バルタン星人のルーツ
初代ウルトラマンに登場したバルタン星人。この宇宙人のネーミングについては二つの説が拮抗しています。バルカン半島由来説と歌手のシルビーヴァルタン由来説。どちらも根強いのですが、シルビーヴァルタン説について検討してみます。
この歌手は先祖がアルメニア系。実際、アルメニアにはヴァルタン姓の方が結構おられます。歴史を振り返るとオスマントルコ時代に領土内で起こったアルメニア人大虐殺の悲劇は有名。サバイバーたちは難民になってヨーロッパ各地やアメリカに移民になります。かの歌手の先祖もそういうサバイバーのひとりだったのでしょう。ソ連崩壊後、アルメニアが国家としての独立を果たしたのは1990年代に入ってから。
そういえばウルトラマンでもバルタン星人は母星の荒廃で故郷に住めなくなって地球への移住を考えていました。
アルメニアの主な宗教はアルメニア使徒教会。特にトルコ国境のアララト山は聖なる山としての象徴性を帯びて、国章にも描かれるほど。総本山でもあるエチアミンの大聖堂と教会群にはノアの方舟の断片とされるものが安置されています。こういうものは学問的に旧約学的にどうのこうのと突っ込むのは野暮な気もする。いずれにせよ、バルタン星人とノアの方舟は関係あることがわかります。
アメリカに渡った移民の中にもアルメニア系の方はおられました。マンハッタンにはアルモニア系のそのものずばりの聖ヴァルタンアルメニア大教会が建てられています。アルメニア系の音楽家ホヴァネスの作品にも交響曲第九番「聖ヴァルタン」があって興味深いです。
よく漢字の誤変換で「バルタン聖人」と打ち間違われることもありますが、こういう背景を知るとあながち間違っていないのかも。それにしてもウルトラマンのエピソードでは宇宙からの難民バルタン星人をウルトラマンが追い払ってしまうわけだから、複雑な気持ちにさせられる。