融資先から回収したお金はどこ行った?
前回のおさらい
前回は、会計知識を使って正しく信用創造を理解するというテーマで書きました。
預金とは、
お客様にとっては資産(債権)
銀行にとっては負債(債務)
です。
預金は銀行にとって負債であるからこそ、銀行は口座からの引き出しに応じなければいけないわけです。
そして、銀行は負債である預金を貸し出すことはでない、というのが前回の結論でした。
会計知識がある人ならば、銀行が融資を行ったときの仕訳
貸出金 1億円 預金 1億円
これを見て、信用創造の実態をイメージできることでしょう。
融資をした瞬間、誰の預金も使っていない、むしろ預金は増えていますからね。
預金というお金は創造され、流通し、消滅する
融資を実行すると、信用創造により新たな預金が生まれます。
その預金は資金使途があるわけですから、融資を実行した口座から出ていきます。
それは住宅ローンやアパートローンであれば、ハウスメーカーの口座に移るわけです。
そしてそのお金は世の中を転々と移っていきます。一部は現金を引き出すのに使われることもあるでしょう。借りた人は何らかの方法で収益を稼ぎ、返済に備えます。
融資やローンの実行は現金交付ではなく、預金を創造することによって行われます。
では返済はどうでしょう?
融資の実行の逆です。
返済の時には、預金が消滅します。
お客様の口座の残高が減ることで返済完了です。
知っている人にとっては至極当然のことですが、実は理解していない、という人もいるかもしれませんね。
返済を受けた時は
預金/貸出金
という仕訳になります。貸出金という債権と預金という債務が同時に消滅したということです。
このように、預金通貨というお金には創造され、流通し、消滅する、というサイクルがあるのです。
預金は使っても消えないが、返済すると消える
お金は浪費するとすぐになくなってしまう・・・
これは一個人について考えればその通りで、私たちは収入の範囲内で生活するよう気を付けないといけないわけです。
もちろん、使ったお金はなくなってしまったのかというとそんなことはなくて、支払った相手にお金が移動しただけです。
それくらい分かるわ!と怒りだす人もいらっしゃるかもしれませんが、新聞にも
『高齢者が預金を取り崩すと、国債発行が難しくなる』
といった、意味不明な記事が載っていることもあります。
高齢者が取り崩した預金は企業など支払った相手に移るだけですし、そもそも預金を使って国債発行しているわけではない、という2つの意味で間違っていますね。
新聞記者の経済面の記事を書いている人が経済について分かっていない、そんなことは良くある話です。
では、銀行から借りたお金の返済はどうでしょう。
この場合は、預金というお金がしっかり消滅します。
まとめ
世の中にはお金が
増える取引(融資の実行)
変わらない取引(支払いなど)
減る取引(融資の返済)
の3種類があると考えると、頭の整理ができると思います。
ちなみに教科書に載っている誤った信用創造(又貸し説)では、借りたお金を返済した時にどのようなことが起きるか、説明がありません。うまく説明がつかないでしょうね。
金融機関は、正しい信用創造を理解したうえで対外的にも情報発信する必要があります。
今回は以上です。