定年制度の脱法運用である盛岡市の特別参与
盛岡市には、市長・副市長に次ぐポジションとして、特別参与という職があります。この特別参与という職は、市のホームページでも情報が公開されておらず、市職員以外にとっては謎のポジションだと思いますので、解説したいと思います。
まず、この特別参与は、常勤の職員ではなく、会計年度任用職員です。なぜ会計年度任用職員なのかというと、年度ごとに必要性を判断して任用しているから、らしいです。そうはいえども、任用は平成30年からこの令和6年まで継続しており、その必要性を判断する基準も確たるものはないようです。令和6年現在、4人の特別参与がいて、うち1人は、民間出身の森雅之さんで、その他3人が令和5年度末をもって役職定年となった、市の元部長(市長公室長・総務部長・財政部長)です。
役職定年とは、管理監督職勤務上限年齢制の通称で、60歳を超えると、管理監督職に就くことができなくなる制度です。この制度は、65歳までの定年引き上げに併せて導入された制度で、組織の新陳代謝を確保し、組織活力を維持することを目的としています。給料についても、60歳を超えた職員は、同年齢の民間企業の給料実態に合わせ、それまでの7割になるように調整されています。具体的な運用としては、60歳時点で部長だった職員は、次の年度には、非管理職の最上位の職である主任主査に降格し、給料も7割になり、それぞれの職を担っているようです。
それではなぜ、役職定年となった元部長が、特別参与に就任することができるのでしょうか。それは、特別参与の身分である会計年度任用職員には、役職定年制が適用されないからです。会計年度任用職員とは、民間のパート・アルバイト同様、繁忙期や職員に欠員が生じたときに、職員の補助として、1会計年度を任期として任用される非常勤公務員であるため、常勤職員の適用される定年退職制や役職定年制が適用されないことになっています。
しかし、役職定年制度の目的は、「組織の新陳代謝を確保し、組織活力を維持すること」だったはずです。にもかかわらず、部長級を超える役職である特別参与に、役職定年となった元部長を任用することは、この制度の趣旨を逸脱する脱法的なものではないでしょうか。現に、会計年度任用職員については、任用の年齢制限はなく、任用権者である市長がその気になれば、生涯任用を続けることも可能です(現に令和5年度末まで特別参与だった職員が、令和6年度には都市整備部参与に就任しています)。そして、市の役職を経験した特別参与が、そのように市長を操ることも可能です。そうなると、公選された市長以上に、これら特別参与が実質的な力を持つ可能性もあり、住民自治においても危険性が強いと考えられ、制度が予期しない事態が想定されます。
このような懸念は市職員からも複数あり、類似の自治体でもこのような特別参与を設置しているところが見つからない状況であることから、少なくとも森さんのような民間出身者の必要性は理解できるのですが、役職定年者が就任することは無いように規律を設けるべきである、と提案しましたが、市長は「考えていない」そうです。
なお、特別参与の職務は、重要政策にアドバイスを行うことのようで、執務室は専用の個室があり、勤務時間は9時〜17時です。報酬は年額約600万円。公募はせず非公募で任用し、今回の任用にあたっては、現在の特別参与である当時の部長(市長公室長・総務部長・財政部長)それぞれが、任用決裁の際に承認者となったようです。市民、市職員には、この現状が望ましいものか、問題を共有させていただきたい思います。
蛇足ですが、こういう特別参与を、よく思っている職員はほとんどいないと思います。そういう点で、まさに組織活力の維持のためには、内舘市長のチェンジの格好の的だったと思うのですが、市長から見える職員には、若い職員がいないのかなあ・・・と感じた次第です。改革の主役である職員の能力最大化のため、市長には、組織全体を俯瞰したマネジメントを求めたいと思います。
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