などを語りあったり、お互いが食べさせたいおいしいものを紹介したりしていた。地面にシートを敷いて、ピクニックのようなほのぼのとした動画。私も座ってみれば良かったな。
 もしかして、いつか東京に行ったとき、その公園に行ったらまた収録していることもあるかもしれない。そんなほのかな希望を持っていた。4月に久保田くんが亡くなって、叶わない夢となった。まだ信じきれずにいる。
 雨があがり、湿った空気の公園を歩く。この広場かな、どこかな。はっきりとした場所はわからなくても、間違いなくここに久保田くんも内藤さんも来ていた。なんだかしみじみした気持ちでぐるりと回る。鳩がたくさんいる。ムクドリも混じっている。東京の鳩は人が近くにいても逃げない。私よりも人慣れしている。

たぶんこの広場にインデペンデンスデイが

 広場の向こうには都会的なおしゃれな建物がある。あれは、タイムマシーン3号がメッセージをもらえなかったスターバックスではないか。こっちと道路を挟んだあっちのスターバックスに行っていた。なんというか、すごい公園だなぁ。

 タイムマシーン3号のYouTubeではかっぱ橋の回が印象的だ。けっこう頻繁に行って買い物をしているように見える。まだ行ったことのないかっぱ橋。どんなところなのか行ってみたい。

黒いのれんがかっこいい料理道具屋さん

 もうすぐ5時になろうとしていて、あまりゆっくりはできない。幸運にも目指す釜浅商店はすぐに見つかった。2軒ならんでいるけど、近いほうにさっと入ってみる。研師のエプロンが目に飛び込んできた。これこそ山本さんが買ったあのエプロンだ。
 後で動画を見返したら、私が試着したまさにその場所で撮影していたみたいだった。ということは、関さんが試着したエプロンだったのか。なんだかおもしろい。

研師のエプロン


 研師のエプロンは格好いいだけでなく機能的で、研師のためにいろいろな工夫がされている。胸ポケットは中身が出しやすいようにマチ付きで、下からポンと押し出せる。これは接客時に名刺が出しやすいように。
 腰のあたりには両側にループがついていてタオルがかけられる。白いラインが素敵なポケットはふたつき。右下の当て布は研いだ包丁のバリを拭うため。
 私にとっては少し高価なエプロンだけど、思い切って買ってしまう。色落ちも楽しんで育てていきたい。
 その後のYouTubeの料理回では山本さんのエプロンをチェックしてしまう。やっぱり研師のエプロンをつけていて、無意味におそろいで笑えた。
 かっぱ橋ではほかの店をあまり見れずに終わったので、また今度いろいろ見に行きたい。巨大シェフもシンボルタワーも見なかったし、かっぱ寺にも行けなかった。でもうわさのかっぱちゃんは見れたので嬉しい。

かわいい看板

 行ける範囲の憧れを詰め込んだので、どれも中途半端になってしまった。心残りがたくさん。憧れの地や行きたい場所は他にもあるし、また東京に行きたい。

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