無理やり消せば紙は破れる
昔の消しゴム
最近のヒトにはよくわかんないかもしれないが
ボクがはじめに出会った「消しゴム」は
「ゴム」だった。
で、この消しゴムはあんまり消えなかった。
消しても跡が残って、まあ、
上から別の字を書くことに問題はないのだが、
修正とはすなわち、紙を汚すことだった。
力を入れすぎると、紙の方が耐えられず破れた。
答案用紙がわら半紙だったり、弱かったからな。
ゴムの方も安かったが、紙も安かった。
小学校時代の途中あたり、
プラスチックの消しゴムが急に普及した。
これは驚きだった。カンペキに跡が残らない。
ボクらは、ゴムの消しゴムのことを
一瞬にして忘れていった。
消しゴムがいい匂いを放ち、
スーパーカーやキャラクターの
カタチをするようになると、
鉛筆はシャープペンシルに変わって、
何本も鉛筆を持つ必要もなくなっていく。
すると、消しゴムを持つことさえ、
億劫になっていった。
たまに消すときは、キャップをはずして、
そこについている(なぜか消えの悪いゴムの)
小さな消しゴムを使った。
そのうちシャープペンシルすら
あまり使わなくなり、
ボールペンで書き損じたときは、
斜線を二本引けばいい、と気づく。
大切なときは修正液を使う。
修正液は紙を汚し、いつだったか
同じようなことがあったなと思い出す。
簡単に消えます
デリートキーは
間違いを跡形もなく消してくれるが、
それは「間違った」ことの
苦さも消してしまい、あとに何も残さない。
それがちょっとさびしい、
とすら思わなくなった今日は、
また誰かの消しゴムで、
遠い昨日に消えていくのだろうか。
今はボールペンだって擦れば消えたりする。
しかも冷やせばまた文字が戻ったりして、
デリートもコマンド Zで戻るから
実は何も消えないのかもしれない。
あのころ、ボールペンで書いた間違いは、
砂消しという細かい砂の混じった
消しゴムで消した。わら半紙だと、
やぶれる確率は50%以上だったと思う。
破れたら、またイチから書き直す。
書いたり消したりの日々
この毎日が
紙に文字を書くようなものだとしたら
何枚紙を無駄にしてんのかな。
もうちょっと丁寧にやんなきゃな、
と思ったりする。
消してもうっすら跡が残って
古い消しゴムみたいだなとも思う。
無理をすれば紙は破れる。
だから丁寧に消さなきゃいけないし、
そもそも失敗しないように慎重にやる。
それでも絶対間違える。
そしたらイチから書き直す。
そのめんどくささを、
なぜか妙に懐かしく思ったりするのだ。