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もう一歩、踏み込んでみようか (13)
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「もう90歳を過ぎたら、何やっても無駄だわ。」
「婆様、あの人、見てごらん。」
私は、隣のテーブルに座るお婆さんを指さした。
お袋と同じくらいの年恰好で、お袋よりも若干シャンとしていない。
でも、昨日、この方を見ていて、思った。
この人は、「ちゃんとしてる」っと。
テーブルの上に、ノートと手帳が揃えて置かれ、ボールペン2本が手帳の上で几帳面な姿勢を保っている。
不自由な指先に力を込めて、車いすのロックを外し、テーブルの上の手帳に正面から向き合えるよう、車いすを微調整している。
きちんとして、自立した方だな、っと思った。
「ちゃんとしてるでしょ。あの人は。」
私は、少しきつめにお袋に語り掛けた。
ご当人は、どこ吹く風、を装っている。
「ちゃんとしてますよ。」
お袋の患者さん仲間の齋藤さんが、割り込んできた。
あはっ。斎藤さんは、まだ、お袋との付き合いが浅いね。
私は、そう思った。
どうだろうか。高校生くらいまで。いや、大学生くらいまで、私は、「僕の母親は世界一だ!」と本気で思っていた。
洗脳である。洗脳されていたという表現が一番的確な気がする。
齋藤さん。今、洗脳されているのね。
「他所(よそ)の子と比べられるのって、子どもが一番嫌がることですよね。私は、今、母親に対して、それをやってます。」
私は、斎藤さんに向かって、ほほ笑んだ。
昨日、お袋に「数独」のコピーを数問分手渡した時、私は、こう言った。
「一度にたくさんやっちゃだめだよ。疲れるからね。まあ、一日1問か2問、かな。」
今日は、「数独」がどれくらい進んでいるだろうか?と楽しみにして病院を訪れた。
私は、漠然と、2~3問が完了し、いくつか間違っているんだろうな。と思っていた。
結果は、6~7問、手が付けられていた。
どれも、中途半端で、つまみ食いした感じ。
とっ散らかった感じである。
そうだ。私も、こんな子であった。
考え方が、物事への取り組み方が変わったのは、いつ頃からだろうか?
大学受験?就職?結婚?
いや、少しはマシになった気がするが、基本、今の私も根底には、お袋の考え方ややり方が生きている。と確信している。