マスメディアでは(あまり)報じられない、ガザ・パレスチナで起きていることを知るための情報源リスト(2023.12.31現在)
いつもなら、穏やかな気持ちで一年を振り返るはずの今日も、僕の気持ちはざわざわしている。あの10月7日から、ずっとだ。
X(旧Twitter)でガザの情報をフォローして以来、目を覆いたくなるような映像・画像・ニュースが届き続けている。そしてその内容は、日に日に、深刻になっている。もはや「人権」という言葉も虚ろになってしまった。
だけど、この、世界的な危機的状況を共有できている人は身の周りにはとても少ない。ウクライナ侵攻のときと全く違う。きっとそれは、この状況やその背景を、日本のマスメディアがしっかり伝えてくれていないからだろう。
だから微力ではあるが、この記事で、僕が得てきた情報源のいくつかを共有したい。
断片的なものではあるけれど、その多くは一人ひとりの生の声が反映された草の根の信頼できる情報。その情報源からさらに、新たな人や情報につながっていけると思う。
1.現地からのリアルタイム情報
まず、現地の情報を日々アップデートしてくれている情報源を紹介する。いずれも英語ではあるが、映像や写真、見出しなどで一定、理解はできると思う。なお、映像はかなり凄惨なものが含まれることがある。観たあとは自分自身の心のケアも大切にされることをお勧めする(現地の方々には一時たりともそれは許されていない、ということにも留意しつつ)→参考記事
ガザの現地から、毎日、状況を発信してくれている人がいる。名前はwizard bisan。Instagramのフォロワーは現在、370万人。映像クリエイターであり、ジャーナリストでもある。
彼女は、時折ユーモアも交えながら、現地の人々がいまどんな日常を過ごしているのかを、端的に表現してくれている。女性ならではの身近な視点だからこそ、いかに人々が人間としての尊厳を奪われているかがリアルに伝わる。
またなお10/7以前に彼女が発信していたコンテンツでは、ガザでの楽しげな暮らしや文化の豊かさも発信されていた。いまでもときどき、そうした映像を使うことで、何が破壊されてきたのかを端的に表現してくれている。
また、motaz_azaizaからも現地から緊迫した写真・動画を送ってくれている(フォロワーは1778万人)。
カタールに本部を持つメディアAl Jazeera(アルジャジーラ)も、ガザと周辺の状況を随時発信している。日本でもNHKの報道で中東関係の報道を得てきたので、ご存じの方も多いだろう。現地の記者も多いし、元々イギリスのBBCのトレーニングを受けた人々がスタートさせた(wikipediaによる)だけのことがあり、記事も写真もクウォリティが高い。
なお、すでに多くの記者やカメラマンが殺されたり、負傷したり捕まえられたりしている。
アルジャジーラのサイトでは、状況も日々、アップデートされている(殉職した報道関係者のリストも)。
また、アルジャジーラのサイトに掲載された「あるガザの一日」という動画は、彼らの今の「日常」がいかに過酷なものであるかが痛いほどに伝わってくる。11月のある日の、10人のガザ市民の方々(子ども含む)が撮った映像を編集したものだ。それから1ヶ月以上経って、状況はさらに凄惨になっていると思われる。
もうひとつは、BBC。
イギリスの公共放送。こちらも現地からのリアルな映像が届けられている。
2.日本で声をあげている人たち
この状況を看過することのできない人たちが、様々な形で、魂の叫びとも言えるような声を発し、一人ひとりにできることをやっている。何人かの方を紹介する。
一人は、松下新土さん(twitter)。
白血病を患いながら、現地を訪れ、そこで感じたことを元に、いま、必死の活動をされている。彼のことや写真が下記記事で紹介されている。
彼のおすすめのブックリスト20冊も紹介してくれている。
次に、新宿のお菓子屋「MOMO」の玉井紅帆さん(twitter)。
悩んだ末にクリスマスのケーキ販売を中止、クリスマスケーキプレゼントプロジェクトだけを実施。インスタグラムに投稿されたメッセージが心を打った(上記twitterからも読めます)。
さらに、上海IIさん(twitter)。
日本の地方議会でのガザ停戦などを求める決議・意見書の採択状況をウォッチし、まとめて発信し続けてくださっている。彼の情報を元に、地図を作成してくださっている方もある。
僕もこうした動きに押されて、地元の滋賀県日野町の議員にはたらきかけた。結果的にすばやく動いてもらえることができ、意見書の採択につながった。
また、〈パレスチナ〉を生きる人々を想う 学生若者有志の会のみなさんが、伊藤忠商事への働きかけを行っていたりもしている。これがどういう活動なのかを知ることも、まずできることの一つ。「5年間で43兆円の防衛費(軍事予算)」というニュースとも深い関係がある。
3.いま起きていることの背景の理解
何がこの争いの元となっているのか?ぼくもほとんど知らなかったので、いまようやく、一つ一つを観ていっているところ。
いろんな解説があるが、この15分の動画が、第一次世界大戦の頃から続く、事態の背景を簡潔にまとめているように思う。(翻訳元の動画はこちら)
あと、やや長い動画ではあるが、テレ東「豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス」の2本の動画も、知らないことがたくさんあり、学びになったので紹介しておく。一本目は「イスラエルの論理」、二本目は「パレスチナの論理」。彼は複数の文献を元に、学んだことの内容を紹介するスタイル。
10/7以前に、すでにガザは非人道的な状況にあった、ということがわかるのが、下記のいとうせいこうさんのお話。
また、なぜも「人権」を大切にしてきたはずの欧米が沈黙してしまっているのか、ということについては、下記の内藤さんのお話の中にも語られていて、この問題の深さを実感した。
なお、イスラエルの人々が今見ているメディアの情報については、現地のメディアを見ていくと、アルジャジーラのそれと見比べると全く違うことがわかる。
たとえば大衆紙と言われているYnetnewsのTwitterでは、イスラエル軍の状況や、人質の解放の状況、ハマスの残虐行為やフェイク情報の指摘ばかりで、イスラエルが現在行っている蛮行についてはほとんど報道されていない。
左派と言われているHarretzのTwitterでは、国連からの勧告などは取り上げられているが、現地の悲惨な映像はほとんどない。加えて、こうしたメディアを見ている人は少数派という情報も。
ユダヤ系住民の8割が「ガザの人の苦しみを考慮する必要がない」と考えているという、そら恐ろしい状況も、パレスチナの人々への偏見や暴力が、長年にわたって常態化していたことを裏付けていると思う。
4.いま、日本にいるぼくらにできること
ここまでのリンク先をちらちらと見ていただければ、今起きていることの重大さとか、僕らの常識からの乖離の大きさに、きっとショックを受けると思う。
僕も、ずっとそのショックに打ちのめされてきた。
一方で、自分に何ができるだろうかと、無力感を感じることもあると思う。
たしかに、自分ひとり、今日一日で、一気に何かを変えることはできないだろう。でも、私たちは「微力」ではあるが、「無力」ではない。
「一人の百歩より百人の一歩」という言葉もある。
だから、自分にできることを、始めていけばいい。
たとえば下記には、「日本から私たちができるパレスチナ連帯行動」が挙げられている。これも、有志の人が一人でやっている活動だ。具体的にできることが網羅的に書かれているから、きっと参考になる。
先に述べた新土さんたちが「アパルトヘイトに抗する文化」という活動も始めている。これも個人で参加できる取り組み。
あと、Ghufron Yazid若いアーティストさんが、絵本をつくった。Instagramをシェアするのもいいし、A3で印刷して小さな絵本にするのもいい。僕はこれを今日、10冊、友人に託した。
あとは、いろんな当事者の人たちの声を聞くことも大切。
たとえば今日聴いた下記の配信、特にパレスチナにルーツを持つ人の叫びとも思えるような訴えは、とても心に深く響くものだった。
現地の今、ぼくらがいま立っている位置、僕らにできることなど、色んな人の話を聞くことで理解が深まる。
ほかにもできることはある。
たとえばこうして、文章を書くこと。
気になったSNSの投稿に「いいね」をすること。
家族や身近な人に、知ったことを伝えること。
あと、この記事への「いいね」も。→読んでもらえる可能性が広がるので
直上の動画ではパレスチナ料理をつくってみる、というのも挙げられていた。これは来年にやってみたいこと。
5.さいごに
直上の動画に出ていた方も話していたメディド・ザックさんも語っていたうように、いま起きていることは、遠くのこと、他人事とは、まったく思えない。
近代国家として武力で植民地を増やしていっていた頃の日本の人々は、いまのイスラエルの人々のようだったと思うし、その後、第二次世界大戦末期に本土空襲や原爆を浴びせられていた日本の人々はいまのパレスチナの人々のようだったと思う。
どの人々が野蛮で、どの人々が理性的・平和的ということは、ない。
ぼくら自身も状況によって、いとも簡単に、抑圧する側にも、される側になる(それは今の日本社会でも、日々、実感できることだろう)。
こうした過ちを乗り越えるために国連がつくられ、国際社会を形成してきたはず。
日本の憲法の前文には「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とある。
上記の内藤氏の動画で内藤氏が解説しているように、ドイツの人々がユダヤ人迫害の歴史の「負い目」から思考停止をしてしまっているのであれば、私たち日本に暮らす私たちにだからこそできることがあるはずなのだ。
なお、年明け1月6日には滋賀・守山でも「ガザ・素顔の日常」の上映会がある。彼らの文化にふれることができそうだ。ガザの刺繍販売を通じて支援をされてきた北村さんのお話もある模様(こんな近くに、こんな活動をしている人がいることも知らなかった)。
関心のある人同士で顔を合わせておしゃべりすることから、きっとなにかが始まる。
各地でもこうした場は開かれている。まずはそうした場に足を運んでみるのもいい。
繰り返す。
ぼくら一人ひとりは微力だ。
だが、無力ではない。