satoshi自伝第二話「音の再生と新たな出発」
第二話「音の再生と新たな出発」
苦難の日々
解散から数年が経った。2016年の解散ライブで途絶えた音楽の鼓動は、もう二度と戻らないだろうと思っていた。
LapLusという新たなプロジェクトで音楽活動を再開した私は、そこでも苦難の日々を経験した。ライブの動員は少なく、活動資金を確保するために私物を売ることもあった。それでも、私が作った楽曲「story」は、どれだけ苦しい状況でも音楽が人を救う力を持っていると信じさせてくれた。
再結成のきっかけ
時が経ち、DIVのデビュー10周年が近づいてきた。ある日、ギタリストの将吾と飲んでいるとき、ふと再結成の話題が出た。
「もうすぐDIVの始動から10年になるから、もう一度やるのはどう?」
その一言は、彼が今でもDIVへの思いを抱いていることを示していた。
すでに彼は「ACME」での活動を行っており、新たにDIVを再結成するのは簡単な決断ではない。それでも彼の表情には迷いがなかった。
「正直、大変だけど…またやれるなら面白いよね。」
その言葉に、私も自然とうなずいていた。
再結成の準備
再結成ライブ開催に向けたミーティングはオンラインで行われた。久しぶりに顔を合わせたが、その場の空気は驚くほど自然だった。まるで昨日も一緒にいたかのような感覚があった。
そして2023年の春、私の自宅スタジオに集まり、解散以来初めて音を重ねた。最初に合わせたのは「LOVE IS DEAD」。ドラムのサウンドチェックをしていると、ギターとベースが自然に入り、あっという間にアンサンブルが生まれた。
「なんだか、先週ライブをしたみたいに自然やね。」
将吾が笑いながらそう言った。
ベースのちょびも「このメンバーで演奏すると音の厚みが全然違うよ。」と感心していた。その場にいたPAスタッフの吉原勝氏が、「サウンドチェックで感動するなんて、こっちが申し訳ないですよ」と冗談を言い、全員で笑った。
再結成ライブ本番
そして迎えた再結成ライブの日。セットリストには過去の楽曲が並び、懐かしさを感じさせるもので溢れていた。
「このステージに立つのは何年ぶりだろうね」とCHISAが感慨深げに呟いた。リハーサルで感じた「過去を手離し、未来に進む」感覚は、ライブ本番でも同じだった。
観客席は満員だった。会場中に響き渡る拍手と声援。解散前の緊張感や断絶した空気は、今はもうなかった。ただ、ステージ上で音楽を共有する喜びがそこにはあった。楽曲の持つパワーやメッセージは色褪せることなく、むしろ時間を経てさらに洗練されていた。
新曲制作への意欲
ライブ終了後、楽屋でCHISAが「次は…新曲かな。」と呟いた。その瞬間、楽屋の空気が変わった。
「Never Divided Just Dive」の制作はその一言から始まった。再結成ライブで過去の楽曲を演奏するのは、一つのゴールであり、新しいスタートでもあった。しかし、新しい楽曲を作るというのは、さらに大きな挑戦だった。
「簡単じゃないよ。でも、やる価値はあると思う。」
私がそう言うと、ちょびが笑顔で「楽しそうだね!」と答えた。
将吾も力強く言った。「いいんやない。今の俺たちが作る音を聴いてみたいしね!」
その一方で、CHISAは真剣な表情で言葉を続けた。
「再結成ライブは懐かしい想いを共有する場だった。でも新曲は…俺たちがこれからも進んでいくための証明になる。」
その言葉に、私たち全員が深く頷いた。
音楽の力
楽屋の空気は、新たな可能性への期待で満たされていた。ファンからも新曲への期待がSNSを通じて寄せられていた。
「次はどんな景色を見せてくれるんだろう?」という期待に応えたいという気持ちが、私たち全員を突き動かしていた。
音楽が、過去を繋ぎ、未来への道を切り開く力を持っている。そのことを、私たちは再び実感していた。そして、この先に待つ未来がどれほど険しい道であろうと、もう二度と手放すことはないと、心に誓った。