3月の深夜タクシーで
3月のある日。
友達と深夜1時くらいまで飲んだあと解散し、タクシーで帰ることにしました。
タクシーをつかまえるため、広い道まで歩きました。
広い道に出ましたが、深夜だったので車は全然走っていません。
肌寒い中、ようやく通りかかったタクシーをつかまえ、運転手さんに行き先を伝えました。出発してすぐに運転手さんが言いました。
「昼のメーターにしておきますよ。」
「夜なのにどうして?」
酔いの中でそう思いながら
「ありがとうございます。」と返し、
外を眺めていました。
出発して10分くらいすると、
運転手さんは何も言わずにメーターを止めました。
「家まではさらに10分はかかるぞ?」
と思いつつ、もし道が違っていれば伝えることにし、酔いの中に戻り外を眺めていました。
そうしてそのまま、タクシーは僕の家までの道のりをまっすぐ進んでいきました。
曲がるべき交差点をきちんと曲がり、何事もなく僕の家まで着きました。
運転手さんが言いました。
「私、今月で最後なので。1,060円です。」
ほっと体が温まるのを感じました。
「おつかれさまでした。」
今までで一番、心を込めて言うことのできた
「おつかれさまでした。」でした。
千円札1枚と百円玉2枚を渡すと、
笑顔で百円玉2枚を返してくださいました。
「ありがとうございました。」