もう一歩、踏み込んでみようか (2)
妻と私に、穏やかな時間が戻って来た。
時々襲ってくる、お袋の左足の激痛は、手術直後、直ぐに消えたようだ。
思えば大変な数日であり、従って、仕事が山のように溜まってしまった。
だが、家族に痛みを抱えている者がいない状況が、妻と私の苦痛を取り払ってくれたようで、穏やかな気持ちになれていることが、互いによくわかる。
病院の駐車場から見える夕焼雲が、私たちの心情を映し出しているように思えた。
デイケアセンターから戻ったお袋は、玄関で転び、上がり框に左足を強く打ち付けたそうな。
妻に呼ばれた私は、即座に玄関へ向かい、お袋を抱き抱えると、お袋のベッドに運んだ。
「時々痛みが来るが、大丈夫」と言うお袋。
ぶつけた筈の左足には痣も腫れもない。
が、少しでも左足を動かすと激痛が襲うようで、二日目からはオムツを着けてもらうことにした。
私たちの寝室は3階。
お袋の部屋は1階。
慌てて、インターフォンを注文したが、まだ使っていない。
2階のリビングで、「3連休が明けたら、近所の整形外科にでも連れて行こうか?」と妻と話していた月曜日の朝。
お袋の声が聞こえてきた。
痛くって、どうしようもないから救急車を呼んで欲しいというのだ。
つづく