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NewsView #7 コロナで若者の結婚観は変わったか

noteをご覧のみなさん、こんにちは。毎週日曜は、今週のできごとからテーマをひとつ選んで、そのテーマをViewする(観る・考える)記事をお届けします。

今回のテーマは「コロナで若者の結婚観は変わったか」。
ピックアップ記事はこちらです。


____今回のテーマ記事、英語なのでパッと読めないのですが。

「Why It Seemed Like Everyone Got Engaged During the Pandemic」。意訳すれば「コロナ渦の間、みんな結婚したがるみたいだけどうして?」です。

____コロナで結婚したい人が増えたんですか?

このviceの記事ではそう言ってますね。英語なので訳して引用してみます。

バビットとヘンリーは、今回は旅行をスキップし、今後1年くらいで予定していた子づくりを早めることに決めました。 「私はいつまでもじっと待っていたくはなかったし、国境がいつ再開するのかもわからなければ、いつになったら安全に海外旅行に行けるのかもわからなかった」とバビット氏は語った。 「それで、ヘンリーとわたしは夏に話し合ったんです。旅行を延期するなら、もっと早く家族をもつことにしたっていいんじゃないか?って」

____たしかに、旅行も含めどこにも行けなくなったカップルは、結婚や出産を早めて考えるのは自然かもしれませんね。

この傾向は、ミレ二アル世代全体にあらわれているようです。

ミレニアル世代のクライアントに人気の宝石商であるCatbirdの広報担当者は、同社の結婚式の別館では、夏に再開して以来、婚約指輪と結婚指輪の予約が前年と比較して「2桁の割合で増加」したと述べています。

____アメリカを含めて、先進国はどこも少子化傾向なんですから、いいことですよね。

ただ、どうにも日本では捉え方がちがうようです。産経新聞の記事を引用してみますね。

新型コロナウイルスの影響で結婚する人が減っている。厚生労働省の人口動態統計(速報値)によると、令和2年1~10月の婚姻数は42万4343件で前年同期(48万9301件)比13.3%ダウンした。
政府の少子化対策担当者は「新型コロナの影響で結婚につながる出会いが少なく、結婚式も行いにくい状況があるのではないか」と分析。11、12月の婚姻数は発表されていないが、11月には新型コロナ感染の第3波が始まり、担当者は「2年全体での大幅な改善は難しい」と予測する。

____あれ?言ってることが真逆ですね。

そうなんです。まあ、産経新聞のほうは統計データを引き合いに書いてますので、日本における実情としてはこちらがおそらく正しいんでしょうね。

この2つの記事からひとつ言えるたしかなことは、コロナの影響によって、若い世代の結婚や家族に対する考え方が、少なからず変容してきているかもしれない、ということです。

その針がどっち側に振れているのかは、日本とアメリカでちがうのかもしれませんが。

____そう言えそうですね。

いま結婚を考える世代層といえば、1983年1月から1994年12月までの間に生まれた「ミレ二アル世代」ですよね。

また、今後数年後には、1995年1月から2002年12月までの間に生まれた「Z世代」と呼ばれる若者たちも、結婚を本格的に考え始めることになると思います。

デロイトトーマツの2019年の調査サポートにおもしろいデータがあったのでちょっと見てみてください。ポイントは、この調査は全世界の若者を対象におこなわれているという点です。

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____あら、ミレ二アル世代よりZ世代のほうが、子どもや家庭を持つことに積極的ですね。

そうなんです。一方で、今度は日本の若者のみを対象した調査もありまして、医療法人社団風林会リゼクリニックが、日本のミレ二アル世代、Z世代へのアンケート調査をしていました。

ちなみに、このリゼクリニックは、全国で脱毛の美容皮膚科を展開しています。美容皮膚科が若者向けのアンケート調査をしてそのプレスリリースを出しているというのは、非常に賢いなと思いますよね。ぼくが記者なら、ミレ二アル世代の特集を組むとかなったらこの調査は使いたくなるし、そうなればリゼの名前が世に出るチャンスでもありますし。

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話をもとに戻しますと、このアンケートを見ておもしろいのは、「絶対に結婚したい」「できるなら結婚したい」と回答する割合は、ミレニアル世代もZ世代も、男女共に50%を超えているということなんです。

そしてこれは2020年夏に実施されたアンケートですから、コロナの影響を大きく反映してるはずなんですよね。

___ふむ。

ここで思い出してほしいのですが、さきほど産経新聞の記事で紹介した厚生労働省の人口動態統計では、令和2年の婚姻数は減っているというものでした。

でも、若い世代に直接尋ねてみると、半数以上が結婚したいと考えているわけです。

___これはどう考えたらいいのでしょう?

ぼくが思うに、ミレ二アル世代の特徴として、結婚や家庭を持つことにポジティブであるというのは、アメリカや日本など、国籍問わず共通だと思うんです。

それこそ冒頭で紹介したviceの記事で「海外旅行に行けないならサッサと結婚しちゃおう」といったアメリカカップルの話もそうですし、デロイトトーマツのレポートで、ミレ二アル世代が子どもや家庭を持つことに積極的な回答結果だったことも、まさにそれを表していますよね。

そしてそれは日本も同じで、美容皮膚科の調査によれば、ミレ二アル世代は男女ともに半数以上が結婚したいと考えているわけです。ただ、ふたを開けてみれば、実際の婚姻数は下がってきている。

つまり、若い世代の価値観としては、結婚や家庭を持つことを希望するようになっていきているけれども、少なくともここ日本においては、何かしらの制限がかかっているせいで、実際問題、その希望を叶える人は少ないということです。

____ふむ。

じゃあどうしてその希望を叶えれないのか、何に制限されているのか、という話なんですけれども、経済的に家族を持つのが大変とか、外出制限で出会いが少ないとか、そこにはいろいろと仮説は立てられるとは思いますが、その議論にはすみませんがあまりぼくは興味がないので他の方にお任せするとして、一つここで言える確かな問題点があるんですね。

このコロナの影響によって、ミレ二アル世代には、結婚という人生で大きなイベントにおいて、理想と現実に大きなギャップが生じてしまっているということです。

最初から結婚に興味がなかったならよかったんですが、若い世代になればなるほど結婚に興味が増してきているこの状況下で、コロナがその希望を制限してしまっているんですね。

____なるほど。

ここで、苫野一徳さんという哲学者の方がその著書で「不幸」について語っているのですが、その説明のために、手前味噌ですが、以前そのことについてまとめたぼくの記事から引用してみます。

「不幸から抜け出す三つの道」という話です。まず、不幸の本質は欲望と能力のギャップにあると著者は語ります。そのギャップを解消する方法は三つ。当たり前ですがこの三つしかありません。
①能力を上げること
②欲望を下げること
③欲望を変えること

ここでいう能力というのは、環境を変えられる力という意味合いもあるので、コロナによってこの能力が抑えられているとも言えるでしょう。

だから、現状では①を実現するのは難しい。めちゃくちゃモテるイケメンや美女になれるようがんばるという選択肢もありますが、誰にも再現性のある話じゃありませんし。

そして、結婚や家庭を持つことに積極的な価値観をもっているのがミレ二アル世代の特徴ですから、②を実現するのも難しい話です。

____そんなことを言われたら、ミレ二アル世代は不幸になるしかないように思えてきますね。。。

そうですよね。コロナによって結婚したいという希望が叶えられにくい社会になった今、ほうっておくと不幸に陥ってしまう。

だから③の選択肢「欲望を変える」という道を、これからのミレ二アル世代は選んでいくのではないかと想像しています。

____結婚したいという欲望を別の欲望に変えるということですか?

そういうふうに聞くと難しいように感じますが、極論ですが例えば、結婚という儀式はやらないけれど、一緒に住んで、子どもを育てていく、といった方法も、もしかしたら選択肢にあがるかもしれません。

そういう新しい価値観を創出するための土台が、いま整ってしまった、とも考えられると思うんです。

ただでさえ、ミレ二アル世代、Z世代などど呼んで、世代間の価値観のちがいを議論していますが、今後はZ世代の下に新しい世代が次々と生まれ、彼ら彼女らの持っている価値観は、ぼくらからしたら想像もつかないくらいとんでもないものになっていく可能性が高いなと。

それがこのパンデミックによって加速したんじゃないかと。そんなふうに思うんです。

____ジェネレーションギャップがどんどん広まっていくということですね。

そうです。ぼくらは価値観のアップデートについていきたいのであれば、若い世代との接点を常に探っていく必要があるのかもしれません。

(おしまい)

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけましたら、ぜひスキをお願いします!