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仄暗い想像
寒気に襲われて目が覚めてしまった。
日の出ているうちは暑いくらいであったが、夜も更けた今、湿り気を帯びた空気は外套に包まってなお寒いほどだ。小さく熾火になった火床をかきまわして火種を見つけ、用意していた薪をくべる。ふと近くの茂みが目についた。何の変哲もない倒木が妙に気にかかる。目を凝らしていると虚に動くものがある。さては住処にしている小動物でもいるのだろう。罠を仕掛ればうまくすると朝にはかかるかもしれない。味気ない携行食ばかりの生活に彩りを添えてくれるかもしれない。
立ち上がりかけたが何ががおかしい。水音がするのだ。近くに水場はない。ないはずだ。おかげで残り少ない水袋から食事を用立てねばならなかったのだから。一際大きなびちゃり、という音とともに虚から出てきたそれは奇怪な軟体だった。月光を反射しぬらぬらと蠢いている。身じろぎもできずじっと見据えていると倒木は巨大な爪をもつ脚を生やして歩き出した。
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こちらへ近づいてくる!早く逃げなくてはと思うが恐怖に身がすくんでしまい体が動かない。汗が顎をつたう。知らず息が浅くなる。限界まで見開いた視線の先でがさりがさりと歩み寄ってくる奇怪なもの。
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覚束ない足取りでこちらへと歩み寄るそれはしかしそのまま通り過ぎていく。
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何処かへと歩み去る倒木が見えなくなると、こわばった体を引きずりながら急いでキャンプをたたみ、真夜中の出立をするのだった。