海を渡りたかっただけなのです。
以下記事の経緯で会社を休職からの退職をした私だが、その休職期間中の話である。
2017年のクリスマス頃に休職を始め、3月末まで休職期間が続く。
何かもう全てに絶望しきって、疲れていた。漠然と音楽をやりたいと考えながらも、こびり付いて取れない焦げのような迷いがあった。
兎に角、時間と金はあった。休職なので、給料も入ってくる。実家にいるし食には不自由しない。
或る日、好きなバンドのライブが北海道の新冠という僻地で行われるという情報を見付けた。
そうだ、旅でもしよう。一回色んな事を忘れよう。
生まれて初めてのフェリーに載って、私は一人北の大地へ渡った。
三月初め。まだ残雪の残る季節。
秋田・土崎港を経つ日は、よりによって荒れ模様。
危険なので甲板には一切出られず、揺られてたら苫小牧港に着いた。
その当時、北海道南岸の路線が数年前にあった津波被害で通っておらず、私はタクシーを拾って新冠へ向かう。
運転手さんと何か話したのだろうか。何も覚えてない。道程が長かったゆえ、途中コンビニへ寄ってくれた。ザンギのおにぎりが美味しかった。
新冠へ漸くに着く。
一人だし会場に友達がいる訳でも無い。
ライブを見た。レ・コード館という古い蓄音機などを展示してる建物を見た。道の駅をぶらぶらした。ラーメンを啜った。
そしてただ、ただ帰って来た。ぼーっとしながら、ウロウロしてた感覚だった。
あの旅に何か意味はあったのだろうか?
六年経って、私はやっと分かった。
----------ライブもどうでも良くて、誰とも会いたく無くて、ただ一人で海を渡りたかっただけなのだと。
『海を渡りたかっただけなのです。』という昨年末に作った曲の、余話である。
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