舁夫漫遊紀
五月吉日、私は東京へ赴いた。
無論、新シングル「#前に進む唄」リリースイベントに参加するためである。
天気予報は曇りのち晴れ。
仙台の空を見る限り、その予報に矛盾はないように感じた。
少し荒めにも思える運転に揺られながら、本を読み、noteをしたためた。
車酔いの酷かった幼少期に比べると、ずいぶんと三半規管の成長を感じる。
持参した本も読破し、ポエムとも感想文ともつかない投稿も済ませ、ふと外に目を向けると、広がっていたのは目を疑うほどの曇天だった。
すぐさまYahoo!天気を確認すると、当日中曇りの予報に変わっていた。
東京に到着すると、所々水溜りも確認でき、確かにいい天気ではない様子であった。
ところが、どうにも東京の空を見た記憶がない。「都会で上を見るのは田舎者」という偏見に晒されることを拒んだのかもしれない。
それはさておき、東京のうすら寒さに太陽の不在を感じつつそのまま徒歩で会場のある渋谷へと向かった。
道中新宿に掲げられた塩見きらののぼりも回収した。
当日の会場はタワーレコード渋谷店。
模範的な舁夫を目指しているため、物販の1時間前には現地周辺に到着した。
上手くお金を使わず時間を潰すべく、散歩を兼ねて渋谷を物色して回った。
屋上でのライブに懸念が生まれるほど肌寒さを感じていたが、周りの通行人を見ると特段その様子もないのでほっと胸を撫で下ろした。
それでも時間が余ってしまったため、買いもしないCDやレコードを見ながら頷くなどしていた。
周りからはさぞ音楽通に見えたことだろう。
敬愛するフレディ・マーキュリーのフィギュアがあったのでこれは記念として写真に収めた。
とうとう物販開始である。ようやくCDを手に取ることができる上、ポイント券3倍の言葉を前にして、つい気合が入ってしまった。
学生という身分を忘れ、気づけば予算を大幅に上回り4万円程ベットしていた。
くじではそこそこの引きの良さを発揮し、体内からの脱出を図る高揚感を法被でなんとか抑えつけ、待機した。
メンバーの登場である。
この時初めて、東京の空を見た。晴れていたか曇っていたかなんて覚えていない。
しかし、たった一つはっきりと覚えている。前に進む日を目前にして、神宿は、夜空で一番輝いていた。
全く関係ない話題だが、ペンライトはメンバーの発する何かで光っているのではないかと時々感じる。
実際その瞬間その場所でその色が光っているのは、メンバーがアイドルの道を選んだからこそであり、あながち間違いではないだろう。
太陽があるから月が光っている、のような関係。
当日もそんなことを思った。
神宿が太陽ならば自分は何者なのかと思いを張り巡らせた。月ではしっくりこないし、どうにもちょうどいい物が見当たらず悶々としていた。
すると、新曲「#前に進む唄」が流れた。
我々は、向日葵なのだった。
常に太陽を向いて咲く向日葵なのだ。
「憧れ」「あなただけを見つめる」「情熱」
それはどれも、太陽としての神宿に向けられたものなのだ。
鉄板のセトリをこなし、特典会では黄列をループした。本当はライブのこと、明日に向けた話、曲への思い、深い部分を話したかったが、結局いつも通り特に見栄えのない会話をした。
noteを見ていると言ってくれたので、言わなかったことは、一方的ではあるがここで述べよう。
あなたはこう言う。
私が返す言葉は―――。
五月吉日、今日は神宿の新シングル「#前に進む唄」リリース日である。
本日のリリースイベント会場は池袋サンシャインシティ噴水広場。
神宿にとって大切な場所だ。
天気予報は晴れ。
仙台の空を見ずとも、その予報に矛盾はないように感じる。
―――前に進むあなたへ
ずっと隣にいるから、あなただけを見つめるから、
いつまでもステージで輝いていてください。
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