床屋における緊張と緩和
床屋はユルむ
床屋って、
実は髪を切りに行くだけじゃなくて、
過分に「休息の場」的要素の強いところです。
女性の方の行かれる美容院とは
ちょっと趣が違うかもしれません。
もちろん、髪を切り、ヒゲをあたり、セットし、
と、美容(?)的要素は確かに基本ですが、
マッサージはしてくれるわ
耳そうじはしてくれるわで、
ある意味王様気分です。
シャンプーを他人にしてもらう。ということ自体
普段は味わえない気持ちよさがありますよね。
その延長というか「やってもらえる快感」が
随所に盛り込まれているのです。
当然、ほにゃ~・・・と、なります。
もう髪はほとんど残っていないのに、
頻繁に床屋に通うおとうさんがいっぱいいるのは
ほにゃ~っとしたいからなのではないか。
と、わたしは見ています。
家庭で失われたものが
そのなかでも特にきもちい~のが、
耳そうじと、ひげそり時の「蒸しタオル」ですね。
まあ、ほとんどの家庭で、
「奥さんのひざまくらで耳そうじ」
という待遇はすでに幻と化している思います。
もちろん「床屋のおやじのひざまくらで耳そうじ」
という状態は、決してそれ自体、
魅力的とはいいがたいでしょう。
あ、誤解のないように。
床屋のおやじは、ひざまくらはしてくれません。
しかし、日頃きたえたワザは、
すばらしい快感を与えてくれるのです。
もひとつは「ひげそり時の蒸しタオル」
これはまあ、熱めのおしぼりで顔をふいたときの
気持ちよさの強力なヤツ。と思っていただければ
いいのではないかと思います。
あつあつの蒸したタオルを
顔全体にのっけるわけです。
タオルは最初、手に持てないほど熱くて、
床屋のおやじは、手の上で、
ほふっほふっっとなんどか、もてあそびます。
「あれ、ちょっと熱すぎるんは?
・・・うっうっ・・じわ~っ」
と、いう具合にですね。
気持ちよさがしみわたるわけです。
これは何のためにやるかというと、
ヒゲをふやかしているわけですね。
そのあと、アワを顔中にぬりぬりして、
顔をそりそりするわけです。
なんだか擬音だらけになってきましたが、
まあ、そういうわけなのです。
もう気持ちよくて、
おもわず目をつぶりますね。
寝ちゃうことさえあります。
しかし、相手は
刃物(かみそり)を持っているわけで、
こんなに無防備な状態で
バカづらをさらしていいのか。と、
おもわないわけではありません。
髭剃りの土俵際
一度、こういうことがありました。
知ってるヒトは知ってるとおり、
わたしはスモウファンですが、
その日は日曜の夕方でありました。
床屋にはラジオ放送が流れ、
奇しくも時は千秋楽結びの一番。
優勝がかかった大一番です。
そりそりそり・・・「あ、上手がっ!」
そりそりそり・・・「あ、土俵ぎわっ!!」
ラジオで聴くスモウ中継は、
よく状況がわかんないがゆえに、
想像力をかきたてます。
「か、カラダが動いて・・」
「お客さん。ちょっとじっとしてもらえます?」
ひげそり中のスモウ中継は、かなり危険です。
明日から名古屋場所ですね。
また日本のどこかの床屋さんで、この
スリルとサスペンスが繰り広げられるのではと
陰ながら心配しているわけです。
次回の言葉は「カナメ」です。
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