autumn-チケット

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登場人物

カナエ:大学4回生。サークル所属なし。文学部。

マコト:大学4回生。軽音サークル所属。本好き。

※文章がズレるのでPCでの閲覧推奨。

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C.I

カナエ:あ。〈しばし間〉ねぇねぇ。マコト。

マコト:…。

カナエ:ねぇねぇねぇ。ねぇってば。

マコト:ん~…。

カナエ:こっちみてよ。ねぇってば~。

マコト:ん~…。

カナエ:ちょっとぉ。その本そんなに面白いの?

マコト:ん~…。面白いよぉ。

カナエ:…。こんにゃろ。

〈カナエ、マコトの本を奪い取って眺める〉

マコト:おい。かえせよー。いいとこだったのに。

カナエ:こんなもんが面白いのかねぇ。

マコト:文学部にあるまじき発言ですよそれは。

カナエ:時と場合によるの。…へぇ。文庫本かと思ったら、これ画集なんだね。

マコト:あぁ。たまたま古本屋で見つけてさ。ほら、この前までオレ実習いってたでしょ。

カナエ:行ってたねぇ。暇でした。あの時は。

マコト:そこの美術館がこの画家の絵をたくさん持っててさ、なんか好きに なったんだよね。こう、はかなくてキレイっていうか。

カナエ:ふぅ~ん。まぁ、確かにキレイだね。

マコト:だろ。じゃあ、もう返してください。

カナエ:やだ。ちょっとみして。

マコト:だめ、俺の。

〈しばし二人じゃれあう、マコト、本を奪い返す〉

カナエ:ちょっと。もぅ。

マコト:はい。オレの勝ち。

カナエ:ちぇ。

マコト:んで。どしたの。

カナエ:なにが?

マコト:頭ファミコンかおまえは。なんかあるんでしょ。用事。

カナエ:え…、あぁ。たいしたことじゃないよ。

マコト:言えよ。気になるじゃん。

カナエ:ん~。馬鹿にしない?

マコト:しない。たぶん。

カナエ:たぶんはいやだ。

マコト:しません。

カナエ:ほんとかなぁ。

マコト:はよ言え。〈かるくカナエを小突く〉

カナエ:あいたっ。もぅ…。あのね。さっき洗い物してたんだけど、水が冷たかった。

マコト:…は?

カナエ:ほら馬鹿にしたもうやだ。知らない。〈カナエそっぽを向く〉

マコト:あぁ、ごめん。…なぁ、ごめんて。

カナエ:ふん。

マコト:カナエちゃん、機嫌なおしておくれ~。

〈マコト、カナエを抱き寄せる〉

カナエ:んなぁ~、もうひっつくな。ヒゲがいたい。剃れ。

マコト:今度なぁ~。んで、水が冷たくてなんだって。

カナエ:ん~…。別にたいしたことじゃないんだけど、もう秋なんだな~っ て。

マコト:…そっか。もう、9月か。

カナエ:うん。まさか水道水に秋を教えられるなんて、なんて都会的で味気ない気付きなのでしょう。

マコト:おぉ、今のはなんか文人っぽいな。

カナエ:バカ。あんたがずっと家でぐーたらしてるからでしょー。

マコト:だって、そんなアウトドアな感じじゃないでしょ。俺ら。

カナエ:まぁ…そうだけど。たまにはさ、どっか行きたかったな~…なんて。

マコト:…。

カナエ:うぅん。なんでもない!マコト、単位やばいし。それどころじゃな い…よね。

マコト:…すまん。

カナエ:ちゃんと今度は興味ない授業もでるのよ。

マコト:…おぅ。

カナエ:ごめんね!なんか、変な空気なっちゃった…洗い物終わらせてくる。

〈カナエ、立ち上がってキッチンへ行こうとする〉

マコト:カナエ。

カナエ:ん?なに?

マコト:…ん。〈文庫本さしだす〉

カナエ:もう見たよ、それ。洗い物あるんだけど。

マコト:…ん。

カナエ:もう、何よ。〈受け取って、ページをめくる。しおりらしきモノがハラリと落ちる〉…あれ、これって。チケット?

マコト:…今度さ、そこに行かね?その画家がさ、好きだった場所なんだっ て。それにほら。お前、紅葉…好きじゃん?

カナエ:…マコト。

マコト:…。履修とかでバタバタしちゃってごめん。遅れたけど、付き合って2年目のお祝いっつーかなんつーか…その、ありがとうの気持ちをですね…。

カナエ:…おそいよ。バカ。

マコト:ごめん。

カナエ:もぅ、絶対単位取ってよ!行けなくなったとかマジありえないんだから!

マコト:…おぅ。

カナエ:〈小声で〉ありがと。

マコト:え?何?

カナエ:なんでもない!洗い物終わらしてくる!

マコト:いや、今日はオレがやるわ。

カナエ:え?

マコト:たまには秋の気配でも感じてくる。都会的に。

カナエ:…わかった。じゃあね。

マコト:ん?

カナエ:一緒にやろっか。

マコト:…いいよ。キッチン狭いのに。

カナエ:いいの。やろ。

マコト:…おぅ。

F.O

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