「新テニスの王子様」のサマバレ2024のデュエット夢語 理想のペアとお祭り珍事
今年の8月14日、「新テニスの王子様」の丸井ブン太くんと木手永四郞くんの「ハッピーサマーバレンタイン」略して「サマバレ」のソロとデュエットが先行配信されましたね。今年の夏以降、キテブンにはたくさんのドキドキをいただきました!
今回は、サマバレのデュエットのジャケットに描かれている理想のペアことキテブンをイメージしたnote限定の夢語を考えて書いてみました。
キテブンのツーショットと周りの背景をじいっと見ながら、想像力を膨らませてみましたよ~。
それでは、どうぞ!タイトルは「理想のペアとお祭り珍事」です。
理想のペアとお祭り珍事
「キテレツ~、浴衣似合ってんじゃねえか」
「あなたこそ、様になっているのでは」
「様になっているって・・・・・・」
ある日のことでした。
丸井ブン太と木手永四郎は、U-17合宿所(アンダーセブンティーンがっしゅくじょ)のサーキットトレーニングコーチの柘植竜二の知り合いが屋台をやっているお祭りに参加していました。
なぜ、丸井と木手の二人だけの参加かと言うと、屋台の食べ物や食べ物以外出店の無料引換券のチラシが二枚すなわち二人分しかなかったからです。
そのため、誰と誰がお祭りに参加をするか、合宿所参加者メンバーでお祭りに行きたい人だけでくじ引き大会が合宿所内で厳かに行われました。結果、丸井と木手の理想のペアがお祭りに行けることになります。
「外出届を出したときに、柘植コーチの言ってたことを覚えてるか?」
丸井が隣を歩いていた木手に聞きました。
「行って来い。以上だ! でしたね」
と、柘植コーチの口調を真似ていた木手です。
「どこかの屋台に柘植コーチの知り合いがいるんだよな。どの屋台をやっているか聞けば良かったよな」
「回っているうちに分かるんじゃないですか」
「にしても、良い浴衣を借りられたよな」
「浴衣のレンタル店がちょうどあって、私服も預かっていただけるサービスがまた良いですよね」
「それに、扇子までタダで貸してくれたよな。無料引換券が早速役に立ったな。これがなかったら、いくら取られてたか」
「そうですねぇ。では丸井くん、時間と待ち合わせ場所を決めて、決めた時間までにそれぞれ好きな屋台を回りましょうか」
と、木手が言うと、丸井は困り顔になります。
「一人で屋台回るとか寂しいこと言うなよぃ、キテレツゥ~。一緒に回ろうぜ」
「一人の方が自由に好きな屋台を回り放題ですよぉ」
「無料引換券、二枚とも同じなんだから、どのみち好きな屋台回れるだろい」
丸井はふっと笑い、無料引換券のチラシをぴらぴらさせていました。
「それもそうですかねぇ」
小さくため息をついたあと、利き手に持っていた無料引換券のチラシを見てそう言った木手です。
「まず、焼きそばから食いに行こうぜ」
「ちょっ・・・・・・」
丸井に手を引かれ、木手は驚き戸惑っていました。しかし、木手は丸井の手を振り払うことなく、少年に引っ張られるまま歩きます。
焼きそばの屋台に来た理想のペアは早速、無料引換券のチラシを焼きそばの屋台のおじさんに見せました。チラシに書かれてあった「焼きそば」の文字の上にスタンプを押し、おじさんは出来上がっていた焼きそばを理想のペアに渡します。
丸井と木手は焼きそばをすぐに食べず、次の屋台へ回りました。今度も丸井が木手の手を引き、木手は面食らっていましたが、少年に引かれるまま、次はたこ焼きの屋台に来ます。
「ん~、美味そうだろい。なっ!」
丸井は、たこ焼きの屋台のおじさんの手でたこ焼きが焼かれていくところが目に入り、思い切り深呼吸し、木手に振りました。
「フン」
木手は丸井の笑顔にほんの数秒だけ緊張感を走らせますが、そっぽを向いてから顔をたこ焼きの方に戻しました。
理想のペアは無料引換券のチラシを出し、屋台のおじさんにスタンプを押してもらい、たこ焼きをもらいます。
この調子で少年たちはフライドポテトや唐揚げ、イカのぽっぽ焼きやベビーカステラ、チョコバナナ、わたあめ、かき氷の屋台も回り、両手が袋いっぱいになりました。
丸井と木手は人が通るのに邪魔にならない場所で屋台の食べ物を食べます。二人とも、焼きそばから最初に食べ、かき氷と交互にフライドポテトや唐揚げ、たこ焼き、イカのぽっぽ焼きとしょっぱいものから先に食べました。
次にチョコバナナ、ベビーカステラ、わたあめの順番に食べ、理想のペアは屋台の食べ物をお腹いっぱいに平らげたのでした。
「ふ~、食ったな~」
「しばらく何も入りませんねぇ」
「あれ?」
遠くから笛と太鼓の音がし、丸井と木手は音のする方へ足を運びました。すると、笛と太鼓の音に合わせ、通行人何人かが踊っていたのです。
「楽しそうだろい。オレたちも踊りに行こうぜぃ」
「オレはいいです」
と、木手は遠慮しますが、丸井に手を引かれてしまったため、諦めて踊りに行きます。
理想のペアは両手を左右に振り、前の人に合わせながら手拍子を打って踊りました。リズム良く踊っているうちに、楽しくなっていた少年たちでした。
「たまには祭りも良いものですねぇ」
踊りで暑くなり、紫の扇子で仰いでいた木手と、
「ああ、こんな時じゃねえとお前と来られないよな」
丸井が黄色い扇子で扇ぎながら、つぶやくようにそう言うと、
「え?」
と、木手が不思議そうな顔をしていました。
「って、ジャッカルがいたらそう言いそうだよな~」
丸井はニコッと言ったあと、自分は何を言っているのだろうと下を向き、真顔になったのでした。
「次はどこへ行きますか? 食べ物は今、入りませんが」
「そうだな、んじゃあ、射的をやろうぜ。屋台もちょうどそこにあるし」
丸井と木手が踊りに行った場所のすぐ近くに射的の屋台があり、二人はそこに行きます。無料引換券のチラシを見せる前に、理想のペアはあることに気が付きました。それは、射的の景品があまりなかったことです。
「もう景品ないんですね」
丸井が射的の屋台のおじさんに声を掛けると、彼は一瞬ビクッとなり、申し訳なさそうな表情になり、
「ああ、みんなもう終わっちまって」
と、後ろ頭を掻きます。
「何かありましたか?」
射的の屋台のおじさんの様子がおかしいと思った木手が尋ねると、
「ねえ!」
と、今度は怒った表情になりました。
「・・・・・・木手、行こうぜ」
丸井が木手の浴衣の裾を引っ張り、風船ガムを膨らませます。
「・・・・・・」
木手は目を閉じ、丸井と射的の屋台をあとにしました。
「さっきの屋台のおじさん、どうしたんだろうな」
「わかりませんが、なぜかオレを見て怒っていたようでした」
「木手は何も悪いことをしていないのにな。ちがう屋台に行って気持ち切り替えようぜ。えっと、この先に輪投げの屋台があるな」
丸井は片手をおでこにかざし、先にある輪投げの屋台を発見し、再び隣に目を向けると、木手がいません。
「あれ、キテレツ・・・・・・」
前後左右を見回し、やっと木手の姿を見つけた丸井です。
木手は袋を重たそうに持っていた高齢者に声を掛け、荷物を持っていました。丸井は、風船ガムを膨らませながら少年たちの様子を見ています。
途中で高齢者の家族と会い、木手は荷物を彼らに渡し、高齢者とその家族のお礼の言葉を背に丸井のところに戻って来ました。
「へえー、優しいところがあるじゃん」
感心した丸井が言うと、
「誰だってお年寄りに親切くらいするでしょう」
そっぽを向き、メガネを片手に持って言った木手です。
「そっかねー」
丸井はもう一度、風船ガムを膨らませ、穏やかな眼差しで木手を見ていました。
「さあ、輪投げしますかねぇ」
「おっ、やる気満々だなキテレツ。行ってみるか」
理想のペアは、輪投げの屋台まで早歩きしました。そこまで来たときも、景品がないことに気が付いた少年たちです。
「さっきの射的の屋台といい、どうもおかしいですねぇ」
「あの、射的の屋台に行ったときに景品がなくて、ここでも景品がないみたいで気になりました。何かあったんですか?」
輪投げの屋台のおじさんに丸井が聞くと、彼は頷き話し始めます。
「祭り荒らしにみんな取られたよ」
「え?」
輪投げの屋台のおじさんの言葉に丸井は目を大きく見開き、
「・・・・・・」
木手は両腕を組み、彼の話の続きを待ちました。
「オレもあいつらのゲームに乗ってしまったのも悪かったんだ。一番難しいところに輪投げの輪が入ったら、景品全部持って行っていいって。まさか、出来るとは思っていなかったんだ。甘かった。あいつらの中で、輪投げが上手い奴がいて、彼が一番難しいところに輪投げの輪を入れてしまったんだ」
「で、大人しく景品を全部、祭り荒らしの彼らに渡してしまったと」
「ああ、それと提灯・・・・・・」
「提灯がどうかしたんですか?」
丸井が輪投げの屋台の近くあった提灯に注目後、輪投げの屋台のおじさんに尋ねます。
「二人とも、提灯の中を見てくれ」
「はい」
「・・・提灯の明かりの球がないようですが」
「ああ、何でかは知らないけど、あいつらは提灯の中の電球をごっそり取って行ってしまったんだ。他にもあちこちのところで電球が取られてる。おまけに屋台の食べ物を食べて出たゴミをポイ捨てしまくりだ」
「それじゃあ祭り荒らしだな」
うんうんと丸井がまるで納得したように頷いていると、
「だから、『祭り荒らし』と屋台の彼は初めから言っているでしょう」
と、呆れていた木手でした。
「分かってるだろい」
「君たちも、祭り荒らしに気を付けて。子どもを平気で泣かせたりもする連中だから」
「げ、出来れば関わり合いたくないな」
「面倒ですねぇ」
輪投げの屋台のおじさんの祭り荒らしの話を聞いてから、理想のペアはしーんと歩いていました。
しばらく歩いていたところで、丸井がお手洗いに行きたくなります。ちょうど公衆トイレが見えたからです。
「わりぃ、キテレツ」
丸井は木手に断り、公衆トイレの中へ入って行きました。
今回、借りている着物を着ていて汚さないようにするため、丸井は思いの外、お手洗いに時間が掛かってしまいます。
「遅いですねぇ、丸井くん」
と、待ちくたびれそうになっていた木手です。
そろそろ、丸井の様子を見に木手も公衆トイレに行こうとしたとき、高齢者の叫び声が聞こえてきます。
「これは一体・・・・・・」
叫び声のした方へ駆けつけた木手が見た者は、先ほど、木手が荷物を持って助けた高齢者と同じでした。
また、高齢者の向かい側には三人の不良男たちが立っていました。その中の一人が高齢者の胸ぐらをつかんでおり、もう一人が提灯の中の電球を取って行くところを見てしまった木手です。
「何、ガン見してんだ?」
不良男Aが木手を睨んで来ます。彼の髪型はやや木手と似たリーゼントヘアーでした。
「あなたたちですか、祭り荒らしというのは。あなたのおかげで、射的や輪投げが出来ず迷惑しています」
木手は冷ややかに笑って言ったあと、不良男Aに睨み返します。
「だから、どうした」
「フン、高齢者相手に、これ以上のオイタは止めなさいよ」
木手がビシッと言うと、不良男たちは少年の回りを囲ってきました。彼らから解放された高齢者は杖を持って逃げます。
「んあ、よく見たらおめぇ、沖縄の中学テニス部か。青春学園と全国大会で対戦した」
不良男Aが木手に顔を近づけて言いました。
「そうですが。よくご存じで」
「メディアで知った。オレも中学の時はテニス部に入っていたからな、テニスは得意だ」
「それではテニスで決着をつけましょうか」
「いいぜ」
「この先にテニスコートがあるから案内するよ」
不良男Bがそう言い、
「早くついて来な」
不良男Cが先頭を早歩きし出します。
不良男たちのあとを木手はついて行き、メガネを光らせていたのでした。
一方、お手洗いを済ませた丸井は、参った顔で外に出ていました。
「待たせてわりぃ、キテレツ。着物を着るのに時間掛かっちまった。って、あれ、キテレツ、どこ行った? キテレツー?」
木手がいないことに気が付いた丸井は、風船ガムを膨らませ、探し始めます。
木手の方は不良男たちとテニスコートに来ていました。木手は浴衣で来ていたため、ラケットとボールを持っていないことを彼らに伝え、借りようとします。すると、中年くらいの男性がやって来ました。彼は、テニスコートの管理人でした。管理人は木手にラケットを貸してくれます。また、テニスコートの付近にあった倉庫の方からボールを出してくれました。
「すみません、ありがとうございます」
と、管理人にお礼を言い、コートに立った木手と、
「ところでその格好でテニスしても大丈夫かぁ?」
ニヤリ顔で言い、同じくコートに立った不良Aです。
「ワンセットマッチ」
管理人が審判をしてくれます。
「which?」
サーブ権を決めるため、不良男Aがラフかスムースか木手に尋ねます。
「ラフで行きます」
「じゃあ、オレはスムースだ」
不良男Aがラケットをトスすると、裏が出ました。
「では、オレが先にサーブですね」
木手は早速サーブを打ちます。
不良男Aがリターンを打ち返し、木手も打ち返すときのことです。草履を履いていたため、思うように走れず、ボールを拾うことが出来ません。
「0-15(ラブ・フィフティーン)!」
「・・・・・・」
木手は息をあげながら、自分の着ている着物と下の履き物に目を向けていました。
「だから言ったじゃん。その格好でテニスしても大丈夫かって」
不良男Aに押され、木手は2ゲームまで取られてしまいます。
木手が不良男Aとの対決に苦戦している中、丸井も木手探しに苦戦していました。
「どこまで行ったんだよ、木手・・・・・・」
丸井は屋台のおじさん、おばさん、何人か通行人にも聞き回ったところ、誰も木手の姿を見た者はいませんでした。
「おい、おい」
と、誰かに声を掛けられた丸井です。木手が不良男たちから助けた高齢者でした。
「あれ、あの時の!」
すぐに思い出した丸井は明るく笑います。
「あんたと同じような着物を着たリーゼントの頭した子なら、ここから先のテニスコートに祭り荒らしと向かったよ」
「祭り荒らしとテニスコートだって!?」
「ああ、私はまたあの子に助けられて一旦は逃げた。だが、やはり心配になって戻ったら、祭り荒らしにテニスコートの方へ連れて行かれるところを見たんだ」
「木手ぇ、よりによって何で祭り荒らしと出遭うんだ。ありがとうございます」
丸井は高齢者の指さした方向へ走り出しました。
テニスコートに着いたとき、丸井の目に映ったものは木手が祭り荒らしすなわち不良男Aとシングルス対決をしているところでした。現在、木手は4ゲーム相手に点を取られていました。
「ハッ、着替えがなくて残念だな」
「・・・・・・」
表情が渋くなっていった木手です。
「キテレツ」
丸井は管理人にラケットを借り、ダブルスで加勢しようとしますが、
「お、君もあの子の仲間~?」
「やめときなよ、その格好でテニスは。負けに行くだけだぜ」
と、不良男BとCが人を小馬鹿にしたような言い方で丸井に言ってきました。
「くっ・・・・・・」
丸井は自分の着ている着物と草履を見て唇を噛みます。
「0ー40(ラブフォーティー)!」
こうしている間にも木手は不良男Aに5ゲーム取られそうになっていました。管理人による審判コールに丸井はハッとなります。
次のサーブを木手が打ちそうになったところ、何人か人がやって来てタイムになりました。ちなみに、やって来た人物はリンゴ飴の屋台のおじさんと、ヨーヨー釣りの屋台のおじさんでした。
理想のペアを始め、不良男たちも目をパチパチさせていました。
「さっき、君たちが通って行くところが見えたから、上さんと店番交代してきたよ。ん? 屋台って店ではないか。はっはっは」
リンゴ飴の屋台のおじさんの言葉に、理想のペアはさらに瞬きの数が多くなります。
「ほら、そんな格好でテニスしちゃダ~メだ~って。これ、うちから持って来たから着替えろっ。うちは屋台のすぐそこだ~からね。はいはいっ」
と、ヨーヨー釣りの屋台のおじさんが二人分の色違いのシャツと同じ色の短パンを丸井と木手に貸してくれました。
丸井はヒマワリの白いTシャツと短パン、木手はヒマワリの黒のランニングシャツと短パンにさっと着替えます。
「その足でもダ~メだ~って」
ヨーヨー釣りの屋台のおじさんはスニーカーも何足か持って来てくれたようです。理想のペアは草履からスニーカーに履き替えます。
「お、サイズぴったりだ」
「随分、準備が良い方ですねぇ」
「フツー、フツー。だってオレと隣のおっさんもテニスよくするからね、汗っかきだから余分にシャツと短パン持ってくよ~。オレはスニーカー好きだから、ピカピカに磨いて~、もしも汚れたときのために三足は必ず持ってく」
「隣のおっさんって、お前もおっさんだろう」
と、リンゴ飴の屋台のおじさんが呆れながらツッコんでいました。
「おかげで助かりましたねぇ」
「これでオレもテニス出来そうだろい」
動きやすい格好になったことで、理想のペアは喜びの表情を見せます。
こうして、丸井もダブルスで加わり、不良男側ももう一人、Bが加わりました。
「言っておくが、点は最初からにしねえよ」
「いいですよぉ、それでも」
「オレも加わったからには、もう1点も取らせないぜ」
と、大胆な発言した丸井でした。
ゲームが再開し、理想のペアは着物からシャツと短パンに着替え、草履からスニーカーに履き替えたことで本領発揮していました。あっという間に、逆転してしまいます。
「ゲーム丸井・木手、5ー4(ファイブゲームトゥーフォー)!」
鉄柱当てを丸井が決め、審判がコールしました。
「天才的だろい!」
「あなた、いつもオイシイところを持っていきますね」
「屋台のオヤジたち、余計なことを・・・・・・」
と、言っていた不良男Bと、
「・・・・・・」
これまでの動きとだいぶ違う木手と、ダブルスに加わった丸井の強さに開いた口が塞がらなくなった不良男Aです。
「さっ、マッチポイントだぜぃ」
「あなたたち、覚悟はいいですね」
理想のペアの打つ球に、不良男AとBは手も足も出ず、ゲームセットになりました。
「ゲームアンドマッチ、丸井・木手! 6ー4(シックスゲームトゥフォー)!」
管理人はコールし終えると、理想のペアと不良男たちが借りていたラケットと、下に転がっていたボールを回収し、片付けて行きます。
「ゲームはオレたちが勝ちました。祭り荒らしは止めなさいよぉ」
両腕を組んで言った木手と、
「どうして、提灯の電球まで取って行ったりしたんですか?」
訳を不良男たちに聞いていた丸井です。
「提灯の明かりといったらロウソクだろう。電球の意味が分からねえし。なあ!」
と、答えた不良男Aは、BとCに振りました。
「いやー、そう思ってるのはお前だけだし」
「オレは、射的と輪投げの景品がただ欲しかっただけなんだけど」
「こら! そんなことで祭り荒らしをしたのか!」
「君がロウソク好きなの分かったけど、だからって祭り荒らしちゃダ~メだよ!」
リンゴ飴の屋台のおじさんと、ヨーヨー釣りの屋台のおじさんにものすごく怒られた不良男たちです。
あとから、射的の屋台のおじさんと輪投げの屋台のおじさんを始め、あちこちの屋台のおじさん、おばさんがやってきて、不良男たちから提灯の電球を取り返していたのでした。
その後、祭り荒らしいわく不良男たち三人は、屋台の手伝いとゴミ拾いをさせられていました。不良男Aが反省の色を見せていませんでしたが、木手がゴーヤー突きつけるとゴミ拾いを止めていた彼は渋々再開していました。
不良男たちが去り、時間が経ったときには辺りは暗くなり始め、提灯の明かりが点き始めます。上の方に吊された提灯の光を見上げながら、丸井と木手は微笑していました。ちなみに少年たちは着物にまた着替え直し、祭りをもう少し楽しんでいたのでした。
「これ持って行きな」
リンゴ飴の屋台のおじさんはリンゴ飴を丸井に、
「あんたにはこ~れね!」
ヨーヨー釣りの屋台のおじさんは紫色のヨーヨーを木手に渡しました。
「いいんですか」
「ありがとうございます」
丸井と木手は喜んで屋台のおじさんから受け取ります。
「思ったけど、あんたたち、竜ちゃんところの生徒かい?」
竜ちゃんとは柘植コーチのことです。柘植コーチの下の名前を竜二と知っていた理想のペアはすぐにぴんときました。
「リンゴ飴の屋台のおじさんが柘植コーチの知り合いの人だったんですね」
「学校みたいに生徒と教師の関係ってほどでもありませんが、そういうことにしておきましょうか」
「やっぱ、そうだったか。合宿所帰ったら、竜ちゃんによろしくな」
「はい」
と、返事した丸井です。
ここで、ドンと音がします。花火です。
「せっかく祭りに来たんだ~。記念写真撮って行かないとダ~メ~だよ。二人とも、そこ並んで~」
ヨーヨー釣りの屋台のおじさんが、インスタントカメラを持って理想のペアにそう促しました。
「キテレツ、一緒に写真写るだろい」
と、丸井が言うと、木手は一瞬驚いた表情しますが、フッと笑い、
「ここ、いいですよぉ」
と、丸井を隣に誘いました。今度は丸井が驚く番でしたが、ニコッと笑い、木手の隣に行きました。
「はい、そのポーズのまま撮る~よ~」
ヨーヨー釣りの屋台のおじさんは、理想のペアにポーズの指示をいろいろしてから写真を撮っていたのでした。二人は彼から写真をいただきます。
屋台のおじさんたちと分かれ、借りた着物をレンタル店に返却するとき、丸井と木手は私服の格好に着替えました。
そして、帰りの混雑を避けるため、花火を見ながらU-17合宿所へ戻り始めます。
「キテレツとまた祭りに来られたら良いな」
「フン、懲り懲りですよぉ。ですが・・・・・・」
「え?」
丸井が木手の言葉の続きが気になり待っていると、
「タダで屋台の食べ物や出し物のところが回れるなら、行ってもいいですよぉ。そのときは、あなたとまた行けるか分かりませんがねぇ」
と、言いました。
「ははは・・・」
丸井は苦笑しますが、提灯の光と花火の光を見て苦笑から穏やかな顔に変わります。
「・・・・・・」
木手は丸井の横顔を一瞥したあと、ひっそり笑い、同じ提灯の光と花火の光を見ていました。
それから、理想のペアはU-17合宿所に無事戻れます。
少年たちは柘植コーチのところに寄ったあと、出迎えてくれた仲間たちに祭りの土産話をしたのでした。
~終わり~