さとり
さとりの短編集
さとりの迷言集。あなたの心に響くと嬉しいです。
140字以内では収まりきれないほどの文章を延々と書いただけのさとり日記。ちょっと覗いていってもいいよ。
「見てください、ペンギンが空を飛んでいます!」 東の都にある水族館が「天空のオアシス」というコンセプトでリニューアルオープンするニュースが流れていた。 「都会の空を、ペンギンが飛びます!」 青い液体は少し透き通っていてその向こうに空にも届きそうな建物が並んでいる。青い液体、青い天井、白いわたあめ、灰色の高過ぎる無機物。そして、たくさんの可愛らしい飛べないはずのペンギンが飛んでいる。 ペンギンは東の都で飛ぶことができて、どうしてわたしは飛ぶことができないんだろうか。 わ
針が2時を指した真夜中に 僕は誰かを刺してみたいのです 好きって何?恋って何? 刺してみたくなるほどの 愛って何? 湧かない溢れない 乾いた心境の中で 少しずつ広がるは 虚無とかそんなの 躍動的な奴らは生き生き息して 愛情を生むのに 心が見えない僕らは望み好んで 孤独を求めるんだな 自分が消えてもどうでもよくて それでも周りは幸せであってと 泣いて泣いて乾いたこの心が 「寂しい」で表せていいものか 僕が僕であるがために たくさんの人を刺してきたのです 君は君であるが
諦めようとしたのはぼくなのに こんなにも息ができなくなるんだね 君の後ろ姿しか知らなかったけど それで、もういいかな 春だからとかで靴を買った 前の靴は思い出を括りつけて 捨ててしまおうか そうやって一つ一つ君の存在を 消してくんだ 恋を悩んで悩んで雲を掴む 触れたことすらないよ君のことなんて こっち見てよ背を向けないで 君の視野にぼくはもういない? 君の仕草に君の笑顔に君の全てに こんなにもぼくは苦しくなるんだね 勝手に一歩下がって勝手にばいばい それで、もういいよね
宣誓 我々終活を始める一同は 正々堂々と真実の愛を探すことを ここに誓いますここに誓いました 愛の全部が僕は欲しい つまらないものなど見たくない 空っぽの器を満たす旅 いつも探してるどこかにあるはずの愛を 人混み商店街を横切る野良猫とか いつも見つからないどこにも落ちてない愛が 満員電車を前に狼狽る老婆とか 満たされてる君は「寂しいね」と 満たされない僕は「哀しいね」と 誇大妄想も甚だしいな 君はもう終活を終えてるのだから 先生 不透明な箱庭の閉塞の中 教科書全てが真
拝啓 恋に敗れた人へ捧ぐ 幕を下ろすための文章さ 始まりはあんなに情熱的だったのに 終わりはこんなにも静かなものですね 君を常に近くで感じていたいから 一番上に固定された君のトーク画面 そのピンを外して下に流したのは 決戦に破れた次の日の土曜日でした もうこんなに好きだったのに 結局は舞台の上でただ一人 踊っていただけでした 咽び泣いて繰り返してまた泣いて 面向かって「好き」と伝えられた あの夜の私の勇気よ、成仏せよ そのための供養に涙を流すよ もうこんなに好きだっ
こちらは猫にドライヤーの代わりに温めることはできません。 幼児の手の届くところに置かないでください。 こちらは食べられません。 全て個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。 俺は保険会社に勤めている。 保険とは一般的に、多数の者が保険料を出し合い、保険事故が発生したときには、生じた損害を埋め合わせるため、保険金を給付する制度を指しているが俺が勤めている保険会社はかなり違う部分を保険している。 それは「表現の保険」 この世は悲しいことにありえない思考
そして、僕は手のひらサイズの小さな瓶をゴミ箱に捨てた。 人間は食が必要なのです。栄養を摂るためにも、娯楽のためにも、生きていくためにも、食が必要なのです。 しかしそれは本当に必要ですか? 栄養は点滴で事足りますよね? 娯楽は別のものでもいいじゃないですか? 栄養さえ取れば充分生き生き息できます。 すなわち、人間の身体における大きな欠点が食をしなければならないこととも言えるのです。 なぜなら材料を買い揃えて切り揃えて焼き揃えて皿に盛り揃えてテーブルに並べ揃えていただきますをし
2月末にツイートしたこちらについて少し細かくnoteにも書いてみる。 Twitterという狭い文字数の世界でこちらの話をするには手狭ですので。 最初に前置きしておきます。 これから書くことは全て「わたし」が今まで様々な聴者と関わってきて感じたことです。個人的見解であり、何かを代表するものではありません。よろしくお願いします。 耳が聞こえないわたしが、今まで関わってきた聴者はだいたい4パターンに分類されているなあと感じています。 このように何かをカテゴライズして一括りする行
超天変地異みたいな狂騒にも慣れて こんな日常を平和と見間違う アニメの血界戦線のエンディング主題歌「シュガーソングとビターステップ」の歌い出し。非日常な日常をポップに彩るような歌になっているのだ。血界戦線がどんな物語なのか一度も触れたことがないので全然知りませんが。 この歌い出し、まさに今の私たちの状況ではありませんか。 顔の半分と外出の自由を奪われたあの日から私たちの生活は一変した。 あるものは嘆きあるものは喜び、この状況に打ちのめされるものも、この状況を逆に使い生き残る
最後の更新が2018年12月19日。 あれから780日と少しが経過した。 780日間という日数が経過しただけで、わたしと世界は大きく変わっていた。 780日前のわたしは科学の街でフリーターとして様々な事業を手伝っていた。 780日前の世界は顔の半分を隠さなくても咎められもしなかった。 780ものの日数が経過した。 780日経ったわたしは東の都でずっと前から作りたかった場所で仕事している。 780日経った世界は未知との戦いで人は顔の表現の半分を奪われている。 すこし、
「7ヶ月の蝉」 間違いだらけの世界から、 君は先に居なくなった。 「いい子だね」と言われ育った、 周りの褒め言葉から僕は生まれた。 何不自由無い暮らしと才能に恵まれ、 僕というものは退屈を覚えた。 雨宿り駄菓子屋、軒先の水溜まり。 自分を踏んで遊ぶ君に出会った。 そんな梅雨の季節。 紫陽花は咲き乱れ、牡丹色から若紫へ。 「涙は弱いアルカリ性なの知ってた?」 君は笑う。ただ笑う。見上げ空に浮かぶ雲。 夏の始まり。 「蝉はぼくにとてもよく似ているよ」 君は言った。 「ど
『君という駅は僕が望む終着点』 『設備されていない荒れた線路』 『発生した恋の遅延の影響により』 『君方面の僕の列車よ』 『遅れが出ています』
月曜日は男、水曜日は女だとしたら、どちらでもない人々はどの曜日に逃げればいいのだろうか? 逃げ場をなくしたわたしはただ毎週その文字を見ては違和感を抱くしかないのでしょうか? 一人でも多くお客様を呼びたいという気持ちから始めたかもしれない「月曜日はメンズデー」「水曜日はレディースデー」で大きな経済効果を収めた今、映画館のみならずあちこちで行われるようになった。 水曜日、レディースデーで女性はポイントが3倍になります!という旗の形をしたPOPを廊下に立てて人気の少ない光景を