量子の神秘的な作用③ ~量子の二重性~

 前々回のコラム前回のコラムでは、量子の神秘的な性質である量子重ね合わせ、量子トンネル効果、量子もつれの現象を紹介した。量子が壁をすり抜けたり、同時に二つの状態をとったり、離れた粒子が瞬時に反応し合うという信じられない現象が、現実に観測されているのである。この段階で、常識を脱ぎ捨てなければいけない。今回は、さらに驚くべき量子現象である粒子と波動の二重性について考察する。

量子の神秘的な作用「波動と粒子の二重性」

 量子世界に様々な神秘的な現象があることは既述のとおりであるが、量子には、さらに驚くべき、波動と粒子の二重性という性質がある。波動と粒子の二重性とは、量子が粒子としても波動としても振る舞うことができることをいう。
 
量子の二重性を理解するために、最適なのは二重スリット実験である。二重スリット実験については、以下のstcadioid様という方の動画の解説が分かりやすいと思うので、URLを引用させていただく。そして、動画の下の文章にて二重スリット実験の考察を行う。

 二重スリット実験は、常識とされている理屈では全く説明できないが、世界中の優秀な科学者によって何千回も行われた実験であり、確実に現実の現象なのである。
 それでは、二重スリット実験について考察していこう。実験では、波動と粒子を、二本の細いスリットを開けたスクリーンに向けて発射し、その一部を二枚目のスクリーンに当たるようにする。二枚目のスクリーンに現れる輝点によって、波動と粒子それぞれの動きを特定できる。実験結果は以下のとおりである。

【二重スリット実験の結果】
(1)波動を発射した場合
 2つのスリットを通過する時に波が広がって、円形に広がる波が互いに重なり合って干渉し、背後のスクリーンに明暗の縞模様ができる。

(2)ピストルで銃弾を発射した場合
 スリットのどちらか一方を通過するために、十分な数の銃弾を発射すれば、背後のスクリーンには、二本のスリットに対応した二本の帯をつくる。

(3)原子のビームを発射した場合
 上記(2)のピストルで発射した場合と同じ結果になるはずであるが、驚くべきことに、上記(1)の波を発射した場合と同じく、背後のスクリーンに縞模様が現れた。原子であるにもかかわらず、波のように二本のスリットを同時に通過したということになる。
 
この実験については、一度に大量の原子を発射した場合でも、一度に一個ずつの原子を発射した場合でも結果は変わらなかった。常識の理屈で考えると、一度に大量の粒子を発射した場合ならば、膨大な数の原子が互いに干渉したり相互作用したりして、上記(1)の波の場合と同じく縞模様をつくる可能性はあるだろうが、一度に一個ずつの発射の場合でも波動の発射の場合と同じく縞模様ができることは、常識の理論では全く説明できない。

(4)原子のビームを発射し、検出器を設置した場合
上記(3)の不可解な事象を検証するために、左右のどちらのスリットを通過したかを検出するための検出器を設置して実験した結果、何と原子が観測されていることを察知したかのように、上記(1)の波のような振る舞いを止めて、上記(2)の銃弾と同じ振る舞いに変わったのである。つまり、背後のスクリーンに明暗の縞模様ではなく、二本のスリットに対応した二本の帯ができたのである。
 検出器が粒子の振る舞いに何らかの影響を与えている可能性も疑われたため、検出器の距離を離してみたが、結果は変わらなかった。そこで、検出器が物理的に設置されているだけで、粒子の振る舞いに影響を与えている可能性も考えられたため、検出器を設置したまま、スイッチをオフにして再度、原子ビームを発射したところ、スクリーン上には、上記(1)の波を発射した場合と同じ動きに戻り、明暗の縞模様が再び現れた。

 以上が二重スリット実験の結果であるが、検出器のスイッチをオンにした途端に原子の挙動が変わるのは、どのように説明できるのであろうか。一体、スリットを通過する原子は、スイッチのオン・オフをどのようにして「知る」のだろうか。古典物理学の理論で説明することは絶対に不可能である。
 原子、電子、光子などの微小粒子は波動と粒子の二重性を持っていて、どちらのスリットを通過したかという情報が存在しないうちは波動のように振る舞い、観測されると粒子のように振る舞うと考えるしかないのである。
次回のコラムへ続く


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