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思い出に残らないデジタルと思い出しかないアナログの話|vol.337

思い出は全てモノに宿ります
形のないデジタルは人生を通り過ぎ
全て上書きされてしまう物です

押入れから出てきた
形のある思い出を手にとることで
当時の自分の気持ちにまで
アクセスできる

われわれはそんな時代に生まれました

今日は
ノスタルジックなアナログの話


筆者は大分市で
ITプロモーション業をやっています
ロックスカンパニー久保田哲と言います
最後までよろしくお付き合いください

▼久保田のプロフィール



押入れから出てきた13歳の久保田少年の話


寒くなってきました

思い切って
昨晩衣替えをしました

タンスの半袖群を
押入れの長袖群と入れ替え
厚手のものが1年ぶりにラックにかかります

私の部屋は狭いので
押入れの引き出しには
いろいろなものが入っています

そのうちのひとつがレコードです

今は聞くこともないレコードたち

衣替えの手を休め
レコードたちを1枚づつ
思い出と共に眺めてしまいます


気づくと
そんな中の1枚が
私を中学1年の自分の部屋で

針を落として聞いていた
思い出に引き戻してくれました

中島みゆき「予感」というアルバムです


小学校高学年の頃から
みゆきさんのオールナイトニッポンを聞き出して

レコード屋さんに
「臨月」というアルバムを
買いに行ってからのファンでした

中学生当時

自分の部屋にあった
ステレオコンポで

土日の西日の暮れかけた夕方
こっそりと針を落とします


夕日が何故か寂しそうに語りかけ
レコードの歌が時間を追っかける

一言も喋らず
口ずさむことなく

空を眺める時間でした


中島みゆき「予感」というアルバムは
あの有名な「ファイト!」という曲が
入っているアルバムです


当時のコンサートツアーにも
いきました

トキハのプレイガイドに
チケット購入で朝から並び
やっとの思いで生の中島みゆきを見る

今は無き大分文化会館の2階席から
「ファイトーーーー」と
叫んだのを覚えています


当時私はフォークギター少年でした

新聞配達でお金を貯め
大分の街の楽器屋さんで
フォークギターと歌本を買い

家で黙々と練習をしていた頃です


みゆきさんはギターを弾き語る
女性シンガーとしては
当時貴重な方であり

独特の詩の世界観と
子供だった私たちにもわかりやすい
大人の世界を感じたものです

他にも欲しいレコードが
たくさんありましたが

お金のない中学生には
曲を聞く手段はラジオしかなく

懸命にカセットに録音し
繰り返し繰り返し
部屋で聞いていました

いまはスマートフォンの時代
いつでも
どこでも
大してお金もかからず

気に入った曲は
手元に残すことなく
好きな曲を好きなだけ聞くことができます


曲が思い出と
シンクロすることはあるでしょうが

何十年も後に
実物(レコード)を眺めながら
思い出に浸ることはできません


作品を聞く方も
作品を創るアーティストも

デジタルの利便性に飲み込まれ

一体どう楽曲と向き合っていけば良いのか

一体どう自分自身を
残していったら良いのか
わからなくなっています


デジタルとはほんとうに実感がなく

目に見えることなく
触ることさえできず
軽く寂しいものだなと

デジタルで商売している身として
これでいいのかと自問自答し続けています


デジタルの利便性は
もちろん
追求しなければんばりません

しかし
アナログの持っている重量感や
質感を無視したデジタルは

人々の記憶に残るものにはならず

やっぱり
アナログをベースに発想し

温かみのある
愛されるデジタルの世界が
一番だと思っています


人間の思考回路は
そんなに優秀ではありません

処理速度は機械には
到底叶わず

いくらアインシュタインでも
負けてしまいます


しかし
それぞれの人の人生に
豊かさをもたらす瞬間には
アナログなものが不可欠です

物を大切にする心は
アナログにしか働きません

最初に買った車との思い出
最初に買った電化製品
カバン・こたつ・ギター・グローブ

すべて
思い出とともに
記憶の中に大切にしまわれています


これからのデジタルも
大切にされるデジタルで
あって欲しいと願います

それは
あなたしか持ち合わせていない
あなただけの思い出だから






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