旅立ち 6 Satoshi Cozima 2018年12月1日 01:12 さくり、さくりと一人の若者が歩いている。 里ではまだ深かった雪ももうまばらになっている。 高く澄み渡る空を鳥が一羽。前方の森に向けて飛んでいる ふ、と立ち止まる。 ここまで背負い歩いた荷物を下ろし、剣を抜く。 ”親父殿が、里堺の番か。どうしても、なのか?外を見て歩くことが!それほど、それほどのことなのか!” ”なぜあと少し修練を収め終えるを待てぬのだ。一つ事を収めることもできぬ者がどうして多数を手に入れられようか” ”そうして時を過ごすことが俺には耐えられんのだ!” ”……行け” ”どこへなりと行ってしまえばいい!” ”……” 再び荷物を手に取り、彼はゆく。 鳥がまた一羽、空を飛んでゆく。 6 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート