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埃だらけの思い出話。

実家で三人暮らし。俺と、父と母。姉は逞しく都内で何をやっているのか俺はよく知らない。

俺も俺で不規則だし、父はシフト制の仕事。家族全員(姉を除き)が揃って食事をする機会はほとんどない。

この間、久しぶりに家族が揃って食卓を囲んだ。

不思議なものだ。三人が揃うと、どんなキッカケでそうなるのかわからないが、いつも同じ会話に行き着く。
それは、少年野球の頃の話で、つまるところ、この三人で共有した楽しかった最後の思い出ということになる。

どこの家庭でもそんなものなのだろうか。中学高校になれば両親が入るスペースなんかないし、致し方無いことなのだろうか。

少年野球は、どういうわけだか恵まれていて上手くいっていたのだった。俺の人生で唯一、上手くいっていた時期で、やや有頂天でもあり、振り返れば楽しかった話しかない。

・そのことが、気がかりなのだ。いつまで俺ら家族はこの古い思い出を引っ張り出して「楽しかった」と言うのだろう。

結婚もしない、もちろん子どももいない。子がいれば現在進行形の何かがあっただろうか。

少年野球を終えて、その後の長い空白と沈黙を思うと、それしか話せることはなく、そのことがとてもつらい。なんだか申し訳ない気持ちになるのだった。

何か新しい話を、いつもしなければならないということもないだろう。ずっと同じ話を引っ張って振り返れるのもしあわせなのかもしれない。

けれどそれ以来、何も共有してやれない自分の人生というものが、とてもさみしく思うのだった。



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