言葉のことばかり【見栄を張る】
その手があったか。
中村さんのうちでは「メロン」のことを
「マタメロン」と呼ぶらしい。
子供にもそう覚えさせている。
子供はメロンを見るたびに
「またメロン」「またメロン」と言う…。
まったく見栄っ張りである。
しかし子供は「また」と言っているわりに
異常にうれしそうな顔をしてたりする。
田中さんは、やっぱり自分の子供に
自分ちのクルマのことを
「ベンチュ」と覚えさせている。
困ったもんである。
ただ子供は、結局どの車を見ても
「ベンチュ」と言うようになったらしい。
見栄は少しほろ苦い。
まあ自分のことをちょっとでも
よく見せたい気持ちは誰にでもあるんで
人に迷惑かけなきゃかわいいもんだと
思いますけどね。
それ以前にってか、根っこの部分に
自分のこと見て欲しいってのが
ある気がします。
見て見て、って言ってる。
だから客観的に見ると可愛くて
少しだけ寂しい気持ちになる。
見栄って当たり前だけど「見え」から来てて
栄は当て字ですね。
張るは頑張ると同じ意味の「張る」
我を張るとか。
今どきだと「結界を張る」みたいなことか。
(ちょっと違うか…)
自分の話ばっかりする人っていますよね。
どんな話題でも必ず自分の話に持ってく
結構めんどくさいタイプだと思うけど、
これも可愛いなあ、と思うようにしてます。
話題の自分がどの位置にいるか察知して
その中で最高価値を表現しようとする。
そうしないと自分の位置が確認できない。
耐えられない恐怖があるみたいに見える。
見栄も
悪いことばっかじゃない。
見栄を張る、によく似た言葉で
「見得を切る」というのがあります。
歌舞伎で寄り目でポーズとるときのやつね。
そこから「自分を誇示する態度をとる」
という意味で使われます。
この「見得」も「見え」から来てる。
語源的には同じ。
「切る」は瞬間、時間を止める感じですね。
タイムラインを切る。
「見栄」と「見得」
意味が違うみたいだけど実は
「見得を切る」の方もかなり自己顕示欲強い。
とりあえず言い切っちゃう。
スポーツ選手でビッグマウスなんて言われてる
あのタイプですね。
これのすごいのが「大見得を切る」で、
ここまで来ると「ああ、言っちゃったよ」って
周りから思われてしまう。
結局、見栄を張るのとおんなじこと。
ただこっちは
「不確定な約束で自分を縛る」ものなんで、
うまく使えばポジティブに機能します。
頑張れ〜って思う。
だけどあんまり張り過ぎると切れちゃうから
ほどほどにね。
ところで何で「張り切る」って
頑張ってるのに「切れる」んだろう…。