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空のビン

池の上陽水というアーティストがいた。

僕が大槻ケンヂさんのエッセイを読んで池の上陽水さんのことを知ったときには、既に亡くなられた後だった。

今にも消えてしまいそうな、弱々しくて暗い歌が多い。歌詞の世界も暗いけれど、ユーモアや皮肉やシュールさがあり、“井上陽水”っぽい。僕は池の上陽水というアーティストのファンになった。

「よろこびとカラスミ」というアルバムの中に、「空のビン」という曲がある。

僕は妙にこの曲が気に入っていて、中でもよく聴いている。

後半に気になる歌詞がある。

“白い夜空の中 硬いお湯を飲み
埃だらけの君を抱きしめ眠る”

“埃だらけの君”とは、どんな状態だろうと考える。

・僕は高校を中退してから、ほとんどの友人に会っていない。

今でも女々しく当時のことを思い出したりする(オマケにしょっちゅう夢に出てくる)。

埃だらけの君…あぁ、そうか、そうかもしれない。

例えば卒業アルバム。例えば集合写真。例えば思い出。

形がなくとも、何か、古いまま更新されていない思い出。そこにいる(いた)、君。

そうだとしたら、僕も、埃だらけの人たちを抱きしめて眠っている。

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