未曾有の危機に際して、政府自民党も野党も試されている。 いまこそ、政治的思惑を排し、科学的根拠と愛国精神に基づいた 国民ファーストかつ真に有効なコロナ対策を。。。
朝日新聞社が4月18、19日に行った電話世論調査で、「安倍首相は感染拡大の防止に向けて指導力を発揮していると思いますか」との問いに対して、
「発揮している」と答えた人は33%。「発揮していない」と答えた人は57%。
まず、「発揮している」と答えた方が33%もいることには驚いた。
1割のわからないを除けば、ほぼ二択の質問であるので、野党よりは良いだろうとの思惑からの消極的支持も含まれてしまい、このような結果になったのだとしか思えない。
実際、ここ数か月間で安倍政権が下した決断、国民に向けて発したメッセージの数々を観れば、たとえ、長年にわたる自民党支持者、はたまた自民党所属国会議員であっても、心の底から、安倍政権の判断を全幅の信頼を持って支持することが出来るとは、とても思えない。
今、安倍政権を手放しに礼賛し、声を荒げているのは、間違いなく、ほんの一部の数にもならない超マイノリティでしかない。
小中学校の一斉休校に始まり、事態の終息を匂わせ国民の油断を招いた学校再開・イベント自粛を求めない発言、オリンピックの延期にまつわるゴタゴタと非常事態宣言発出の遅れ、お肉・お魚券、休業自粛に対して補償を検討しない矛盾、アベノマスク466億円(その後なぜか減額)、FacebookでのKYなコラボ動画、一律給付10万円が決まるまでの迷走劇。。。。
どれをとっても、国内でこの危機を最も的確に捉えたリーダーの所作ではない。
とはいっても、後出しじゃんけん、政権の揚げ足取りに固執する、また記憶に新しい民主党政権の苦い経験もあって、政権担当実績のない野党でも、パーフェクトな対応が出来るはずだとは、誰も期待していない。
今回の危機において、安倍総理の指導力不足は明白だが、仕方がないと思う面もある。
こう考えたらいい。
100年に一度の大災害。この世に生きるほとんどの方々が経験したことのない未曾有の大危機。例えば、このような局面にあなたが一国のリーダーだったらどうするのか!?を考えてみよう。
もちろん、私個人にも、こうしたら良い。という腹案もあるし、マスメディアやソーシャルメディアでも、ここぞとばかりに、コロナ対策の提言が咲き乱れている。しかし、当然のことながら、私が模索するコロナ対策には、多くの国民の支持は得られないし、私にもその資質はないと自覚している。
ちょっと想像してほしい。
あなたの判断が、想像もつかないほどの国民を死に至らしめ、不幸のどん底に突き落とす。あなたが自分の決意を表明すると、側近たちは、そして世論は、それに対して、ああでもないこうでもないと異論反論がここぞとばかりに飛び出してくる。そんな状況の中で、あなたは、平常心を保って、次々と絶対的に正しい判断を下すことが出来るだろうか!?
私なら出来ると答える方は、単に未熟で自信過剰だろうし、その場になってみないとわからない、そんな自信はないというのが正直なところだろう。
安倍総理だって、我々と同じ種類の人間だ。
しかし、世界各国のリーダーたちは、一部では様々な批判を受けながらも、徐々に有効な対策を講じ、それなりに、評価を得ている。ドイツのメルケル首相、台湾の蔡英文総統、ニュージーランドのアーダーン首相などだ。
偶然にも、彼女たちは女性だが、今日のポイントはそこではない。
彼らのリーダーシップを支える政権内のサポート体制が非常に優れている。
まさに、有事に対応すべく科学的に物事を判断出来る体制を持った政権のみが、この難局を乗り越えているかのように見える。
これら評価された各国リーダーに比して、日本の安倍総理以外にも、アメリカのトランプ大統領の評価が、世論調査における支持率はともかく、かなり低い。
なぜか!?
トランプ大統領は、夏に、4年に一度の大統領選挙を控え、選挙対策に躍起にならざるを得ない状況を抱えている。
言うまでもないが、民主主義は、選挙に勝つことで、政権を担うことが許される。当然、選挙に勝つことが、政権のリーダーにとって最も、重視しなければならないことの一つだ。
平時ならそれもいい。
しかし、今は、非常時だ。
国家・国民の非常時に、政権の支持者も非支持者もない。
実際に、保守系の方々から、社会主義者的主張もなされている。
つまり、右左のイデオロギーも関係ない。
コロナを政局にすることで、多くの無駄が生じてしまうことは、皆が薄々気づいている。
功した各国のコロナ対策には、国家主義、社会主義的性向があることは否めない。科学的考察を通じて導かれた結論には、その正否に関わらす、議論を差し挟むことのできない絶対性があるからだ。
ことコロナ対策に関してのみ言えば、行き過ぎた自由主義は、間違いなくベストな選択肢ではない。
私が暮らしているタイは、2014年の軍事クーデター以降、6年に亘り軍事政権下にあり、国民の権利を制限する政令が公布されることも珍しくない。
今回のコロナ対策でも、3月22日に1日の新規感染者数が200人弱に拡大すると、すぐに3月26日から立て続けに、非常事態宣言、出入国制限、夜間外出禁止令、薬局、食料品店を除くほぼすべての小売店をストップする事業閉鎖、酒類販売禁止に至るまで、日本では考えられないような、一般的にはかなり厳しめの措置が執られた。
しかし、その後、新規感染者数は、完全にピークアウトし、現在の累積感染者数は3000人ほどに収まっている。
4月24日現在、タイ保健省が発表したの最新のタイ国内での新型コロナウイルス感染者数は15人。(昨日は13人)現在までに退院した方は2,490人。入院中の方は314人。亡くなった方は50人(新たに0人)と日本とは比べ物にならないほどの成果を見せている。
3月下旬に、累積感染者数がほほどっこいどっこいだった日本とは異なり、現在のタイでは、医療崩壊など全く懸念されていない。
非常事態時には、平時と同じように、やみくもに自由を容認することは適していない。今、ここで国民の自由を多少なりとも制限することによって、将来の自由を約束するからだ。
非常時においては、事態の終息に向けて速やかに対策を講じ、被害を最小限に食い止めることのみが評価される。
最も難しいのは、コロナ感染の封じ込めと経済の延命が相反する概念であり、それらのどちらの被害も切り捨てることが出来ないことにある。
そして、当たり前のことだが、その対策により、結果が吉と出るか凶と出るかは誰にもわからない。
そのような状況下で、日々判断を下していくこと。
そのためには、あらゆる政治的思惑を排し、事態を極めて科学的に取り扱うことのできる危機管理のプロフェッショナルが必要なのは言うまでもない。
事の大小はともかく、ヒトは、人生において様々な危機に直面する。
そして、常にその人なりに、判断し、進む道を選んでいく。
その判断は、間違うこともあるだろうし、人生に失敗する人もいる。
それは、なぜか!?
我々は、誰もが危機管理のプロフェッショナルではなく、感覚的に対処するからだ。
このような未曾有の状況において、国家の舵取りをする総理、そして、危機に際して首相を補佐すべき政府内各大臣も、その分野の専門家が任じられているとは、おせじにも言い難い。
さらに、危機管理のプロフェッショナルが存在しない(反映されない)ことは、このところの迷走劇を観るに明白で、日本国民にとって、これ以上の悲劇はないが、これらすべては、今日までの有権者の政治的怠惰に対する過失無限責任であると腹をくくらざるをえない。
誰もが知っていることだ。日本の政治はそうやって回ってきたからだ。
もちろん、今後、または、将来においては、政治家の選び方、さらに政府、国務大臣に求められる職能領域は間違いなく変わっていくだろう。
しかし、目下の問題は、今日どうするか?明日どうするか?が日々求められ、誤った判断が、命取りになりかねないこの状況だ。
不幸なことに、今週末に、国政選挙はない。逆に現安倍政権に、総辞職を求めたり、国会を解散、選挙を戦ってもらう、そんな時間的猶予はないし、それこそ本末転倒だ。
野党は、非常時において、批判はすれども、政局に走り、安倍政権の打倒を目的化してはならない。これは、野党が、今後国民から政権担当可能な集団として認識されるためにも、必要なことだ。今後は、国民のために何を生み出せるかだけを考えて欲しい。
どうしたら、日本は今のようなボトルネック状態から脱することが出来るのだろう。例えば、政府内に危機管理の専門家を結集させ、これまでのような政治的な思惑をすべて排し、すべてを開示しながら、この危機への対応のみを行うプロ集団。そして、彼らには、ある程度の独立した発言権を与え、右も左も真ん中も、日本人が一つになって、彼らを信じて従うことしかない。と思うがどうだろうか?
その際、安倍総理には、国政のナンバーワンとして、奥で、でんと構えて頂ければいい。
いったい、そんな理想的な完全無欠のプロ集団を起用する方法はないものだろうか?
現政権が稚拙なリーダーシップを発揮してきた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議から、政権関係者を差し引いたら、そんな組織が出来るのか?
または、いわゆる有識者会議みたいな体裁を採るのかもしれない。
どちらにしても、そんな奇抜な外部ブレーンを起用するというアイデアは、超法規的なものであることは間違いないし、法的根拠のない夢想と言われれば、その通りかもしれない。それが出来ないならば、政府内に、野党議員も入れて、風通し良く議論を重ねるやり方もあるだろう。その際、朝まで生テレビのような低次元な政局論争は、もう聞きたくない。
こんな今こそ、次の選挙を意識せず、政治的な思惑にも右往左往しない、
科学的根拠に基づいた現状分析や心からの愛国精神を持った方向性を示唆できる危機管理に長けた政権運営母体が真に求められていると感じる。
その際、一つだけ覚悟しなければならないことは、そんな彼らプロ集団が決めることですら、結果、間違いもあるかもしれないということだ。
それでも、今のような「一寸先は闇」といったストレスからは解放され、間違いなく未来に向かって前進することが出来ると信じる。