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信用創造⑩税金は財源ではないという衝撃の事実について



信用創造と信用創造以外のもの

これが信用創造


これまで銀行による信用創造は預かった現金を元手にしているのではなく、貸出と同時に新たな預金を生み出しているというお話をしてきました。
そして、貸したお金の返済を受けると、預金は消滅して、元の状態に戻ります。

これは日銀が銀行に対して貸し出しを行う場合も全く同じことです。日銀は日銀当座預金というお金を無から生み出しますが、銀行から返済を受けるときに日銀当座預金は消えます。これは、民間から銀行への現金の預け入れや、銀行が日銀当座預金に現金を預け入れたとしてもそれらは信用創造の原資ではないということを意味しています。

この2つの事例は通貨の発行者と貸し手が同じ場合の話です。通貨の発行者と貸し手が異なる場合はどうでしょうか。

これは信用創造じゃないもの


消費者金融の会社が貸し付けを行う場合、消費者金融会社が保有する預金から貸し出しを行います。預金を無から生み出すことはできませんので、自分の預金を移すことで貸し出しを行っているわけです。返済時に借り手の口座から消費者金融の口座に預金が戻ります。

インターバンク市場といって金融機関どうしが日銀当座預金を短期間貸し借りする場があります。インターバンク市場では、銀行などの金融機関は日銀当座預金の発行者はなく、利用者なので貸し手の金融機関の日銀当座預金を借り手の日銀当座預金口座に移します。返す時は日銀当座預金が貸し手の口座に戻ります。

銀行や日銀当座預金による信用創造の場合も、消費者金融やインターバンク市場における貸し借りについても、返済まで終われば、元の状態に戻ります。つまり、信用創造のパターンですと、生まれた預金が消えてゼロに戻りますし、もう一つのパターンでは貸出に使った預金や日銀当座預金が元に戻り、元の残高に戻ります。
 

政府による信用創造

政府による国債発行、財政支出も民間の預金を増やすという意味で信用創造の一種だというお話をしました。ですが、国債の場合は話がやや複雑で、国債というお金の一種を政府が発行して負債計上しますが、政府は借り手でもあるので、国債を銀行に買い取らせることによって政府自身が政府預金を手に入れます。政府は手に入れた政府預金を元手にして、財政支出を行い、年金受給者や公共事業を行った企業の銀行預金の口座の残高を増やします。この瞬間、マネーストックが新たに生まれたことになります。


銀行としては突然負債が増えたことになるので、他の銀行から振込を受け入れた場合と同様、日銀当座預金をもらうことで調整をします。この場合は政府から日銀当座預金を受け取ります。政府の財政支出は年金受給者や公共工事の受注会社に対して直接政府預金を送金できないので、いったん銀行に代わりに支払いをお願いして、その後、銀行に対して日銀の口座を通じて政府預金を支払うのです。



国債の償還期限が来たらどうなるでしょうか。国債を買ってくれた銀行、つまり政府にお金を貸してくれた銀行に対して、政府は借りたお金を返済します。日銀の口座を通じて政府預金を支払い、銀行の日銀当座預金残高を増やします。すると、国債という名のお金は消滅します。政府の債務が消滅するのです。国債という名の通貨は預金通貨などと同様に、発行によって発生し、返済によって消えます。



ところがです、政府による信用創造、つまり財政支出によって発生した民間の預金は年金の受給や公共事業の代金といった内容であり、借りたお金ではないため、国債の償還期限が来ても消えません。マネーストックとして残り続けます。そうると、バランスが取れない感じがしませんか?

実は、政府は国債の代金に相当する金額を2回支払っているんです
1回目は財政支出を行った時です。預金が増えた銀行に対して政府預金を支払っています。
2回目は国債の償還の時です。国債を買ってくれた、つまり最初に政府に対してお金を貸してくれた銀行に対して政府預金を支払うことで国債という債務を弁済しています。

結果的に、政府は国債発行前よりも、国債の金額分だけお金が減っています。つまり、反対側で民間の預金が増えたこととつり合いが取れるのです。
銀行による融資が借り換えをすることによって継続することが多いですが、政府もまた、毎年毎年新たな国債を発行して政府預金の残高が一方的に減り続けない様にしています(政府預金が底をついてしまったら財政支出できませんので)。

結果的に、銀行の貸出残高や国債の発行残高はマネーストックとして世の中に供給されている金額を表していることになります

 銀行融資の返済と税金の徴収はともに『マイナスの信用創造』


政府による国債発行、財政支出が信用創造の一種ですが、銀行による融資と回収とは異なる点もあることが分かったかと思います。
銀行が信用創造によって生み出した預金は回収することによって消滅しますが、政府が財政支出によって生み出した預金は国債の償還後もマネーストックとして残り続けます。増えた預金というのは年金の受け取りだったり、
公共工事の代金だったりと民間にとっては借りたお金ではなく、もらったお金、稼いだお金だからです。

では、政府が財政支出によって生み出した預金は全額が永遠にマネーストックとして残るものかというと、そうではありません。実は政府自身が増やした民間の預金の一部を消滅させることがあります。それは税金の徴収です(徴税)。

税金は財政支出のための原資ではなく、過去に財政支出によって増やしたお金の一部をこの世から消滅させることなのです。別の言い方をすれば、マネーストックという民間で流通するお金の量を減らすことなのです。

もちろん、徴税によって預金口座から減らされた分のお金は銀行の日銀当座預金を通じて政府預金を増やす効果があります。しっかりと政府預金として受け取ります。しかし、その政府預金は国債という債務と相殺されてともに消滅します

政府は事前に徴税によって増えた政府預金を使って財政支出しているわけではありません。国債発行によって増やした政府預金を使って財政支出をしています。

要するに、税金は政府の国債発行や財政支出の原資ではないのです。初めて聞いた人にとってはなかなか受け入れがたいことかもしれませんが、物事が発生する順序を考えるとそういわざるを得ないのです。
融資の回収と徴税はともにマネーストックを減らす行為です
 


今日のまとめ


今回は国債の発行、財政支出について説明するとともに、政府による税金の徴収が銀行融資の返済と同様に、お金の総量を減らす行為であることをご説明しました。

今回の以上です。


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山岡さとる
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