見直し用
雨漏りの比喩
子どものころ、幾羽もの鳥の体液を吸った樫の木の下に、郵便受けを設えて恋人ができると思った。
はじめて電車の乗ったとき、
誰かの影絵の一部に思えたように。
それは新しい句点。あるいは水田。わたしにはまだ知らない妹が、首の後ろの方にいつもいて彼女の、尿意の受け止め方がわからないでいる。
海猫が次の季節に向かって遺骨の匂いを撒き散らしている。わたしたちはこの地図のあいまいな所で、、句読点をうつ無意識にふれる。学校で天然痘を教わった日だったと思う。
読書のために、風に名前をつけると、神経がめぐった。口笛に伝染病の恐怖をのせながら、、
指先にできた切り傷に、川魚のための午後があたたかかった。道路に絵を描けたあの石。
結局わからないでいるこの世界の植物の声。被害者という単語を使いたくなる悪意。不意に羊のにおいが漂ってくるこの郷のことばで、
乱筆な、秋の髪の毛を思いだして。手を握ってきた少女は、童話の温みだった。文語の表現がまだ、その眼差しには入っていない。芽キャベツをまるごとたべてしまう小動物のいたずらの時間。水を描いてみたい。
記憶にしかない捕鯨の絵。
と言って疑問符のかわりに自分の指紋をつけている。
文月。 吐く息。 羊歯植物はなぜ 深海魚の沈黙を知っているのか。
はじめて目にする汽車は、遠く深い河から溢れでるのかもしれない。
はじめて目にする青菜の、調理の時間を、つよく握りしめている。
とても、砂糖菓子の、舌にのせる為だけのような、
わたしは、真実の文庫本が、風のよわさで、捲られるのを見たことがある。
森林に置き去りにされた食糧のことについて。羊歯植物は、他人の死に無関心だった。
置き手紙のように夏野菜。色のついた、風の種類。イニシャルを隠す指。細やかな偏頭痛にはひらがなの口調が心地よい。血圧の低さ。新聞を床にひろげて読むときの、足指の爪を覚えてる。明日の舗道の温み。無風にもある種類。
森林は、迷う祖母の不安だった。風には他人が混じっているから、わたしの一片の断片も、誰かの手のひらをくすぐるかもしれなかった。疑うということが、とても高い木の果実であるかのように、
かつて観た小さな映画はどこからが私であるのか。映写機から放たれる鈍いひかりに反射するほこりの数を数えられる。汽水魚の鱗の照り返しよりも、それはとても白いブラウスをきた人が湖面を見渡すように漂っている。寝息。
夢のなかの誕生日みたいに、初恋の人を下の名前で呼んでみる。
その木々が鬱蒼として、あらゆる
しまわれている冬が、
神様のことを思うと、冬の少女との距離が一瞬、恋人かもしれない。
太陽の欠片と見事な距離をとり、
それでいて朧気な夕陽を浴び、。
見ず知らずの霊性を、乱視に、取り込み、少しずつ、頭文字だけの存在になっていく。
純血を、こぼす。
母親が、声をあげた。子どもの、便の軟らかさが、元にもどった。薬箱は、まだ夜の味方で、黙秘権を、使い続けている。
舌ったらずの歩行で、神さまがサ行を運んでいく。遠くの森林が夜を、吐き出すのを、諦めきれない雨の朝。発音記号に、石鹸をつけて、揉むように洗う。
付け合わせの、野菜を残す日々が、訪れるだろう。
いくつもの霊性を、通り越して、白鷺の姿にちかい。明確な、感情だから、片仮名で書く子音。
畦で、お互いの、膀胱について、喋った。朝の水田は、不安が、かたまらないように、軟い悪意を、産んでいる。とても幼い頃、神は、ただ折り紙だった。所有格を、探している水たまりを、避けようとするほど、近づいてしまう。散文詩の文脈に、縛られて、利尿作用を、手のひらに、見失った。
人々ような人が、たたずみ、いずれ 無人駅になる、と言った 漂泊しながら、移動する声 点検のための、人差し指がまだ生えず
蹄の、音がまだ白く積もりながら 駅員の痰には、微かな色がつく 完成した声で、案内が始まると やけに耳垢が、軽い
精神は植物的になり、 それが何色か考えているうちに、
ように会話していたと思う。記憶にある縁日の佇まい。
水田には、男の人の時間は流れておらず、ただ水鳥の産卵を受け入れようとしていた。
好きな歌詞を思い出そうとする顔をして、主格が自然と恋人にいれかわると、新たな連用形の活用がうまれている。
最後の抵抗のための空気が、腐葉土に含まれているだろうか。
利き手のほうの静脈の膨らみかたを見ていた。
こども椅子に並んで腰掛けると、葱の食感が昨日から丸かった。
植物記を記さなければならない。
惑星の裏側で、羽のあるものの化石が産まれている。
この風は、長女だった。肌を訪れて、言葉遊びのいたずらをする。毒のようにやわらかい。田植えのための言葉を、瞬間現れ出る光は、どう痛むだろうか。窓の外側についた指紋が自分のものか木のものか
吐息が固くなっていた。
きっと今も、鍾乳洞が小さな惑星を滴らせ続ける。
印刷にまわす前の活字あつめ。初恋の人の割礼。話言葉の抑揚のなかにだけ、
いつか海鳥の脚が痛みに似ているから包帯を巻いてあげる。規則のように誰かの体液を求めること。他人の温度のなかに、自分を溶かし、空洞の中で、鳥の排泄をゆるせるだろうか。
通りすぎる鼻歌が、曲の終わりまでいつもたどりつかない。重複する表現をおそれないで降りだす雨。ほつれたボタンを簡単にしつらえることのできないもどかしさ
あやまりたい気持ちが、野鳥の気配にいれかわる。きっと悪意や、美しさも点描する絵筆の、一瞬でしかない。夕方の、同じ話。雨漏りする家のことを実はもう、ゆるしている。重力に逆らわないようにやさしく、人の過去を生きてくれた。
恋人が愛して、水溜まりでは自分だけが濡れればいいと思っていた。
用水路をながれる過去形の水に、幼い頃の母に愛された蝶の亜種が群がっている。
魚のおいしいところから来たのですね。
そんな風の日の、港のにおい。
耳をすましなさい、といわれる。どの朝にも、期待をこめなければならないなんて。
折り紙をおるときの、少女の爪の押しつけるやり方。
不用意な尊敬語の、使い方でわかる。だいぶおくれて、去来した文字が、そのまま口からこぼれでていた。
かぎられた二人称代名詞の、美しい色。かつて未来は、数えきれない水滴から反射する、光の氾濫だった。
川面にうつる空が、はみ出しながら膨らんでいった。
あたたかい絵本になる前の美しさで、
静かな草むらに、心象の囚人が腰掛けている。遠くにある森林が広がり迫ってみえた。その木々が近くまで来ると私も、政治犯にされそうだった。食卓の果物だけは隠しておきなさい、と子どもに指示をだす。耳元の虫の羽音。そんな突然を望み、
正しい恋愛のことを、短く書いた小説。
そして、水溜まりにはったとき
少女の後悔から、推理小説がはじまり、
水溜まりに無意識に濡れて、嫉妬をほどいてゆく時間がおとずれる。恋人のうつむいた首筋から、次の悪意が想像できた。母は、味わったことのない暴力にも思いをめぐらせた。
そんな偶数のような鱗のない魚を想像出来ない
兄は俯いて歩く、鱗のない魚だった。
鍵をしめることがあった。そして旧い仮名遣いで描く美しい鹿であり続けた。
漢字練習帳に、日蝕、と無数に綴っていた。
新しい街の公民館ではじめて見た打楽器。
あなたの空洞だけを描きたい。
これから些細な理由で、謝罪しに行かなければならないなんて。
パレットの水色の絵の具のところだけ乾いている。急な通り雨。午前の郵便振込の用紙に、私は存在する、と書いてみる。
靴下を片方だけなくして、前置詞まで省く話し方。
硬筆で書く弦楽器の音色しか知らなくて、
植物が、神様に逆らう瞬間を見たことがある。でもそうやってだけ、乾いた土の矛盾にも、歌を歌える。
幽霊。赤ちゃんのときの泣き顔の欠片を、まだ顔にのこしながら三日ごと、羊歯植物が、地下に茎をはっていること。私たちが、この葉形を見て抱くざわめきは、自覚のない悪意はらむ噂に似ている。
推量の助動詞。
眼球を、古井戸に置いてきたのは意図したのか。
イ短調の鼻歌で、型どる過去。写生大会で私は、絵をかく人たちの、絵を描いたという。水彩を重ねていくごとに、細やかな約束を一つずつ殺していく
そして植物に濃い樹液を巡らす微かな音が、病床をかけ抜けていって初夏。あらゆる父親の声が、まるで記念切手のよう
口笛を吹く姿の挿し絵を依頼する文言を書いていたはずなのに、
隕石に降りたって、歌を歌う人は裸足を火傷していた。衛星放送で、水底を跳ねる海老をみていたとき、誰だって被写体になると、魂が光ることがわかって、きっと些細な排尿も美しい。初恋の女の子の腕はまだ曖昧な弾力で、湧き水の途中だから、掬おうとすると、覚えたての明朝体の嘘が手のひらから、こぼれそうだった。
色鉛筆にしかない色で、河川を染めていく。隠喩に、直に触れた一方的な手紙の言葉には、浮力がないから、人工的な噴水の涼やかさのようでもあるし、私は散文しかしたためられない。風に含まれる他人の微かな霊魂の、その弾力に触れると花の途中になっていく気がして、一層早く、夕暮れが自転していく。
別の子どもの話を待つようにして支えられている骨格。
忘れるという行為は、打楽器の音のようで、爽快で不安な温度。
植物が不意に、エッセイとともに訪ねてきたとき、
どちらの性器も持たない空気が膨らんだ。
海を着た人が、香水の語源を探して、惑星に不安を感じていた。
多くのまばたきを必要とする果実に、
私は惑星の性別を考えて、弦楽器に触れることがある。
鹿の群れが、とても豊かに見えた。
それは少し愚かに、子どもらしい。
挨拶の声が、果物の存在よりも少し大きく、果樹園に溶けていった。
摘果されて悪意ある大きさに果実が育つ
意識を透き通っていくが、早生まれの見誤らせる。風雨とともに届いた封書。そこには。
縁側が今もそんなふうにそこにあり、肉親の体液によるシミが贈り物として身近な興奮だった。
恋人の痣の分だけ、恋人を借りたい。
果実が、果物ナイフを扱う手付きにみとれると束の間、腐乱から解放されるように思うらしい。
そして美しい腕時計を身につけ始める。離れて暮らす姪のように。
姪の口調から都市の訛りを感じて、私は語尾を気にするようになる。
架空の靴紐を結ぶ手付きと、関係ない道を選んで歩く。
雨漏りから始まる物語を読みはじめて、そっともらした吐息に宛先はなかった。重力に静かに、逆らいたくなるような語尾の抑揚を引き連れて、新しい比喩が生まれそうな予感が、収穫を終えた農村を颯爽と通り抜ける。洗濯物が乾きすぎる音が聞こえる。
縺れる、と漢字に変換されて、はじめてその字の存在を知り、草の擦れる音が、青年の奏でるリフに聞こえた。お葬式のやり方を決める物語。まず、ひらがなの風がそよぐ寝台に横たえ、照れ笑いの重力を感じさせる。
少女は首の角度で、誰かのことを思って歩く。坂道に差し掛かるとその傾斜も加わり、水平とかけはなれた傾けかたで、鳥を見上げる羽目になり、すると日中まだ見えない星を、靴の中に閉じ込めたくなる。隣家の窓は、神経質だった。そこから見る月は、手の静脈のように浮かび上がっているに違いなかった
寝台に横たえたとき、私達も重力を心地いいと感じることがあるのでしょうか停留所で待っている感動に出会うときまって、歩いていくからいい、言うので時間をずらさなければならない。
、という母親のよろこぶ声が聞こえる。
の甘える方。
カーディガンは
そのなかでは鳥の死骸が、美しい直線の連続だった。を、引き連れている女の人が好き。どうか未完成の脚本を、終わらせないでほしい。わたしが句読点をうつリズムで逃げてあげるから、川魚、虹鱒、ヤマメ、岩魚、鮎、渓流、泣く。溢したように。シャツ。冷気。霊魂。贋札。土曜日。他の惑星。病弱。犯罪。隠れている。
モノクロームで偏西風を、どう描けばいいのかわからないでいる。小さな耳をした彼の、青い痣を撫でる。
この清流の淡水魚は、夏の息で言い訳している。
野生の目がわたしを窺う。その眼差しは、わたしがもつ
なかにはなかった。
新しい彗星に、互いに知らない二人の名前がついた物語も、嘘じゃないと思える。
互いの距離が、アルカリ性に変わっていく。牛の腹のなかは、長編小説の途中だった。いくつもの夜の海岸が横たわっている物語に、二つ目の太陽が余白に、描かれはじめる。異性に求めるページのめくりかた。