岡山にはヨーロッパ由来のお化けの伝承がある
キウモウ狸という名前だ。ジブリアニメを持ち出すまでもなく我が国では、動物の狸とお化けの違いは曖昧なので、お化けと言っても問題ない気がする。
三浦秀宥著「岡山の民間信仰」によるとこの狸は戦国時代に南蛮船でキリスト教の宣教師とともに来日し、各地を遍歴した後、なぜか吉備国に定住したという。江戸時代の書肆「御津郡史」に証言かある。
今風に言うと外来種になるのだろうが、不思議で仕方ないのは外国に狸はいないこと。日本の固有種なのだ。
伝説と歴史のあわいに想像逞しくするとこの狸は動物でも化け物でもなく人間だったのではないかという気がしてならない。伴天連やキリシタンとは区別されて伝えられているところを見ると例えばヨーロッパ人ではなかったとか?宣教師がインドのゴアや遠くアフリカから連れてきた現地の人?織田信長の家臣のアフリカ人の例もありますし。もしくは時代的に改宗したユダヤ人?
異国の文化や言葉、技術で日本人とコミュニケーションを図ろうとしたのが、化かす狸のように誤解されたとか?
謎は深まるばかりだが総社や吉備中央にはキウモウ狸ゆかりの魔法宮や魔法神社まで現存する。ファンタジー映画にでも出てきそうな名称だが魔法と言ってもいわゆるマジックとは無関係。摩利支天の法(のり)という意味らしい。
なぜ南蛮船の狸と摩利支天が結びつくのかわからないが、少なくとも総社から吉備中央にかけての海から離れた地域にもキリスト教の間接的影響があったとまでは言えるのでは。
岡山にはこの狸の息子の伝承まで残るが、キリスト教では死者を信仰の対象とすることはしない。とは言うものの長崎にはキリシタン神社まであるらしい。福音の日本受容の変容という大きなテーマについて色々考える。
キウモウ狸。あなたは何者だったのですか?