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私はなぜ小説を書くのか ~原点とこれから(前編)
~小さな『物語の種』が、大きな木に育っていく物語~
こんにちは。フィールドワーカー小説家のさとのです。
今日は、なぜ私が「小説」を書いているのか、その背景にある物語を書いてみたいと思います。
これは、私のとても個人的なストーリーなのですが、読み物的な感じでのぞいてもらえたら嬉しいです!
物語が好きだった幼少期
私は小さなころから、物語が大好きでした。
絵本や物語を読むのが好きなのはもちろん、幼稚園のころには、自分で絵本を書いていました。
母が読み聞かせてくれる絵本の物語が好きで、幼心に「自分でもこんな絵本をつくりたい!」と思ったのか。それとも「自分でも物語を書けそう!」と思ったのか。
記憶にはほとんど残っていないので、当時の感覚は定かではありませんが、幼い私は、誰に言われることもなく、夢中で絵本をつくっていました。
自然や生き物が好きだったのもあって、地面の中に広がるアリのおうちはどんなだろう? そこでアリたちは、どんな風に暮らしているんだろう? など、自由に想像を膨らませて書いた「アリのお話」や、きつねと太陽が遊ぶ「きつねとたいよう」という話など、当時書いた絵本が、今でもいくつか実家に残っています。
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縦書きなのに左から右へ進んだり、句読点がなかったり、
鏡文字になっていたりと、日本語としてはむちゃくちゃです汗
書くことが生きる希望だった思春期
中学生になって、思春期に入ると、他の人の例にもれずと言いますか、私も人間関係や家族のことなど、いろいろと思い悩むようになりました。
私の父が小さな会社を経営していたのですが、高校1年のときにその会社が倒産して、両親が自己破産して、家の経済状況がとても悪くなったり。
友だちが失恋をきっかけに、だいぶ落ち込んでしまってリストカットをするようになったり。
別の友だちは、何が原因かはわかりませんが、多重人格?のような症状を発症して、それに振り回されたり。
そのころの私は、こんな風に感じていました。
「周りの人の方が大変だから。自分の悩みなんて、大したことないのだから。辛くても平気なフリをして、しっかりしないと」
でも、多感な時期ですし、やっぱり悩んだり辛かったりすることもあります。
「わたしだって、誰かに弱音を吐きたい」
そんな風に思うこともありました。
そんなとき、私にとっての支えは「書くこと」でした。
日記をつけて、その中で自分の悩みを書きだしたり。
小説を書くことで、いろんな思いや感情を昇華させたり。
友だちと一緒に、高校の部活として「文芸同好会」を立ち上げて、わちゃわちゃしながら文芸誌を発行するなど、熱心に執筆活動を続けていました。
今思えばちょっと大げさではありますが、当時の私は「書くことで、生きる力を得ている」という感覚でした。
そんなある日、私にとって、「小説を書き続けることの原点」ともいえる出来事がおこります。
高3の秋ごろに、私はひとつ短編小説を書きました。
タイトルは「磯姫」。
夜の海に惹かれて、引きずり込まれかけた男が、すんでのところで踏みとどまって、戻ってくるという話でした。
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私はそれを、友だちに読んでもらいました。
当時その友だちは、ときどき学校をさぼって、どこかのさびれた公園やお寺をさ迷い歩き――「死にたい」という気持ちに囚われていた、というのは、後で知ったことです。
ある日の放課後、その友だちが私のところにだーっと駆け寄ってきました。
私はちょうど、図書室で受験勉強をしていたのですが、友だちの様子からただならぬものを感じて、動かしていた手を止めました。
彼女はほおを上気させ、興奮したように言いました。
「あの小説、読んだよ!」
彼女の様子に戸惑いながら、私はたずねました。
「読んでくれたんだ、ありがとう。どうだった?」
「すごくよかった……」
そして彼女は、次のようなことを言いました。
「実はさっきまで、池のほとりに座って、死にたいと思ってた。でも……この小説を思い出して、踏みとどまったんだ」
彼女は私の手に触れて、感情のこもった声で言いました。
「ありがとう」
全然予想もしていなかった反応で……すごく驚いたし、信じがたかったけれど、友だちの声や表情からは、本気で言っていることが伝わってきました。
わたし書いた小説が、誰かの心を動かしたんだ。
わたしの書いたものが、誰かの生きる力になることがあるんだ。
それは、私が初めて「物語のもつ力」を肌身で感じた経験でした。
その経験は、私にとっての希望であり――呪いにもなりました。
長くなってきたので、続きはまた次回書きたいと思います!
後編では、迷って寄り道をしながらも、どうして「書き続けよう」と決められ、書籍化までたどりついたのか、その経緯を書きます~。
👇後編も公開しました。
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