作務について
作務衣(さむえ)という和服。知っているかたも多いと思います。坊さんがお寺の境内(けいだい)を掃除しているときに着ているやつです。つまり、お坊さんの作業着です。ところで、作務衣は作務をおこなう衣服という意味なのですが、この、作務ってなんでしょう。
作務とは
作務とは禅宗のお坊さんが、日常行う家事や雑用のことをいいます。(ここでいう禅宗というのは、座禅を行う仏教宗派全般をさします)座禅だけではなく、こうした作業も大切な修行といわれています。余談ですが、一心に掃除をして悟りを開いたという、仏陀の弟子のエピソードも有名です。
家事が好き
自分は一人暮らしを長くしていましたが、家事は嫌いではありません。掃除をして洗濯を干して、食事を作って過ごす休日はとても良いものです。そんなことをいうと専業主婦・主夫のかたに嫌われそうですけど(笑)
家事が好きな理由は、没頭できるからです。やろうと決めたら、自然と段取りをして黙々と家事をこなしていきます。おそらく習慣になっているのでしょう。家事をこなしていると雑念が消え、気持ちが落ち着いていきます。最近、瞑想だとか原始仏教をかじるようになって、「作務」とはこのことかなあと思うようになりました。
雑念混じりの作業
やりたくない仕事や作業は進捗が悪く、時間も長く感じられるものです。心のなかでは「めんどうだなぁ」とか「早く片付かないかなぁ」などと考えていたりします。いわゆる、没頭・集中できていない状況です。そんな時はミスをしてしまったり、イライラしてしたりすることも多いのではないでしょうか。とうぜん感情も穏やかではいられません。
今この瞬間に没頭する=作務
「作務」は本来「修行僧の家事・雑用」という意味です。これを広く解釈すると「作業に没頭すること」と言い換えられると考えています。
没頭するためのヒント
気の進まない作業や、面倒な仕事を任された時、頭の中は雑念だらけです。不満に始まり、上司の今朝の態度やら昨日の出来事など、過去の記憶までいつのまにか持ち出していたり。
そんな自分に気がついたら、作業の手を止めてみます。自分が集中するべきは眼の前の作業であって、不満や記憶ではありません。静かに自分に言い聞かせます。深呼吸してもよいでしょう。今まで自分はどうしていたか、今からどうするべきかを、はっきりと意識することです。五感に集中するのも1つの方法です。目から入ってくる情報、体の各部の筋肉の動き、指先の触覚などに気持ちを凝らします。思考ではなく感覚に意識をフォーカスしてみるという方法です。
集中力
好きなこと・やりたいことには、集中力を発揮できるものです。しかし、気の進まない仕事や作業となれば、没頭するのは難しくなります。夢中になれることばかりだといいのですが、人生なかなかそんな風にはいきません。まずは、日常の家事や雑用などを無心にやってみて、没頭してる状態を「これか」と体験してみると良いかもしれません。「雑念をなくそう」とするより、「雑念が無い状態」というのをきちんと意識できるようになることが、没頭への近道だと思うからです。