いぬとぼくと幼稚園
小さい頃から犬と過ごしていた。
好きとか苦手とか思う暇もなく、犬のいる生活が普通だった。
僕は幼稚園が苦手で行きたくなかった。
今でもそうなんだけど、無秩序に大人数がワーッとなってる場所が当時から苦手で、特に誰かから嫌がらせをされたとか、意地悪をされているとかじゃなかったのに、行きたくなかった。
・幼稚園に行かない間、僕は何をしていたかというと、ウルトラマンのビデオを見ながら怪獣図鑑を眺めたり、近所の犬のところへ遊びに行ったりしていた。
犬のいる庭先のゲージに勝手に入ってしまうんだけど、犬はよっぽど大人で、「やぁ、いらっしゃい」と、年下の僕をいつも温かく迎え入れてくれた。
ベタベタ触っても嫌がることもなくて、ただ媚びることをしない子たちだったから、途中で「もう、いいんじゃない?」と向こうから態度で打診がある。
そうして、犬は寝転がってダラダラしはじめる。
僕はその隣で体育座りをして、片手で犬を触りながら、ゲージの外を眺めていた。
「今、この時間。あの子は幼稚園で何をやっているんだろう」
「僕が行っていない幼稚園で、何か楽しいことが起こっているのかなぁ」
「いいなぁ、羨ましいなぁ」
「でも、行きたくはないなぁ」
そんな風に、ぼんやりと過ごしていた。
今とあまり変わらない。変わったのは、自分の家にも、近所にも犬がいないことだ。
犬はずるいな。同じ時期に子どもだったのに、僕がやっと大人になった頃にいなくなってしまう。置いていかないでほしい。
いいなと思ったら応援しよう!
サポート(投げ銭)お願いのメッセージをどう書いたら良いのかわからない遊び心の欠落した人間ですので、真っ直ぐな言葉を使いますね。「サポートを宜しくお願い致します」。