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写真館の少年
幼い頃好きだった少年は
写真館の息子だった
写真館のショーウインドウには
少年が小学校に入学したときの
ランドセルを背負った写真が飾られていた
少年の家族の集合写真も飾られていた
写真館へは
家族の記念日に
町の人々が写真を撮ってもらいにくる
家族というものの幸せの空気が
写真館には満ちていた
僕も大人になったら
父さんのようなカメラマンになるんだ
少年は言った
そしてたくさんたくさん
いい写真を撮るんだ
あれから何年も経って
故郷の町を離れてしまった
今
あの写真館がどうなったのか
あの少年がどうしているのか
もうわからない
でも
もしも
あの写真館が今も営業していて
あの少年がカメラマンになっているなら
今のわたしを
撮ってくれないだろうか
人生に疲れた
わたしを
幸せそうに
美しく