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『やらされ勉強』から『自ら学び』へ。子どもが変わる4つの転換点〜教育心理学が明かす、学習意欲の育ちかた〜

「うちの子、いつになったら自分から勉強するようになるのかしら...」

こんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。しかし、子どもの学習意欲は一足飛びには育たないのです。教育心理学者の櫻井茂男教授の研究によれば、子どもの学習意欲には明確な発達段階があることがわかっています。

1. 子どもの学習意欲はどう育つのか

櫻井教授の研究によれば、子どもの学習意欲は4つの段階を経て発達していきます。これは「やらされている」状態から「自ら学ぶ」状態へと、徐々に変化していく過程です。それぞれの段階を見ていきましょう。

自己決定の6段階(Ryan&Deci;櫻井,2009)を元に作成

2. 学習意欲の4つの段階

第1段階:外的調整

「やらないと叱られるから」「言われたからしかたなく」という段階です。この時期の子どもは、親や先生の指示や評価に強く依存しています。自分から進んで学ぼうとする意識は、まだ芽生えていません。

第2段階:取り入れ的調整

「やらないといけないから」「できないと恥ずかしいから」という段階です。外からの価値観を内面化し始めていますが、まだ完全な自発性には至っていません。

第3段階:同一化的調整

「自分のためになるから」「将来に必要だから」という段階です。学習の意義を自分なりに理解し、より主体的に取り組めるようになってきます。

第4段階:統合的調整

「学ぶこと自体が楽しい」「新しいことを知るのが面白い」という段階です。学習が自分の価値観と一致し、自然な形で取り組めるようになります。

3. それぞれの段階で大切な親の関わり方

第1段階(外的調整)の子どもには

  • 安全な学習環境を整える

  • 小さな成功体験を作る

  • 具体的な手順を示す

×「さっさと勉強しなさい」
○「まずは1ページだけやってみようか」

第2段階(取り入れ的調整)の子どもには

  • 頑張りを具体的に認める

  • 比較や競争を避ける

  • 自己決定の機会を少しずつ増やす

×「○○君はもっと頑張ってるわよ」
○「昨日より集中して取り組めたね」

第3段階(同一化的調整)の子どもには

  • 学習の意義を一緒に考える

  • 子どもなりの工夫を認める

  • 失敗を学びの機会として扱う

×「この勉強は将来絶対必要なのよ」
○「この勉強が何に役立つと思う?」

第4段階(統合的調整)の子どもには

  • 興味の広がりを支援する

  • 深い学びのチャンスを提供する

  • 自主性を最大限尊重する

×「もっと難しい問題に挑戦したら?」
○「どんなことを深く知りたい?」

4. 大切なのは段階を理解すること

ここで重要なのは、これらの段階は必ずしも年齢と一致するわけではないということです。また、教科や分野によって段階が異なることもあります。

たとえば、同じ子どもでも:

  • 好きな理科は第4段階

  • 苦手な国語は第2段階 といった具合です。

大切なのは、子どもの現在の段階を理解し、一つ上の段階へ向かうための適切なサポートをすること。焦って最終段階を求めすぎると、かえって学習意欲を削いでしまう可能性があります。

【まとめ】 子どもの学習意欲は、段階的に発達していきます。それぞれの段階に応じた適切な関わり方があることを知り、子どもの成長に合わせたサポートを心がけましょう。

一足飛びに理想の状態を求めるのではなく、今の段階を受け入れ、少しずつ成長を促していく。それが、子どもの「自ら学ぶ力」を育む近道となるのです。


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