食に全く興味がなかった薬屋の社長が、飲食業を始めた理由
なんで薬屋が飲食店をやるのか?それには強い想いがあります。儲かりそうだからとか、食べるのが好きだからとかじゃなく、そもそも食になんて全く興味なかったのに、なぜ多額の投資をして新規事業を始めたのか?
そんな事を書いてみました。
1、食と僕
中高6年間、僕は寮生活でした。寮に入っていたのは30年ほど前のことなので、今は当時とかなり変わっていることは確かで、こんな事を書くのは本当に申し訳ないのですが、当時の寮の飯は本当に不味く、食えたもんじゃなかったです。でも、お米だけは食べれたから、お米を中心に、鮭フレーク、鮭フレークとマヨネーズ、おかず海苔、お茶漬け、ふりかけなどでお米をひたすら食べてました。
実際に、保護者からの食堂への不満も多く、結局6年間で業者は3回変わったと記憶しています。でも学生は食べ盛りだからもっと食べたい。でも、僕の親はお金に厳しく、小遣いは全然くれないし、少ない小遣いは服を買うこと(当時は裏原宿系などバズっていた)に使いたかったので、当時1食50円ほどの袋麺のうまかっちゃんを、寮に設置されているポットのお湯でふやかして(鍋の沸騰した湯ではない)食べたりして腹を満たしていました。お昼ご飯も、お金もないし、昼休みはバスケをしたいから時間も節約し、カロリーメイト1箱4本入りを1日1本だけ食べたりしてました。1週間500円程で過ごしていた訳です。すごい。。。
大学からは一人暮らしでした。
ここでも親は厳しくて、、、。涙
まず、学校から実家は近いのに家から通わせてはくれない。家賃と携帯代だけは出してくれましたがあとは出してくれない。(涙)バイトしろと言われ、生活費はドラッグストアと家庭教師のバイト代で、月15万くらい稼ぎました。
(※ちなみにドラッグストアのバイトとは新生堂でのバイトで、当時の店長とか主任とかパートさんが今も働いていてくれることに心から感謝しています。)
そして、そこで稼いだお金は、どうなるかというと、着たい服や楽しい飲み会のお金に使いたいから、節約。親に内緒で祖母に電話して、お米を送ってもらい、スーパーで18円のもやしを買って2日分に分け、塩胡椒で炒めて食べたりしてました。そんなんだから、体重は身長175cmで52キロしかありませんでした。ほんと、ガリガリです。
社会人になってからも同じような生活で、1日1食、朝も昼も食べず、夜はコンビニ弁当でした。朝は食べるより寝たい。昼は休憩してご飯食べる暇があったら働いて、誰よりも早く成長し出世したいと思ってました。
次第に、仕事の内容や収入も変わり、夜は外食することも増えましたが、美味しい食事を食べるというより、お酒を飲むことを楽しんでいました。
つまり、食に全く興味がありませんでした。
若い時はそれで大丈夫だと思っていました。
2、異常発生
しかし、身体に異常が出てきました。これまでの食生活の影響が現れたのか、健康診断の結果に如実に現れました。血液ドロドロ、、、まさか!と思いましたよ。こんなに痩せてるのに!(30歳の時は63キロくらいになっていて正常だと思ってたので。)でも、同時に、このままではいけない、やばいと思いました。
そして、やった対応策が、サプリメントを飲むこと。でも、そんなことで正常になるわけないんですよね。正直、どうしたらいいかわかりませんでした。でもなんとかなるだろうとか思ってたんです。
3、正面衝突
身体だけではありませんでした。ある時、ふと、妻に「僕は食には興味はない。」と言ってしまったんです。料理を一生懸命作ってくれる人に対して、絶対に言ってはいけないことを言ってしまったんです。しかも、妻は料理の教室を持つような料理のアドバイザーなのにです。
当然めちゃくちゃぶつかりました。
(本当にごめんなさい。)
でも、正直、こんな生活を20年以上してたから、味覚もおかしかったんだと思います。美味しいとかが本当にわからなかったんです。妻の料理も、、、本当に本当に本当に本当にごめんなさい。
でも、その時、妻とぶつかり、妻も本気で向き合ってくれて、僕の心が変わりました。
ちゃんと食生活を見直そう。と。
そうやって「食」に対する考え方が変わっていきました。「お酒」との向き合い方も変わっていきました。
4、体感と興味
食のアドバイザーの妻からのアドバイスもあり、1日1食から3食にしました。朝はしっかり食べ、昼はお弁当。夜も外食を控え、妻の料理を食べる回数を増やしました。
妻はいつも栄養バランスを考えてくれて、朝は子供達とは別メニューにしてくれたり、外食が多い時とかは和食系にしてくれたり、自分も仕事してて大変な中、朝早く起きて、朝ごはんとお弁当、仕事から帰ったら晩御飯と、本当に感謝しています。ありがとう。
食べる量はかなり増えましたが、体重は全く増えず、逆にしっかり食べているので体調も良く、パフォーマンスも上がって行きました。
でも、それも当然なんですよね。バランスがいい食事は太らないし、身体を作るんです。
そして、健康診断の数字は1年で改善!すごい!
さらに、妻の料理やお弁当が格別に美味しいと感じるようになり、さらに、外食でも、美味しいお店とかわかるようになってきたんです。
そして、味だけでなく、食器や盛り付けなどにも興味を持つようになり、食事と一緒に飲むワインなどにも興味を持つようになってきました。
5、気付きと想い
そして、気づいたんです。
「食」は人を幸せにするのだと。家で食べる料理ももちろんそうですが、外食にもその力があると。
そして、テーブルを囲んで、会話をしながら食事をすると、さらに幸せを感じると。
僕たちは、薬局やドラッグストアやフィットネスクラブを経営しています。でも、やりたいことはそれではなく、それは手段で、僕たちはその先にある、笑顔を提供したいと思っています。つまり喜んで欲しいのです。
マイナスを0にするのではなく、マイナスをプラスにする。そんなイメージ。つまり、幸せにする。
そう考えた時に、いつしか「飲食業」に興味を持ったし、飲食業をやっている人を羨ましくも思い始めてたんです。
薬局やドラッグストアを通じて、人々を笑顔にしたいと思っているけれど、提供するも薬屋や商品を使うのはお店ではなく別の場所。そして、笑顔になるのは、それを使った後。でも、飲食業は目の前で笑顔になってもらえる。目の前で料理を美味しいと感じ反応し、笑顔になってくれて、一緒に食事をする人とテーブルを囲むことで楽しい時間を過ごしてもらえる。そんな空間なんだ。
自分が本当に興味を持ち始めたと気づいたのは妻からこんな事を聞かれた時でした。「薬局をやっていなかったら何してる?」と聞かれた時に、「飲食かなぁ?」と答えた自分がいたんです。
6、出会いと葛藤
そんな時、西鉄薬院駅構内に150坪の物件が出てきました。うちが契約しなかったら、他のドラッグストアが出店して、近く新生堂の店舗に大きな影響を与えます。だから、絶対に抑えないといけない案件でした。でも、周りはドラッグストアだらけ。どんなに電卓弾いても採算は合いません。
どうしようと、毎夜苦しみました。契約しないと競合店進出で既存店の売上利益が落ちる。契約してドラッグストア作ったら赤字間違いなし。苦しみました。
そんな時、ある人の紹介でタニタカフェというものを知り、タニタさんと繋がりました。
これだ!食を通じて、人々に「健康」と「笑顔」を提供できる!
ここにドラッグストアを作っても仕方ない!そうだ!健康レストラン併設の健康相談薬局をやろう!そっちの方が地域の人も喜んでくれる!
そう思ったんです。
しかし、、、
創業の父からは大反対されました。「俺は飲食だけはやらないと決めている」と言われました。社内からの反発も、言われはしないけれど、感じました。社長のわがままだ。どうせ成功しない。そんな雰囲気を感じていました。
でも、みんなに想いを伝え、協力を仰ぎ、チームを作り、出店することを決断しました。
初の飲食業。
まず、シェフ探しです。シェフを決める時も皆の意見は割れだけれど、本当に真面目で研究熱心なシェフが来てくれました。
そんなシェフが想いを込めて作ってくれた試食会。
あれ?味、皿のチョイス、盛り付け、全てに違和感を感じました。会に参加したみんなも感じたのかも知れません。でも、シェフが一生懸命作った試作品。相手のプライドが傷つくのではないかと、言えません。でも、本気で向き合わなければ、美味しい料理をお客さまに提供できないと思い、僕の感想と想いを伝えました。
すると、シェフを中心にキッチンのメンバーさん素直に受け入れてくれて、皆で何度も何度も試作を繰り返し、結果、本当に良いものに仕上がりました。オッケーを出した時のみんなの笑顔は最高でした。味、皿のチョイス、皿の温度、盛り付け。本当にいいものができました。
7、スタートと挑戦
そうやって、西鉄薬院駅直結の「新生堂ヘルスケアステーション薬院」のオープン。
①新生堂の調剤薬局
②健康測定・相談のシンプラスラボ
③タニタカフェとコラボしたレストランのシンプラスキッチン
3つの複合店です。
オープン直後は、テレビ局が取材に殺到。
お客さまも殺到。
大成功!
かと思われました。
しかし、、、オペレーションはぐちゃぐちゃ。料理の提供は遅く、怒って帰る人もちらほら。クレームの嵐。SNSでも厳しい声。でも救われたのは、美味しいと言ってもらえたこと。その後、ホールの店長を中心に皆でオペレーションを改善。今では、驚く速さで、質の高い健康メニューを提供できるようになりました。
でもまだまだこれからです。
これからも、メニューの開発やオペレーションの改善も進め、テイクアウトやデリバリーへの対応も行っていきます。
ただ、飲食は本当に難しく、今ではリピーターさんが30%を超えましたが、まだまだ新規の人が少なく、目標には届かずです。
でも、焦らず、一人一人のお客さまの食事の時間を大切にしていきたいと思います。
実は、昼のランチだけじゃなく、夜も評判いいんです。タニタカフェのメニューではない、シェフ自慢のイタリアン。ピザ、パスタ、ローストビーフ、サラダ、スープなどなど。
先日ご利用いただいた、貸切パーティーの特別コース料理(予算に合わせて作ります)は、多くの美食家の方にお召し上がりいただきましたが、本当に美味しいと喜んでいただけて、サプライズの誕生日ケーキも予算に合わせてオリジナルで作らせていただいたのですが、本当に好評でした。
目の前で喜んでいただけることが最高の喜びです。
8、終わりに
長文読んでいただき、ありがとうございました。
これからも、想いを持って、食を通じた健康と笑顔をお届けできるよう、皆と力を合わせて頑張っていきます。是非、一度お立ち寄りください。
ひとつでも多くの人生をhealthy&happyに。
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