【アート&イート #1】 「M式海の幸」&「印象派展」からの、京橋『ダバ・インディア』で南インド料理 @アーティゾン美術館(東京・京橋)
上に長々書いたような理由で、2022年1月から始めてみようと思い立った「アート&イート」。
第一回目は、東京・京橋の「アーティゾン美術館」で開かれている2つの美術展に行ってきた。
というかですね、すいません、なんと投稿日の翌日、1月10日までが会期である。つまり、これを読んでくださったあなたが「お〜いいかも!」と思ってくれたとしても、ほぼ行けないことになる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
でもね、思い立ったのが元旦で、いろいろ調べてる中でこの良さげな美術展を見つけ、ふと会期をみてみたら1/10までで「ひえ〜」ってなったという…。
申し訳ない。
こんなにいい美術展なのに、紹介するだけで終わってまうわ。
今後取り上げる美術展は、もうちょい早めに紹介しますので、お許しを。
ということで、アーティゾン美術館に行ってきた。
魅力的な美術展が2つ(しかもここは常設展も素晴らしい)。
森村泰昌さん好きだし、石橋財団のコレクション選も見物。「印象派」はまぁちょっと食傷気味なのだけど、膨大なコレクションの中から「友情物語」という切り口で切ってくれるようなので、これも楽しみだ。
この2つに加えて、こんな特別展示もあった。
ワイン好きなら、ちょっと見たくなるよね。
アーティゾン美術館は、2019年7月1日にブリヂストン美術館から改称し、新オープンした美術館だ。旧美術館をリフォームしたのではなく、新しい場所(昔のすぐ近く)に新しい美術館として再オープンしている。
ブリヂストン創業者である石橋正二郎のコレクションは膨大で、それを1952年から長きにわたり惜しげもなく公開してくれている。
学生は無料だし、カメラ撮影OKだし、施設もサービスも展示もいいし、いやぁボクはもうこのことだけでも「ブリヂストン・ファン」だなぁ。
日本の文化をどれだけ底支えしてくれているか、計り知れない。
行ったのは1月4日。
ウェブ予約だったけど、さらりと取れた。
森村泰昌さんは、もちろん、あの「なりきり自画像アート」で有名だ。
知らない?
では、百聞は一見に如かず。
たとえば、マネの『オランピア』は、彼のなりきりでこうなる。
こんなのほんの一例で、いろんな有名絵画やポートレート、映画の名場面などで、彼はなりきり自演している。
うん、きもい。
なにせ御年70歳(ボクのちょうど10歳上)のおっさんである。
でも、ボクは彼のアプローチがとても好きなのだ。
たとえば、マネの『オランピア』は、描かれた1863年の文脈なくしては理解しにくい絵だったりもするのだけど、森村泰昌さんの自演によってそれが「現代のわれわれの文脈」を纏う。
そのことによって、出演者から構図から色の使い方から、すべて新鮮な視点を獲得させてくれ、元の『オランピア』自体にも新たな発見を与えてくれる。
今回は、そんな「M式」(森村泰昌式)で、青木繁の超有名な絵画『海の幸』を取り上げるわけだ。
『海の幸』は、美術検定3級あたりを受けるまで知らなかったのだけど、テキストには必須項目として出てくるので、ボクの中ではすっかりお馴染み。
今回、この有名作の実物をよくよく眺めたのだけど(以前もブリヂストン美術館には行っているので何度かは見ていると思うけど覚えていない)、下書きの線をわざと残していたりと、意外とアバンギャルドなんだなぁと思った。こういうのは間近で見ないとわからないことだなぁ。
で、これを「M式」にしていくわけだけど、その創作過程のノートやら下書きやらを膨大に展示してくれているのみならず、撮影風景や衣装などもきっちり展示。この辺が実におもしろかったなぁ。森村泰昌さんの頭の中を覗いている気分。
展示されている衣装を細かくチェックして、若い女子たちが「この人ちゃんとしてる〜」「すげ〜ちゃんとしてる〜」って声上げて感嘆してたのが印象的だった。細かいところまで手を抜かず衣装を作ってあったのだ。神は細部に宿る。
で、M式。
海から生まれた人間たちも「海の幸」なわけだけど、その海の幸が海の幸を獲り、どこへともなく行進していく様が、現代の文脈を得て、より社会批評的に生まれ変わっているように感じたなぁ。
そして、いろいろな現代文脈で、この10人をいじり始める森村泰昌さん。
ここに至る考え方や、他の作品についても、森村泰昌さんご本人が解説してくれている動画があるので、それも見てみてください(↓)。
そして、最後に、彼の映像作品がある。
『ワタシガタリの神話』。
彼が青木繁に扮して、青木繁に語りかける、という映像作品で、これ、おもしろかったなぁ。
図録を買うと、そのスクリプト全文が掲載されているんだけど、それが欲しいがために図録を買ったくらい。
これを見て、また青木繁の『海の幸』展示に戻って、そのあとまたM式『海の幸』を見て、もう一度映像を見て、そして青木繁に戻って・・・って、何度もしてしまったよ。
さて、ない後ろ髪を引かれつつ、次の展示へ。
まぁ、日本の美術展は「印象派だらけ」なので、個人的にはちょっと食傷気味なのだけど、でも、石橋正二郎のコレクションはすばらしいのでちょっと期待してた。
でね、入口でこんなイラストを渡される。
これが今回のコレクション選の趣旨である。
あらためて、頭を整理できたのがうれしかった。
それぞれに「対」を作って、人間関係を整理してくれ、その文脈で展示がしてある。
ピサロ×セザンヌ(そうか、セザンヌはピサロを尊敬してたんだ)
モネ×シスレー×シニャック(シニャックはモネの影響で画家になったんだ)
マネ×モリゾ×ゴンザレス(ゴンザレスの存在わすれがち)
カイユボット×ルノワール(カイユボットの遺言執行人だったんだなぁ)
ドガ×カサット(ドガがカサットを印象派展に誘ったのね)
ゴッホ×ゴーガン(これは有名)
ブラックモン夫妻(夫は妻が印象派なのをよく思ってないw)
ピサロやシスレーの地道な感じが好きなのだけど、今回は特にピサロとセザンヌの文脈を知れたのが良かった。
で、フランスワインの展示を見て、他の常設展も見た(藤島武二の絵の前でずっと粘ってた)。
さりげなく、こんなピカソとかあったりするから、石橋財団すごいよなぁ、と思う。
いやぁ、新年早々、大満足な美術展だった。。。
3時間も行ったり来たり、楽しんでしまった。
「アート&イート」の第一回目にふさわしい充実感。
ということで、アートの次は「イート」ですね。
時間も17時前。早い店だとそろそろ開店時間である。
アーティゾン美術館は京橋にあるので、食べるところは(歩いてすぐの銀座も含めて)ゴマンとある。
ただ、1月4日はまだやっている店が少なく、実は苦労した(魚介類が NGなのでただでさえ選択肢が絞られるわけだけど、オフィス街でもあるのでやっている店が少ないのだ)。
銀座で適当に入ろうかなぁ、と思ったけど、「アート&イート」は「美味しいものを探求するリハビリ」でもあるので、商業ビルなどにあるチェーン店で妥協せず、いろいろ探して、ここにした。
南インド料理の名店「ダバ・インディア」。
この店が出来たころ(2003年)は、まだいまほど南インド料理が知られておらず、というか北インド料理と南インド料理が違うことすら知られておらず、この店の開店に我々食べ好きたちは沸き立ったものだ。
インド料理はベジタリアンメニューも多いので、ボクみたいなアニサキスアレルギーの人でもまず安心だ(日本のカレーチェーンだとダシを使用しているところも多くて不安が残るけど、インド料理店ならまず大丈夫)。
ランチでは何十回も、ディナーでも数回来たことがある店だけど、ひとりで来るのは初めてだ。ひとりでも入れてくれるかなぁ。。。と心配しながら17時開店時に店の前に。
心配は杞憂に終わった。
すっとテーブルを用意してくれたのみならず、「お一人様なら、普通のメニューも量を少なくしてお出ししますよ」とメニュー外のサービスもしてくれ、なにかと気遣ってくれる中、とっても気持ちよく食事できた。
ワインはチリのもので、せっかくフランスワインの美術展を見たのになぁと思いつつ、でもカパカパ行ける気楽ないいワイン。
そうそう、ここのドーサはでかい三角形のパリパリタイプだったっけ。
食べ方を考えちゃうけど、ま、基本自由。パリパリを割っていろいろディップして食べる。
頼んだのはキーマドーサで、中にキーマが入っている。
サラダとチキンティッカも頼んで、最後はマトンビンダルー。
なんか脳みその古い記憶に「ダバ・インディアのマトン・ビンダルーはうまかった」という残滓があって、思わずそれを頼んでしまったが、
いやぁ〜、こんなに辛かったっけ!
いやはや、辛かったなぁ。
辛いのわりと大丈夫なんだけど、年齢と共に少しずつ弱くもなってきていて、それもあるのかなぁ。
なんつうか、大汗かいたなぁ。。。
でも、美味しく、そして気持ちよく退店。
アレルギーのこともきちんと厨房に確認してくれ、気持ちよく納得させてくれ、ひとり客でもすんなり受け入れて気を遣ってくれ・・・
言うことなしの、いい店でした(もちろん味も素晴らしい)。
ということで、第一回目の「アート&イート」、無事終了。
単なるぐだぐだエッセイですいません。
モリゾや藤島武二についてや、ダバ・インディアの思い出なんかも書きたかったけど、いい加減長いのでカット。
きっとそのうち、また書けるでしょう。
ちなみに、これ、年内に100回を目指してます。
そのくらいな勢いで「リハビリ」していきたいし、少しずつエッセイの質も上げていくつもり。
これからもよろしくお願いします。
次回はたぶん、世田谷美術館の『グランマ・モーゼス展』について書きますです。(グランマ展は2/27まで)
※「アート&イート#2」、グランマ・モーゼス展について書いた記事はこちら(↓)
アート&イートをまとめたマガジンはこちら(↓)。