ロジャーズの「伝え返し」

「伝え返し」が「ただ相手の言葉を繰り返すだけのオウム返し」と誤解されていることを気にかけ、その誤解を正すためにロジャーズが亡くなる前年に書いた重要な文章(論文の一部)です。

「セラピストとしての私の見解を言えば、私は<感情を伝え返そう>とはしていません。クライアントの内的世界についての私の理解が正しいかどうかを確かめようとしているのです。クライアントがそれを今体験している通りに私がそれを見ているか、確かめようとしているのです。私の応答には、つぎのような無言の問いが含まれています。
<あなたの中でそれはこんなふうになっていますか>
<私は、あなたが今体験している個人的な意味の色合いとか肌合いとか味わいを、ちゃんとキャッチできていますか>
<もしそうできていなかったら、私は自分の知覚をあなたのそれに一致させたいのです。>
その一方、クライアントの側から見れば、私たちはクライアントが現在体験しつつあることの鏡を提供しているわけです。その鏡に映し出され、別の人の目を通して見られた感情や個人的意味は、よりシャープになっていくようです。
だから私は、<感情の伝え返し>ではなく、<理解の確かめ(Testing Understandings)>とか、<うけとりのチェック(Checking Perception)>という言葉を使うことを提案します。こういった言葉のほうが、より正確であると思えるからです。

セラピストのトレーニングにも有益です。<伝え返そう>とするのに比べると、相手の内的世界についての自分の理解や受け取りを確かめようとすることのほうが、応答したり質問したりする際の健全な動機となるようにも思います」(C・ロジャーズ,1986)

ロジャーズは、一般に「伝え返し」と呼ばれている技法の意図は、目の前にいるクライアントの姿をそのまま鏡に写すように「事実を通知」することであり、そのクライアントがどんな人に見えるか、自分の理解や受け取りを確かめていくことである、という見解を表明しています。

いいなと思ったら応援しよう!