episode48 最後の晩餐
帰りは銀座から地下鉄に乗り、自宅の最寄駅まではもう一駅あったけど、ふと気がつくと電車を降りていた。
「あ、もしもし?」
「なんやのん、どうしたん?」
母の声は、いつもと何も変わらなかった。
「いや、何もないねんけどな。あの、『仮面ラ
イダー』の仕事するって言うてたやんか。
あれ、なくなってんやんか」
「そうなん? なんやのん、急にそんなんなく
なったりすんの?」
「そら、なくなる時は一瞬やで。そういう世界
やから」
心の中で「どういう世界だよ」とツッコみながら、母にはそう伝えた。
「じゃあ、またなんか大きい仕事取れるように
頑張らなあかんな」
「そうやな。まぁ、気合い入れて頑張るわ。
心配かけてごめんな、いつも」
「身体が資本やで。タバコもええ加減やめとき
や」
「わかってる。じゃあね」
電話を切った時、やっと本当の意味で感情のわだかまりが消化されたような気がした。落ち込んでいても仕方がない。前を向くしかないんだ。
とぼとぼと家に向かって歩いている僕の元に、今度は電話がかかって来た。
いま一度、人生を振り返りました。こんなどうしようもないやつでも、俳優になり、そして仮面ライダーになることができたという道のりをありのまま書き記しています。 50日で完結するハッピーエンドです。 ぜひ最後まで読んでください✨