日本企業の資本主義はどんな感じ?
最近、日本企業の中でも、社員に自社株を報酬として付与する制度が出てきました。ぱっと見は、社員と株主の目線を揃えて、会社の成長を後押しする仕組みに思えます。でも、よくよく運用ルールを確認すると、どうも資本主義の基本的な考え方とズレている部分が見えてきました。
制度の内容とその問題点
ある企業では、こんなルールが設けられています。
自社株は定年まで売却不可
もし定年前に辞めたら、株を売る権利すら消滅する
この話を最初に聞いた時は腰を抜かしそうになるぐらい、驚きました。いくつか理由があります。
1.社員にとって柔軟性がないのでは?
どんなに会社が好きで、現時点では「一生この会社で働きたい」と思っている社員でも、定年を迎えるまでのの長い間に何が起こるか分かりません。気が変わって転職したくなるかもしれません。会社や仕事に不満はなくても家族の事情で辞めざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、この制度では、そのようなときに今までの会社への貢献から付与された自社株がすべて泡のように消えて無くなってしまいます。これではまるで退職時に、会社を辞めることで罰を受けるようなものです。
2.社員の自由が奪われていないか?
この制度、個人的にまるで社員は企業から「透明な手錠」をかけられているように感じます。パワハラにあったり、会社の方針に合わなくても、資産を失うことが明白なため、辞めたくても辞められない。社員の自由や権利が大きく制限されている気がします。
3.労働市場の流動性が損なわれるのでは?
企業は古い社員が去り、新たな人材を迎えることによって、異なった視点が持ち込まれ、成長のための変化が促されることがよくあります。同様に個人も、社外で新たなチャレンジの機会を得ることにより、同じ会社に長くとどまる場合に比べ、より良い条件でキャリアアップをはかれるケースがあります。
しかし、この制度のもとでは、企業全体の新陳代謝が進まず、また労働市場の流動性も高めることにも繋がりません。
資本主義とのズレ
資本主義は、本来は個人の自由な経済活動と、公正な競争をベースにしています。でもこの制度だと、以下の理由から、どうもその理念にそぐわないと感じます。
個人の経済的自由が制限
企業と従業員の力関係がアンバランス
労働市場の流動性の妨げ
改善案
この制度をもっと効果的なものにするためには、こんな改善が考えられます。
売却制限の期間を短くする(例:5年後には段階的に売却できるようにする)
退職時により公正な評価に基づいた買取制度を設ける。
さいごに
この自社株付与制度、表面上は社員のためを思っているように見えますが、実は企業側の都合が優先されているのが現状です。より資本主義に則り、かつ社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるためには、社員と企業の利益が一致するような仕組みを作る必要があります。それにより、健全な資本主義の発展と企業の持続的な成長が実現するのではないかと考えます。
以上になります。今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。