独断と偏見式・レコード道のはじめ方
今年は1週間休みの年末年始。なかなかここまで連続した休みは平凡社会人には取りにくいけど、お金もないしどこも混んでるしで、やることといえばなかなか平日で手の動かないこういったところに何かを書き記すことぐらいしか。
というわけで、短期集中でポコポコと連続して書いていきます。何カ月何年とたった後で知りたい人が目を通してくれればラッキー、くらいな。あと自分が後で振り返って読むのも悪くない…
2024年はレコードの世界に色々と足を踏み入れたけど、レコードって既に完成された技術なので、ここから先スマホやPCみたいに劇的な変化も訪れないので、環境さえ整えてしまえばわりと一安心できる趣味のようにも思います。
もしレコードに少しでも興味を持った人がいれば、手を出そうかどうしようか悩んでいる人の何かの参考になれば。後押しされればそれでよし、踏みとどまって引き返すのも、それも良し。
【超基礎】レコードが復権している
まずは知っている人については溝が擦り切れるレベルで聞いているとは思いますが、レコードの超基本情報を簡単にまとめます。
レコードの音を再生するという技術自体は、19世紀末期にエジソンの筒形ディスクに始まり、20世紀初頭に電気を利用した機械から蓄音機が生まれて、みたいな感じで、歴史的にはほぼ100年前の技術です。若干の規格の紆余曲折はあったものの、今「レコード」と呼ばれる姿かたちは1954年にRIAAカーブの規格化によって完成し、今なお続く世界統一規格となっています。
その後録音技術・再生機側の技術それぞれに時代ごとの進歩はあるものの、ベースとなる技術は1960年代にはほぼ完成して、今もその規格に則って世界に出回っています。最近のレコードブームでも、製作には当時の機材を今も使っている場合もあるとか。
1980年代から、コンパクト・ディスク(CD)が登場することで、レコードは結果的に衰退していきます。2000年代には「新品」はほぼ絶滅の途を辿るものの、2010年代に息を吹き返し生産数は現在も右肩上がりが続いてます。アメリカでは2023年にCDよりもレコードの売上が上回ったという報道もありましたね。
日本はというと、CDがまだまだ激強でレコードの20倍近く売れています。日本でレコードがCDの売上を超えることは、いまのところなさそうですね…。
結局レコードとCDは単純な世代交代ではなく、今後はレコードもいるしCDもオーソドックスなパッケージとしてこれからも音楽ビジネスけん引していく、といった状況なのでしょう。
レコードって結局CDより音がいいの?
よくレコードが引き合いに出されるときに「レコードのほうがCDより音がいい」という話題が出てきます。これに関しては色々な宗派があるので注意が必要です。
技術的観点から言えば、レコード自体の音響特性はCDには到底かないません。S/N比(音の純粋さ)もダイナミクス(音量や音圧の幅)もCDのほうが上です。アナログの回転体ゆえに、ノイズや歪みからは逃げられません。
シンプルに言えば「手軽にいい音が出せる」のがCDの魅力です。レコードでいい音を出すにはかなりの投資と手間が必要で、それなりに大仰なシステムが完成していることが多いです。
CD自体が人間の聴覚に都合の良い音域のみでそれ以外を切り捨てている一方、レコードは音本来の特性である空気の振動をレコードの溝に物理的に刻み込み、再生時も実際に針を振動させて音を鳴らしています。この辺りに、CDとの音の違いが出ることがあり、この差が、人によっては「好きか嫌いか」が出てくるといえるでしょう。
本題、レコードをはじめたい人に向けたチェックポイント
レコードに興味を持ってくれた人に、手放しで「レコードはいいぞ」というのも、ちょっと無責任かなと感じています。
ありていに言えばレコードは面倒くさいのです。今のレコードの流行りは、その面倒くささも一緒に楽しもうやが大前提にあるので、音楽を聴くのが面倒くさくなるなんてヤだよ、という人は、今日のお話はこれでおしまいです。
ここに目が届いたということは、まずは面倒くささに合意頂いたということにて、じゃあ具体的にどういった点を考慮していかないといけないかを書いていきます。
物理的な置き場所があるか?
最近、モノを買う時に、お金があるかとか、その先果たしてコストに見合うか、みたいなことを考えるのではなく「物理的に設置スペースがあるか?」「設置そのものや初回の段取りが大変かどうか?」が判断基準になっていて、結果、お金があって何らか魅力を感じても、買うのは諦めるということが増えた気がします。
レコードは場所を取ります。
レコードプレイヤー本体は、LP自体が30cmあるので、サウンドバーガーのようなミニマム構成であろうと、使用時には最低でも30cm四方の区画が必要です。また、レコードプレイヤーはスタック(積み重ね)は出来ないですし、レコード盤をプレイヤーに置いて針を落とすという人力作業も必要なので、極端に高い場所・低い場所に設置することもできません。
かつてはテレビなどの電子機器はやたら厚みがありましたが、今はすっかり細くなってしまいました。どでかいアンプを持つのはもはやニッチな趣味で、スピーカーも薄くて小さいBluetoothスピーカーを使っているという人も多いでしょう。
レコードを使いたいと思った時、まず物理的な場所が確保できるかどうかから始まります。
レコードたった1枚を永遠と聞くわけではなく、レコードを買ったからにはそのうちコレクションも増えて、保管する棚も必要となります。日本の住環境はでは場所の確保は切実な問題ですね。
音を出す装置はあるか?
当たり前といえば当たり前なんですが、レコードプレイヤー単体で音は出せず、音を出すための装置が別途必要なんです。
もうちょっと正確に言えば、以下の選択肢があります。
スピーカーを内蔵したレコードプレイヤーを使う
Bluetooth出力を搭載したレコードプレイヤーを使い、Bluetoothスピーカーで鳴らす
AUX入力が可能なアクティブスピーカーを使う(レコードプレイヤーにフォノイコライザを内蔵している場合に限る)
アンプに接続する
レコード世代的には「4」以外ないだろ!と思われるかもしれませんが、今は完全にニッチでもっとも遠い選択肢なんですよね…。ちょっと昔だと5.1chホームシアターとかがそれなりに普及してて、ホームシアターはアナログアンプのメーカーが手掛けていたことから、使われるかどうかはともかく、PHONOアンプ(MM)がちゃんと搭載されてました。今はサウンドバーとかワイヤレスシステム、DACなどのオーディオストリーマーが主流になってPHONOアンプはいなくなっちゃってます。
Bluetooth出力ができるということは、今流行りのTWS(イヤホン)にも使えるという意味では、ここの敷居は多少下がってはいる…のかな?
聞きたい音楽が決まっているか?
レコードを導入するかで、実は一番大事なのはここです。
場所とか追加機器なんて正直情熱があればいくらでもどうとでもなるんですが、それを手に入れて何をしたいか?が見えている必要があります。
この辺りは、世の中の嗜好品にみられる「とりあえず手に入れれば目的や欲は後からついてくる」と一線を画します。スマホやパソコン、ゲーム機なんかはそうですよね。
最近は、流行りのアーティストがLP(アナログ盤)もファンアイテムとしてリリースするケースがあり「せっかくレコード買ったから実際に聞いてみたいな…」という人もいるかと思いますが、そのスタートだと後が続かず、宝の持ち腐れになっちゃう可能性もあります。今どきのアーティストが「今後はレコードでしか新曲はリリースしません!」なんてことは絶対ありません。
レコードは、結論いえば1960~1980年代に出た音楽を聴くことではないかと思ってます。この時代の音源が、いまもなおサブスクになっていないケースもありますし、この時代の音楽(ジャズでも、クラシックでも、歌謡曲でも)を聞きたい欲求があるなら、レコードはおあつらえ向きです。
有名な盤ならCD化され配信にもなっているでしょうけど、オリジナル盤がレコードで出ているなら、その音楽の「空気感」まで含めて体験できるのがレコードなのではないかと思うのです。
レコード買った後の面倒ごとも知っておく
先に「レコードは面倒くさい」と言いましたが、当然ですが、買うまでが面倒くさいのではなく、買ってからが面倒くさいのです。
実際にレコード運用はじめた体験をもとに、こんな面倒くささがあるよという具体例を示していきます。果たしてそれでも情熱を維持できるかどうか、もしこれから導入しようと思っている人は最後の試練を、どうぞ。
欲しいレコードは簡単に手に入らない、売っていても今は高い
新品レコード、今は概ね4千円~といったところです。ファンアイテムだともっと高い場合もあり、結局コスパで言えば、サブスクで聞くか、デジタル購入するか、CDのほうが安いです。
今は販売していない現役時代のレコードを手に入れる場合、多くの場合は中古ショップやオークションを巡る形となります。そこでの一期一会の出会いもあるでしょうけど、ある程度一定数コレクションが集まり「具体的にこれが欲しいな」と思っても、簡単に手に入らないケースが多々あります。
また、レコードは作る側も売る側も「面倒くさい」製品なので、新発売しても、期間限定生産だったり完全受注生産だったりして、「待てば安くなる」なんてことはまずないとみてよいです。買い時を逃すと、概ね定価より高くなると思ってよいです。今は買い手が日本国内より海外に多くいますし、円は安いので価値あるものはどんどん海外に買われちゃいますから、日本人のレコード愛好者には今の状況は踏んだり蹴ったりです。
手に入れても油断するな、不良品率は高い
レコードは、それでも経年劣化しても状態の良いものはめちゃくちゃ多いと思います。が、不良品率は高いです。我慢できる程度の表面の傷や軽いノイズなんて大抵許容範囲で、中古・オークション品では再生に支障の出るトンデモ品がやってくることがありますし、新品でも倉庫保存状態が悪くて歪んでしまっているケースもあったりなかったり(前に旧ツイッターで、新品なのにボコボコに歪んだレコード盤が届いた人がいましたね…その後無事交換してもらったみたいですが)
メンテナンスは欠かせない、繊細な装置
以前の私のnoteが意外と好評だったのですが、長年続く宗教論争があるとはいえ、結論としてレコードって消耗品です。
回転・上下運動・物理的な接触による振動で動作する装置なので、劣化が起こります。その最先端であるレコード針には寿命があるといわれてます(私は月100時間以上レコードを再生していますが、今のところ寿命を迎えた針はないですが…)。
そもそも数十年以上の前に存在するレコードだと経年の汚れがあったり、再生中でも室内の細かなゴミを針に巻き込んでしまったりなど。そういったことを防ぐために、レコードのメンテナンス製品も色々と世の中には出ています。
ここは厄介な点でもあるんですが、レコードメンテナンスって結構楽しくて、それはそれでハマる人も出てくるという可能性もあるのです。私は片足つっこんでます(レコードメンテグッズは近日中にnoteにする予定)。
私は、今でこそレコードに関する一連の所作は身に付きましたが、やっぱりレコードをはじめた当初は…
勢いよくレコード針を落とし、バウンドさせた
再生中に本体に衝撃を与えてしまって針が飛んでしまった
再生したまま寝落ちして数時間ずっとレコードが回り続けた
こんなことをして、何度かヒヤリとしたことがあります。DL103Rはこれが原因でわずかに針が曲がったことが…。
所作は慣れてしまえば問題ないんですが、こうした失敗で針やレコードをお釈迦にする可能性もあるということは、初期の段階で見越したほうがいいかもです。逆に、初期の段階でガッツリひやりとしておいた方が、のちのちお金や手間をかけたグレードアップ機器でやらかすよりもずっといいのかも…。
本当によくここまで読んだな、お前の苦労をずっと見ていたぞ(最初の1台におすすめプレイヤー)
ここまで読んだ方は、本当にレコードをはじめるかどうか悩んでいるか、あるいは怖いもの見たさでここまでたどり着いたかもしれませんね。
じゃあ、あとはレコードプレイヤーを買うだけと言うことで、最後に私の独断と偏見の、はじめの一歩に相応しいレコードプレイヤーを紹介します。
いうても私もまだレコード1年生ですから、これより上の世界はわかりませんし、今のところはレコードプレイヤーはそこまで上に行かなくてもいいかな…感があるので、ここから先は自学自習と言うことで…
DENON DP-400
DP-400は私が最初に買ったレコードプレイヤーで、過去にnoteにもまとめています。これ自体はすごくいいプレイヤーで、最初の1台にして十分役割を果たしてくれると思います。ユニバーサルトーンアームなので、針交換もでき、あのDENONが出してるだけあって、DL103などのMC針にも拡張できます(DL103を使うにはフォノアンプが別途必要だけど…)。
デザインも非常に良いですが、ダストカバーがダストをカバーしないのが唯一の難点ですね。ちょっと高いモデルにUSB出力に対応したモデル( DP-450USB )もありますが、USBに録音して聞くことがそんなあるかな…感。
AT-LP7
私が最初に買うレコードプレイヤーとしてDP-400と悩んだ唯一の1台。今にして思えば、こっちのほうが良かったという気もしています。当時は予算が合わずに諦めました。
基本的性能が高い上に、MC針のフォノイコライザーも内蔵しているので、MC針を買っても当面この1台で済むので、音質重視で今後の拡張も視野にあるはじめの一歩ならわりと一択な気がしますね。
っていうか今値段がめちゃくちゃ安い(2024/12/28現在、最安が67,500円)。この値段だったら間違いなくこっちを買ってたナァ……
AT-LP120XBT-USB
TechnicsのSL-1200に見た目はめちゃくちゃそっくりですが、それだけSL-1200の完成度が高いということの裏返しといえるでしょう。
こっちはSL-1200と違いフォノイコライザー(MM)内蔵、VM針付属、Bluetooth対応、USB出力対応という贅沢三昧でありながらも価格がSL-1200の半額程度と、買わない理由がない欲張りセット。フルオート機構がついてたら完全なるフルコースでしたが、そこまではなかったようで…。
SL-1500C
いやじゃいやじゃ!レコードプレイヤーなら王道のTechnicsを最初から使いたいんじゃ!でもねえお客さん、Technicsはフォノイコライザー未搭載で、そもそもレコード針もない機種がメインですから、初心者には難しいですよ…
という中では、SL-1500Cが良いです。SL-1200のテクノロジーを維持しながらも、リスニング用途なら利用頻度の低い機能をそぎ落としながら、フォノイコライザー搭載、Ortofon 2M Redという、めちゃくちゃ性能のいいMM針が初期搭載されているという、Technicsからはじめたい人向け贅沢スターターキットです。
難点は、Technics自体がそうなんですが、新品はオンライン通販はしておらず、オーディオ専門店など店舗で買わないといけない点です。ヨドバシ・ビックカメラも売ってますが通販では買えません。在庫があるかとか値段が高いのもそうなんですが、重くてデカいので、配送サービスのあるオーディオ専門店ならともかく、家電量販店でお持ち帰りで購入したら帰りが大変。