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いわさきちひろさんの願い
住友 8月8日は、いわさきちひろさんの命日だよ。
三井 いわさきちひろさんというと、絵本画家として活躍した人だね。
住友 今年はちょうど没後50周年に当たる年だ。
三井 もうそんなに年月が経つんだね。改めてご冥福をお祈りしたいね。
住友 数々の素晴らしい絵本を世に送り出した偉大な画家だ。
三井 そうだね。幼い子どもの描き方と独特の色調の水彩画は彼女の大きな魅力だよね。
住友 彼女が高く評価されているのは、それだけじゃないよ。
三井 他にもあるの?
住友 世界の子どもたちが幸せに平和に生きることを心から望んでいたことだ。
三井 それは素晴らしいことだね。
住友 そうした願いを込めて、彼女が亡くなる前年に出版した絵本が「戦火のなかの子どもたち」という作品だ。
三井 亡くなる前年というと1973年のことだね。
住友 彼女にとって、生前の最後の作品になってしまったけど、彼女の最高傑作だとぼくは思う。
三井 どんな絵本なの?
住友 戦争で傷つき、家族を奪われたベトナムの子どもたちの姿を描いている。
三井 そういえば、当時はまだベトナム戦争が続いていた時代だね。
住友 ベトナムの子どもたちの悲しみと苦しみを、自身の戦争体験と重ね合わせて訴えかけてくる作品なんだ。
三井 そういう絵本は、ぜひ多くの人に読んでほしいね。
住友 結局、彼女はベトナム戦争の終結を知ることなく、この世を去ってしまった。
三井 パリ和平協定は、1975年だったからね。
住友 終戦は彼女が亡くなった翌年のことだ
三井 それじゃあ、天国で終戦を知って喜んだかもしれないね。
住友 いいや、ぼくはそう思わない。
三井 なぜ?
住友 たとえ戦争が終わったとしても、子どもたちの傷ついた心と体は、そう簡単に癒せるものではない。悲しみと苦しみは終戦後もずっと続いていくんだ。
三井 そうだね。
住友 ベトナムはたしかに今では平和な国になったけど、世界の至るところでは今も戦争が続いている。ベトナム戦争当時の子どもたちと同じような境遇の子どもたちが世界中にたくさんいるんだ。
三井 ぼくたちはどうすればいいのかな?
住友 まず、戦争の悲惨さを知ること、そしてそれを伝えていくことが重要だと思う。
三井 そういう意味では、いわさきちひろさんの「戦火のなかの子どもたち」を読んでもらうのも、その一つだね。
住友 ぜひ受験生にも読んでほしい。
三井 受験勉強が忙しいかもしれないけどね。
住友 しっかり勉強もしてほしい。
三井 受験生の皆さん、頑張って下さい。
住友 頑張って下さい。