Satoshi Cozima
記録用
人の生まれ出よりはるかな昔。茫洋たる地にはどこまでも続く水平の草原と海原に一個の生き物がいた。それを生き物と言って良いのか…それは男であり女であり人であり動物でもあり悪魔でもあった。風になぶられる髪と体毛は風そのものを具象化したような青。均整の取れた相貌に輝く黄金の瞳。下肢には二対の蹄を持つ獣の足。何者でもなく何者でもある完全者。あるいはそれを神と呼ぶのかもしれない。 何が切掛であったのかはわからない。始まりは白い背中に広がる黒ずみだった。時を追うごとに侵食は広がり苦痛が強ま
寒気に襲われて目が覚めてしまった。 日の出ているうちは暑いくらいであったが、夜も更けた今、湿り気を帯びた空気は外套に包まってなお寒いほどだ。小さく熾火になった火床をかきまわして火種を見つけ、用意していた薪をくべる。ふと近くの茂みが目についた。何の変哲もない倒木が妙に気にかかる。目を凝らしていると虚に動くものがある。さては住処にしている小動物でもいるのだろう。罠を仕掛ればうまくすると朝にはかかるかもしれない。味気ない携行食ばかりの生活に彩りを添えてくれるかもしれない。 立ち上が