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『大人について』

僕にとって“大人”は、『きちんと働いている人』だと思っていた。

“かっこいい大人”は、『遊びきっている人』だった。

29歳になった今、僕はそのどちらにもいない。

皮膚科に2週間に一度、喘息の内科と不眠の心療内科に月に一度行く。
不眠は17歳から、喘息は20歳頃から、蕁麻疹とアトピーは喘息よりもっと後になってから発症した。

大人は体調不良の話をあまりしない。体調不良の話で盛り上がるのはもっと老いてからだと思う。
僕の体は何歳なんだろう。
元気な人に体調不良を話しても鬱陶しいだけだ。喜ばれる理由がどこにもない。

元気でもなく、頑張れるわけでもない29歳の僕は、これまでと同じように、やはり居場所を決めかねている。

幼稚園が苦手だった。群れることがすこぶる苦手で、スポーツはルールがあるから良かったけれど、遊びで大人数が集まると今でもつらい。
物心がついた頃には死ぬことについて考えはじめて、中学生の頃には20代で死ぬと決めた。

さて、もう29歳だ。
幸か不幸か、通院をしていれば何も命に関わる病気もなく、しかしどうにも人並みではない。

「人と比べるものではないよ」と優しく言ってもらえるけれど、比べるよ。だって、収入も違えば遊べる幅も違う。動ける量が違う。病院だってお金がかかる。
そりゃあ、比べるよ。比べないなんて無理だ。もう、29歳だよ。比べるでしょ。

それら総てを投げ出すために、アル中になろうと思ってウィスキーを瓶のまま飲み続けた時期があったけど、体がしんどくてやめた。
20歳でヒモになりかけたときには、申し訳ない気持ちが勝ってしまって続かなかった。

いつ死んだっていいと思っているはずなのに、堕落さえ上手にできない。

お酒も飲まない。タバコも吸わない。
体のしんどさを少しでも和らげるために栄養を勉強したり、リンパマッサージをしたりする。毎日、湯船に浸かる。
死ぬことしか考えていないくせに、気持ちよく生きることに執着している。

アル中も、ヒモも、気持ちが悪かった。体もしんどいし、心もしんどい。 気持ちよくないことが我慢できないのかもしれない。

大人はどうやって生きているんだろう。
働いて、遊んで、たくましくて羨ましい。
頑張り方と、手の抜き方を教えてほしい。

「真面目なのはお前の一番良いところだけど、真面目すぎるのはお前の一番悪いところだぞ」と言われたことがある。19歳の頃だった。
それが今でも忘れられない。

強く見える真っ直ぐな枝はバキッと折れてしまう。雨にも風にもしなやかな枝は、折れない。




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