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【信用創造】又貸し説は間違いである

一般的な信用創造のストーリーをおさらいしましょう!


「信用創造」ですが以下のように様々なテキストで取り扱われています。

(信用創造を取り扱う科目等)
・中学の公民
・高校の政治経済や現代社会
・大学のマクロ経済学
・各種資格試験(公務員試験、証券アナリスト、不動産証券化マスター他)

では、信用創造とは何なのかと言うと、

信用創造とは、銀行が貸し付けによって預金通貨を創造できる仕組み

Wikipedia

です。「貸し付けによって」という部分が重要です。

そして、一般的な教科書には信用創造の説明として、以下のような図が出てくるのを見たことがあるかと思います。

懐かしい図ですね 笑

はじめに若林さんが預けた100万円のうち、預金準備率を10%とすると、10万円を日銀に預けて残りの90万円を春日さんに貸し出す。この操作を繰り返すことで100万円しかなかった預金が最後には1,000万円になるという説明です。

補足すると、初項a1=100、公比r=0.9の無限等比数列なので、その和Sは、公式により以下の値に収束します。

100+90+81+・・・+ ⇒ S = a1/(1-r) = 100/(1-0.9) = 1,000万円

と、最初に(若林さんが預けた)100万円しかなかった預金が結果的に1000万円にまで増える、ということです。教科書にも載っている説明なので馴染みのある人も多いと思います。

ちなみに、昨年刊行されたForbes JAPAN(みずほフィナンシャルグループ創立150周年特別号)にも、信用創造について触れている個所があります。

Forbesに寄稿された田丸雅智氏による短編小説「記憶の銀行」の中の一節です(74頁)。

・・・「そうして託された記憶をもとにまた新たな記憶が紡がれて、更にそれが次の方々へと渡っていく・・・・私どもみずほは金融業において“信用創造”、つまりは預金と貸出の連鎖で預金通貨を創造することを、誇りをもって行ってまいりましたが、記憶業においても同じ姿勢で、よい意味での創造をしていく所存です」・・・・・

田丸雅智氏による短編小説「記憶の銀行」

預金と貸出しの連鎖、という表現は上記の説明とそっくりな信用創造の描写になっています。

しかし、残念ながら?
この説明は銀行の実務とはかけ離れている上に、お金に対する根本的な認識が誤っているのです。すぐには理解するのが難しい内容ですので、次回以降順を追って丁寧に説明していきます。

ちなみに、このモデルで説明される世界では

  • 融資は現金で行われる

  • 現金で融資を受けた人が銀行に現金を預け入れるときにのみ預金が増える

ということになり、そもそもの信用創造の定義である融資によって預金が増える、という説明にも反しています。

また、これまで常識のように繰り返し言われてきた

銀行は預金を預かって、そのお金を融資している

という考え方が根底にあります。

繰り返し言われていることですので、それを常識として考えている人も多いとは思いますが、控えめに言っても正確な表現とは言えません。はっきり言ってしまえば完全に誤った認識です。この認識を正すことこそが

貨幣観をアップデートする

ということに他なりません。
知っている人にとっては「何を今さら・・」と思うでしょうが、知らない人もそれなりにいらっしゃると思いますので、地道に発信を続けようと思います。

今回はここまでとします。

以上です。

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山岡さとる
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