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風にさらわれて
ぼくはあまりフットワークが軽くない。
思考も定着しない。
あまり夢中になれなくて、だから、ダンスはうまく踊れない。
ひょいっと、あまりにも、ひょいっと、長崎に来てしまった。
好奇心を止められずに、すぐにスケジュールを決めてしまった。
あまり経験のないことだった。
さてぼくは、勢い余って来たくせに、あまりにも長崎のことを知らなすぎた。予習もしていなければ、旅程も彼女に丸投げして、へらへらしながら付いて行くだけという奇妙な金髪だった。
(おまけに、電気シェーバーを忘れて、無精髭が生えかけていた)
・彼女は、『平和公園』以外は、いかにも観光地という場所ではなくて、普段行っている小さな本屋さんや、気になっている展示会などに連れて行ってくれた。
パーソナリティに少し触れられる気がして、ぼくはこうした遊び方のほうが好きだ。
愉快なおばちゃんがやっている、小さな雑貨屋さんに入った。
おばちゃんの軽妙なトークに終始笑いながら、随分と長居をした。
「大事なお客さんにしか見せない」という(みんなにそう言っていそうだけど)、ガラス細工の“オーケストラ”を見せてもらった。
すごく綺麗で、美しくて、かわいかった。
「ガラスだと、大事にするからいいですね」と僕の口が言った。
けれど僕は、怖くてガラスに触れない。大事なものだと思えば思うほど、割れてしまうのが怖い。
しばらく考えてみたら、割ってしまった後の自分の気持ちのやり場に困るのが、一番怖いんじゃないかと思った。
いつだって、一番弱くて、一番怖くて、一番傷付けたくないのは、自分自身だ。
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(おまけ)
彼女にカメラを渡してみたら、こんな写真を撮ってくれました。
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