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包丁の心得
先日、京都「食道具 竹上」を訪問した。
技術向上、そして「道具を大事にする」という竹上の職人、廣瀬さんの想いを凪の社員と共有するためだ。
凪では毎日の環境整備の中で店内社内の整理整頓をやっているが、道具に対しては今まで大きな関心を向けられていなかった。
いい食材を使って美味しいラーメンを提供するのが当たり前の時代。
煮干ラーメンを中心にいろいろなラーメンを作っているが、基本の道具にも改めてしっかり目を向けようということで廣瀬さんを訪ねた。
今回は副社長の西尾にまとめてもらった。
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ラーメン屋のSDG’s
凪の柱メンバー一同で包丁の文化を伝えている京都にある『食道具 竹上』に行ってきた。
こちらの職人、廣瀬さんはオーストラリアにいるときに、日本料理の素晴らしさに気づき、包丁の道に進んだ30年のベテランである。単に包丁や研ぎ方だけではなくて、色んなお話があった。
『切れ味で料理が変わる』
食材の品質や鮮度をウリにしている店は多いけれども、包丁の切れ味でウリにしている店はない。別にウリにすることはないけど、それでも包丁を大切に扱うのは大切。
一般に包丁の刃が丸ければ、食材の切り口は繊維が潰されランダムにもなり痛むのが早くなる。切れない包丁であるから力が入り、万が一怪我をした時の代償も大きくなる。
一方、研ぎ澄まされた包丁は真逆である。
包丁とはまだれに包むと書くように、本来は切るというよりも食材を活かす行為である。
例えば、蕎麦でいうと角のある蕎麦になる。
それは口の中での刺激となり、脳へ伝わり、美味い!となる。
茹で時間だって変わる。味の染み込み方だって変わる。
食材なら品質、保存期間だって変わってくる。
日本料理の職人のことを「包丁人」と評することもあるとおり、日本の料理は切れ味で成り立っているといい。
『守(も)り』と『始末』
包丁を研ぐ姿勢は、料理に向かう姿勢にもつながるという。包丁は管理するのではなくて、「守(も)り」をするという。心を寄せて、同じ目線で活用するから、馴染んでいく。そう、子供を管理するとは言わずに、子供は子守するというが、そういうことなのだそうだ。
包丁には「始末」の文化があり、それはお金をかけずとも直しては使っていき、最後までモノを大切に扱う文化ということだ。順番もあるから始末ともいう。
始めに本刃をつけて、それから毎日の手入れをしていく。末としては、仕事も1日の最後に明日もいい仕事ができますようにと祈るように包丁を研いで仕事を終わらせる文化があった。何事も始めにしっかりしないと何をやってもうまくいかない。それは上手や下手という技術の前の姿勢であり、心があるかどうかが起点となる。
包丁を研いで、それはひいては食材も活きる。
無駄なく、また最大限に活かせる。それを食べるお客さまも喜ぶが、それを生産者も喜んでくれるはず。
『守(も)り』と『始末』の文化を根底に日本の料理は育まれてきた。こういった循環はSDG’sであろうし、日本に昔から伝わる文化なのだという。
勿論、包丁そのものについての話もあった。
鋼(はがね)の包丁、ステンレスの包丁との違いを中心に、バランスが大切であるということであった。
鋼の包丁は切れ味が抜群であり、その切れ味の持続性も長いが錆びていく。
ステンレスの包丁は切れ味はそこそこであり、持続性も鋼が1週間であればステンレスは1-2日であるが錆びずらい。
鋼が炭素でできているからに由来し、その炭素の量が少ないステンレスであるからに由来する。
良い包丁を使うことも大切であるが、良い包丁である状態を保つということはもっと大切なのではないだろうか。
更には、その道具を選ぶ段階も大切になってくる。
包丁は素材だけではなくて、包丁の重心はどこにあるのかなどの形体によっても所作が変わってくるからだ。
ここでもやはりバランスであり、均整が大切である。
凪はラーメン屋なので、包丁はチャーシューやネギくらいにしか使わない。逆に言えば、チャーシューとネギを本当に美味しくするためにここを気を付けていければいい。
包丁を研ぐことは面倒でもあるし、それによって売上が上がるようなことでもないけれども、これが美味しいラーメンにつながり、また凪のメンバーがラーメンを作るところに気持ちが入っていくなら意義があることにもなる。
そんな習慣のもてるラーメン屋になるといい。
凪でも改めて、高級なものとかではないけども、きちんとした包丁を新調する。毎日の包丁研ぎを通じて、美味しいラーメンを提供できればいいと思う。
廣瀬さんから「成功は習慣の80%で決まる」という結びの言葉があったが、
日々の環境整備と結びつく言葉だった。
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包丁に対して子守するという発想はすごく共感出来て、我々飲食店も日々のお客様に感謝しながらもそういう時間を作ることが今までは難しかった。
これからは包丁を研ぎながら仕事する時は子守りする気持ち、清々しい心でやって、より美味しいラーメンをお客様に届けられたら素敵だろうと思う。