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紅白の星野源さん「うちで踊ろう(大晦日)」が届けたもの

フリーアナウンサーで、鎌倉市のIT企業勤務のサトパンです!
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無観客の紅白のMVPは…

さて、2020年のNHK紅白歌合戦は無観客での開催でしたね。「Mステ ウルトラ SUPER LIVE 2020」の時も思ったのですが、リアルの観客の目線を気にしなくていいので、スペースを広く使って360°撮影していたのが印象的でした。何よりアーティストの皆さんは、例年よりリラックスして演奏に臨めたんじゃないかなと…!大御所の人近くにいると気を遣いそうですよね笑。
いろんな意見があると思いますが、何よりこのご時世に開催できて素晴らしかったんじゃないかなと思います。

その中で、私が1番MVPだなと思ったのが星野源さんです!10年ぐらいファンなので、ファン補正入っているかもしれませんが笑。いや、それを差し引いても素晴らしかった。新たな歌詞を加えた『うちで踊ろう(大晦日)』にアーティストとしての1番強いメッセージ性を感じました。

『うちで踊ろう』は、2020年の4月に星野さんがInstagramで発表し、一般の人がダンスや楽器演奏、コーラスなどで自由にコラボできるという画期的な楽曲です。この曲を4月の時点で公開したことは、今考えても本当にすごいなと思います。ご自身が置かれている環境や影響力を使って、どんな価値を与えられるかということを常に考えているからこそ生まれたものではないでしょうか。私もボイパで参戦しました…!

『うちで踊ろう(大晦日)』の歌詞のメッセージ

今回の紅白で歌った『うちで踊ろう(大晦日)』は、さらに強いメッセージを帯びていました。発表後の約9ヶ月間の想いも新たな歌詞に込められ、この曲がついに完成された感じがしました。

何かすごかったのか。
あの瞬間星野さんは、この1年を本当に大変な思いをした人に向けて真摯に歌っていたということです。コロナの影響で大きく環境が変わって、私自身その変化にふるい落とされないようしがみつくような1年でしたが、比べものにならないぐらい激動の日々を送ったのは医療関係者をはじめエッセンシャルワーカーのみなさんだと思います。文字通り「命をかけて」コロナ禍で働いてこられたと思うし、大変な状況は現在も続いています。また様々なことに振り回されてビジネスがうまくいかず、辛い判断をせざるを得なかった方もいると思います。そしてもちろん、患者のみなさん、そのご家族のみなさん。想像できないぐらいの不安をいくつも乗り越えてこられたのではないでしょうか。

そういう人たちにとっては「頑張ろう!」「みんなで1つになって乗り越えよう!」のような、綺麗ごと・前向きな言葉だけでは乗り越えられない1年だったと思います。今回追加された2番の歌詞は、そんな人たちに向けられていたと感じました。

朝ドラ主題歌の『アイデア』の2番が発表された時も驚きましたが、『うちで踊ろう(大晦日)』でも陰と陽でいうと陰の部分、強い言葉でこの世界を嘆くような歌詞が追加されました。

振り返ると、誰かが傷つけられる場面を毎日のように目にしていたように思います。必死で生きてる人に対して、ただでさえ大変なのに、追い討ちをかけるように心ない言葉をかけるようなこともあったと思います。
物理的に孤独な状態で、誰かを攻撃するような言葉や悲しいニュースに触れると当事者じゃなかったとしても辛い。

それに対して星野さんは、これは「馬鹿な世界」「愛のない世界」であると。そんな世界は見なくていいから、瞳を閉じて、耳を塞いで、飯をつくって、風呂沸かして生きろ!!!!!!!!!と大晦日の夜に歌いたかったのではないかと思います。

星野さんが1stアルバム収録の『ばらばら』から一貫しておっしゃっているのが、人は「1つになる」ことはできないということ。でも、『ばらばら』や『うちで踊ろう』の歌詞にもあるように重なり合うことはできる。

たしかに人は他の人からいろいろ影響を受けて生きているけど、今年に関しては、とにかくそれぞれが生き抜くことの方が大事だったのではないでしょうか。そして歌はこのように締めくくられます。

生きて抱き合おう いつかそれぞれの愛を 重ねられるように


以前星野さんは、踊ることは生きることに似ているとおっしゃっていましたが、「踊ろう」すなわち「生きよう」という強いメッセージが込められた1曲だったなと思いました。


2013紅白 泉谷しげるさんとの共通点

私は『うちで踊ろう(大晦日)』の感動と似たものを2013年の紅白でも感じていました。それは、泉谷しげるさんのパフォーマンスです。

泉谷さんは名曲『春夏秋冬』を歌ったのですが、手拍子し始めた観客に対して「手拍子してんじゃねえ!!誰が頼んだこの野郎!!」と突然キレ始めました笑。

その後、テレビの向こう側にこう語りかけます。

テレビの向こう側で1人で紅白を見ているお前ら
ラジオを聴いているお前ら
今年はいろいろあったろ
いろいろ辛いこともあったろ
だから、忘れたいことも忘れたくないことも
今日は「自分の今日」にしろ
自分だけの今日に向かってそっと歌え

私は当時就活中で、実家に帰らず、東京のアパートで1人でエントリーシートを書いていました。この語りを聞いたとき、泉谷さんが「俺のために歌ってくれてる!!!」と感動して、ボロボロ泣いた記憶があります笑。

この年末年始は泉谷さんの言うように、不安を抱えながら1人で過ごしたり、あるいは働きながら年を越したりした人が多かったのではないでしょうか?

その時の泉谷さんも、今回の星野さんも「大晦日だからこそ、こんな人に届けたい」という想いがあって、それがちゃんと届いたからこそ、非常に感動的なパフォーマンスになったのだと思います。

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